テラーノベル
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静かな時間。
さっきの空気が、まだ少しだけ残っている。
「……なぁ」
pizza guyが口を開く。
「さっきのさ、あいつの話――」
その瞬間。
――動いた。
「っ――」
距離が、一気に詰まる。
言葉の続きは、出なかった。
口を――塞がれた。
「……っ!?」
一瞬、何が起きたか分からない。
触れている。
唇が。
ノスフェラトゥの。
「……」
強引だった。
だが、深くはない。
ただ、“止めるため”の接触。
反射で押し返そうとする。
その瞬間――
軽く、鋭い痛み。
唇に、歯が触れる。
「っ……!」
わずかに、痛み。
唇を、噛まれる。
鋭く、だが浅く。
鉄の味。
血。
ほんの少し、滲む。
そのまま。
ノスフェラトゥは、離れない。
「……」
そして。
ゆっくりと――
その血を、舐め取る。
「……っ」
ぞくり、と背筋が震える。
風呂の時とも、戦闘の時とも違う。
もっと、直接的な“本能”。
「……忘れるな」
低い声。
距離は、ほとんどゼロのまま。
赤い瞳が、まっすぐこちらを射抜く。
「お前が、餌だということを」
静かに。
だが、はっきりと。
言い切る。
「……」
数秒。
時間が、止まる。
そしてようやく、距離が離れる。
pizza guyは、口元を拭う。
血が、指に付く。
「……何してんだよ」
声は低い。
だが、完全な怒りじゃない。
混ざっているのは――動揺だ。
ノスフェラトゥは、じっと見ている。
赤い瞳。
揺れていない。
「話を遮った」
淡々とした声。
「……それだけかよ」
「それ以上は不要だ」
即答。
一歩も引かない。
「過去を掘るな」
「……は?」
思わず眉をひそめる。
「なんでだよ」
「お前が今ここにいる理由は一つだ」
ノスフェラトゥの声が低くなる。
「“今”だ」
間。
「過去ではない」
「……」
空気が重くなる。
pizza guyは、口の中に残る血の味を感じる。
妙に生々しい。
「……餌扱い、まだやめねぇのかよ」
ノスフェラトゥの目が、わずかに細くなる。
「やめる必要はない」
即答。
そして。
次の言葉は、少しだけ遅れた。
「だが」
間。
「それだけでもない」
「……」
さっきと同じ言葉。
でも、温度が違う。
曖昧で、矛盾している。
「……ほんと、めんどくせぇな」
苦笑する。
血の残る唇のまま。
「お前」
視線を上げる。
「何がしたいんだよ」
問い。
真っ直ぐ。
ノスフェラトゥは、少しだけ黙る。
そして――
「……壊す気はない」
低く、短く。
「お前を」
「……」
その一言で、空気が変わる。
意味が、重い。
「……それってさ」
pizza guyは、少しだけ目を細める。
「守るってことか?」
「違う」
即答。
「管理だ」
「……はは」
笑う。
でも、さっきより静かに。
「やっぱり変だな、お前」
ノスフェラトゥは否定しない。
ただ、そのまま立っている。
沈黙。
血の味だけが、まだ残っている。
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