tg視点
教室のドアが開いた瞬間、空気がちょっと変わった気がした。
俺はすぐ顔を上げて、そっとドアの方を見ちゃう。
やっぱり、あっとくんだった。
無表情で、誰とも目を合わせずに、静かに自分の席に向かう背中。
その姿だけで、胸の奥がくすぐったくなる。
――ぴっ。
頭の上で音がした気がして、俺はそっと目線を上げる。
「732」
うわ、また上がってる。
昨日は「689」だったのに。ほんと、すぐバレるからやめてほしい。
モブ ちぐさ、また数字上がってる〜
隣の席のやつが、ニヤニヤしながら肘でつついてきた。
tg う、うるさい……見ないでよ//
思わず小声で言い返して、手で頭を隠すみたいに押さえる。
意味ないの分かってるけど、そうしたくなるくらい恥ずかしい。
“好意メーター”
目が合うと、その人に対する“好き”の気持ちが数字で頭の上に出ちゃう、最低最悪の制度。
しかもその数字、周りにも丸見えっていう。
好きな人にバレたら終わりだし、友達にもからかわれるし…なんでこんな仕組みあるんだよって、毎日思ってる。
モブ ねぇ、今日もあの人0だよ
モブ マジ?やばくね?誰にも興味ないんかな
後ろの席の子たちがひそひそ話してる声が聞こえる。
俺はそっと、あっとくんを見た。
ちょうど、誰かと目が合ってたみたいだった。
でも、頭の上には――
「0」
ほんとに、変わらない。
誰と話しても、誰と目が合っても。
まるでこの世界の”好き”って気持ちが、彼だけスルーしてるみたいで。
……ズルいよな。
俺なんて、ちょっと目ぇ合っただけでこれだよ。
「745」
うぅ……また上がった。
これ、絶対誰か見てる。顔、熱い……。
tg はぁ、バカみたい
つぶやいた声は、きっと誰にも届いてない。
でも、ほんとそう思う。
ただ先輩がそこにいるだけで、勝手にドキドキして、数字が上がって。
こんなの、どうやって隠せばいいんだよ。
あっとくんは、今日も静かに机に座って、ノートを開いただけ。
俺のことなんて、たぶん見てもいない。
でも――
それでも俺は、見てしまう。
あっとくんの「0」が、
いつか「1」になる日が来るんじゃないかって。
そんな都合のいい奇跡を、今日もこっそり期待してる。
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コメント
4件
うわーー( ´ ཫ ` )毎日通知見て楽しみにしてます!!( ´›ω‹`)💕
新作じゃん✨