テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

DOGDOGDISPATCHERS

一覧ページ

「DOGDOGDISPATCHERS」のメインビジュアル

DOGDOGDISPATCHERS

6 - 腹が減っては整備が出来ぬ

♥

5

2025年06月04日

シェアするシェアする
報告する

 ケイトは、体がだるいのを我慢してオフィスの椅子に深く座り直し、パソコンをカタカタと操作し始めた。まだ熱は完全に引ききっていないが、昨夜から何も食べていないことに気づく。思えば、整備士になってからというもの、ろくにまともな食事を取れていない日が続いていた。無性に腹が減り、温かいものが恋しくなった。

「…よし、今日は贅沢しちゃおうかな」

そう呟くと、彼女は迷わずピザ店のオンライン注文画面を開いた。出前ドローンで届けられるピザは、このスクラップ街のガレージでも手軽に温かい食事ができる選択肢だった。普段は節約のために自炊するケイトも、今日は特別だ。疲労と空腹で、思考能力も鈍っている。

種類を選ぶ指に力が入る。結局、定番のマルゲリータと、ペパロニピザの2枚を注文した。決済を済ませ、あとはドローンが届けてくれるのを待つばかりだ。ケイトは椅子の背にもたれかかり、大きく息を吐いた。クーパーがまだ枕元で丸まって寝ているのが見えた。

注文を終えたケイトは、もはや待っていられなかった。オフィスから出てガレージのシャッターを開け、外の敷地に出る。まだ肌寒い風が吹くが、温かいピザへの期待が彼女の体を突き動かした。

クーパーも、ケイトの行動に気づいたのか、彼女の傍らにちょこんと座った。そのモノアイは、空を見上げ、何事かというようにケイトを見つめる。まるで、「何か面白いことが始まるのか?」と問いかけているかのようだ。ケイトはクーパーの頭を優しく撫でた。

「もう少しで、美味そうな匂いがしてくるはずだ」

そう言い聞かせるように呟くと、クーパーは小さく鼻を鳴らし、再び空を見上げた。広大なスクラップ街の空は、今日ものっぺりとした灰色だ。遠くには、廃棄された大型機械のシルエットが霞んで見える。この静かなガレージに、まもなく温かいピザの香りが漂うだろう。ケイトは、早くもその瞬間が待ち遠しかった。

空を見上げていたケイトとクーパーの耳に、微かなモーター音が届いた。遠くの空に、小さな黒い点が現れ、みるみるうちに大きくなっていく。間違いなく、ピザの出前ドローンだ。

ドローンは、ケイトたちの真上までゆっくりと降りてくると、床のすぐ側に、熱気を帯びたピザの箱を2枚、そっと置いた。任務を終え、上昇しようとしたその瞬間、クーパーが豹変した。

「ワンッ!ワンワンッ!」

けたたましい吠え声を上げ、クーパーは興奮したようにドローンを追いかけ始めた。その動きは俊敏で、まるで獲物を狩る猛獣のようだ。ドローンは、クーパーを挑発するかのように、ふわりと上昇し、クーパーの届かない高さでくるりと旋回する。クーパーはそれに合わせて飛び跳ね、吠え続ける。追いかけるクーパーと、それを避けるように逃げ回るドローン。

その微笑ましい光景を、ケイトは優しい眼差しで見つめていた。熱でぼんやりしていた心に、温かい感情がじんわりと広がる。ドローンは、しばらくクーパーと戯れるように飛び回った後、最後に一回転し、遠くの空へと飛び去っていった。クーパーは、残念そうに、しかしどこか満足げに、その姿が見えなくなるまで見送っていた。

この作品はいかがでしたか?

5

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚