テラーノベル
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沈黙が、まだ残っている。
さっきの距離。
さっきの衝動。
どちらも、消えていない。
「……」
ノスフェラトゥは何も言わず、背を向ける。
「来い」
短く、それだけ。
pizza guyが眉をひそめる。
「どこに」
「外だ」
即答。
「動け」
振り返って、チラリとpizza guyを見る。
「脂肪だけだと、血が不味くなる。筋肉をつけろ」
「……」
一瞬、考える。
だが。
「……いいけどよ」
肩を回す。
「急すぎだろ」
「今がいい」
振り返らないまま言う。
その声は――まだ少し硬い。
「……」
理由は聞かない。
なんとなく、分かる。
この空気のまま、同じ場所にいるのは――危険だ。
「……分かったよ」
ショットガンを手に取る。
ナイフも腰に差す。
準備は、もう癖だ。
「……行くぞ」
扉が開く。
城の外へ続く通路。
冷たい空気が流れ込む。
「……久しぶりだな」
小さく呟く。
外の匂い。
血と、土と、腐敗。
変わらない世界。
「……」
ノスフェラトゥは先を歩く。
距離は、少しだけ離れている。
だが。
完全には離さない位置。
「……なぁ」
歩きながら、声をかける。
「外って、どこ行くんだ?」
「材料も探す」
短く答える。
「だが」
一瞬、間を置く。
「……確認だ」
「……何の」
「お前の」
振り返る。
赤い瞳が、真っ直ぐ向く。
「……限界のな」
「……は?」
その言葉の意味を考える間もなく――
「来るぞ」
低く言う。
次の瞬間。
地面が、わずかに震える。
「……っ」
気配。
複数。
「……ルナティックか」
ショットガンを構える。
「……いいタイミングだな」
少しだけ、口角が上がる。
戦う感覚。
忘れていない。
「……」
ノスフェラトゥは、少し後ろに下がる。
前に出ない。
「……おい」
違和感。
「お前、行かねぇのか?」
「……まずは見せろ」
低く。
「お前がどこまでやれるか」
「……はぁ?」
思わず笑う。
「テストかよ」
だが。
嫌じゃない。
むしろ――
「……上等だ」
引き金に指をかける。
影が、現れる。
歪んだ人影。
一体、二体、三体――
「……来いよ」
呟く。
そして。
「――ッ!!」
撃つ。
轟音。
最前の一体が吹き飛ぶ。
すぐに次。
距離を詰めてくる。
「チッ……数多いな」
だが、動ける。
体は軽い。
昨日より、明らかに。
「……っ!」
ナイフを抜く。
接近戦。
避ける。
斬る。
押し返す。
「……」
その様子を。
ノスフェラトゥは、静かに見ている。
目を逸らさず。
呼吸。動き。判断。
すべてを。
「……」
そして。
ほんのわずかに。
視線が、首筋に落ちる。
戦闘で上がった体温。
血の流れ。
「……」
喉が、鳴る。
抑える。
さっきの味が、香りが、
まだ残っている。
「……」
視線を戻す。
――対象は、敵。
「……」
そして。
一体が、背後から迫る。
「後ろだ」
短く声をかける。
「っ!」
振り向きざまに撃つ。
倒れる。
「……」
沈黙。
数体が、地に伏す。
残りは――いない。
「……はぁ……」
息を吐く。
銃を下ろす。
「……こんなもんだ」
振り返る。
「どうだよ」
軽く言う。
だが。
ノスフェラトゥの視線は――
戦闘じゃない。
「……」
数秒。
そして。
「……十分だ」
低く、言う。
「今はな」
「……なんだよそれ」
少し笑う。
だが。
その言葉の意味は、分かる。
“今は”。
まだ、危うい。
「……」
風が吹く。
荒廃した外の空気。
ふたりの間に、少しだけ流れる。
「……次行くぞ」
ノスフェラトゥが言う。
「材料も回収する」
「……はいはい」
ショットガンを肩に担ぐ。
「結局それかよ」
軽口。
だが。
さっきまでの重さは、少しだけ消えていた。
――完全じゃない。
それでも。
前より、確実に。
“隣にいる距離”は、近づいていた。
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