テラーノベル
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仏間前の廊下だ。何の変哲もない廊下だが、仏間で殺人があったことを知っているせいかなんとなくおどろおどろしく見える。
廊下を進むと、裏口前の廊下だ。奥には建て付けの悪くなった裏口の扉が見える。そういや、これも「開かない扉」ではあるんだけど……。
俺は仏壇で見つけた鍵を見つめた。この鍵じゃどうにもならないよなぁ?
裏口の扉だ。この家にある開かない扉の一つだが、カギがかかっているせいではなく家の歪みによって開かなくなっている。仏壇で見つけたカギでも開けることはできないようだ。
「…………」
「?」
中庭前の廊下だ。中庭へ出る引き戸があり、その奥にももう一つ扉がある。
東の廊下、奥の扉だ。確かこの引き戸にはカギがかかっていたはずだ。俺は仏壇から見つけたカギを取り出した。もしかしたらこのカギで……。
「……あー、違う!」
思わずがっくりしてしまう。
「なんだ?」
「鍵穴がないわ。くそ、ここのカギかと思ったんだけどなァ」
どうやらこの扉は、向こうから内鍵で閉じられているらしい。ここはハズレか……。
「?……このカギは使えなかったのか?」
「ああ。使えないっていうか、鍵穴がない」
「そうか……。……!そうだ!思いついたぞ、香住!こんな時には針金だ!」
「針金?」
「ほら、テレビとか小説でよくやってるだろ。こちょこちょってすると、カギが開くんだ。よし、針金を探しに行くぞ!」
「…………。いやだから、鍵穴がないから」
「…………。そうか」
「…………」
玄関前の廊下を通り、玄関だ。玄関から入って正面から右側の壁に沿うように、板張りの高床になっている。
「暗い」
桐島が文句を言った。
「ああ。ここ広いから、明かりが通らないところ多いよな」
特に玄関を入って右奥の方は、光が届かずよく見えない。
土間の踏み石のそばに黒い染みがある。
「なぁ、この染みって……」
俺はその染みをつくづく見下ろした。
「……仏間にあったのと似てない?」
「そうか?」
「ひょっとして、これも死んだ人間のあと……なのか?」
てっきり何かの(あるいは焼き芋の)ススの跡だとばかり思っていたが……。
「でも、だとしたらどう言う格好で死んだんだろうな?人の形に見えない」
「確かになあ……」
もしかしてここでも誰か死んでいるのだろうか。そう思ってみると、不気味だ。この影の主も、あの子に殺されたんだろうか……?
玄関戸だ。「開かないドア」といえば、現在最も「開かないドア」ではあるのだが。
「やっぱり、鍵穴なんてないよな」
ruruha
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#読み切り
ruruha
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そりゃそうだ。普通、玄関は内側から鍵を使って閉めたりしない。それにもし内側からカギで戸を開けられたとしても、打たれた釘方を封じていることについてはなんの解決にもならないのだからどっちにしろ無意味である。一応ついでに鍵を抜こうと再チャレンジを試みたが、こちらもあえなく失敗に終わった。うーん……。
仏壇で見つけたカギは、ここのカギではないようだ。というか、そもそも鍵穴が存在しない。
玄関から入って右側方向だ。暗い。ひたすらに暗い。何も見えない。
台所だ。カマドに釜や鍋が乗っている。桐島がひょいと手を伸ばして、釜のフタを取った。
「……何も入ってない」
「さっきも見たろ?」
「ご飯の入っていないお釜くらい、意味のないものはないよな?プレゼント持ってないサンタさんくらい、意味ないよな!?」
「そんなこと言うなよ。サンタさん、泣いちゃうだろ」
まあそんなことを言う子は「良い子」にはカウントされないだろうから、サンタが彼女に泣かされそうな可能性は低そうであるが。
囲炉裏の間にも何もないことを見越して、二人は仕方なく玄関へ戻ってきた。
「ハズレだねえ」
「ハズレだねえ」
「手詰まりだなあ」
「手詰まりだねえ」
小さなカギを弄びながらいう俺に、桐島が全く誠意を感じられない相槌を返してくる。
もう一度家の中を見て回ったけれど、カギが使えそうな場所やモノは見つからなかった。そう簡単に、ことは運ばないか。
偶然カギを見つけたのでどこか使える場所はないかと探してみたわけだが、実さはこんなカギ大した意味なんてないんじゃないだろうか。もしかして無駄なことしてんのかなぁ……。
「香住」
軽くへこたれていると、桐島が声をかけてきた。
「あそこはもう調べないのか」
「あそこ?」
見ると、彼女は玄関奥の暗がりを指さしている。
「ああ、あそこ……」
そういや、そこはちゃんと調べてなかったか。一応調べてみたのだが、暗いということしか判明していない。確かにもう一度ちゃんと調べてみる価値はあるかもしれないな……。
俺たちはもう一度、玄関右奥の暗がりへと近づいてみた。目を凝らして見てみる。
「暗い」
「うん、暗いな」
感想はさっきと微塵も変わらなかった。暗がりの床に、ごちゃごちゃと荷物が積み上げれているのはわかる。しかし、それ以上のことは何一つ分からない。圧倒的に暗いのだ。
「やっぱ、ダメだな。明かりがないと……」
他の部屋は調べたし、このままでは手詰まりの状況に変化はない。それならここをもっと調べるという選択肢は、悪くない気がする。
「よし、どっかから明かりを調達してくるか」
「懐中電灯だな!?」
「そんなハイテク機器、この家にあるかね……。探すならロウソクじゃね?」
「うん……?」
ロウソクか。なんかどっかで見たような。
コメント
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うわ、この回は暗い廊下と鍵探しでじわじわと追い詰められる感じがよく出てましたね。鍵穴すらない扉の前で「針金だ!」「鍵穴がない」「そうか」のやりとり、ちょっと笑っちゃいました。空っぽのお釜とサンタの例えも好きです。そして最後に「ロウソクならどっかで見たような」……伏線でしょ、これ。次が楽しみです。