弱いから　　完

習い始めて、目黒と会う時間が少し減ったが我慢出来る。

頑張っている姿を見に行く事もある。

習ったことを、目黒相手に試してみることもある。

目黒ー頑張ってるね。

渡辺ーうん。

目黒ー強くなってきた。

渡辺ーホント？

目黒ー力の使い方が分かってきたんじゃない？

渡辺ーうん、むちゃくちゃ力使う必要ない。

目黒ーまだ行くの？

渡辺ー後5回くらい。

目黒ー俺も行く。

渡辺ーおぅ。

目黒は、ちょっと困っている。

渡辺が強くなるのはいい。

だが、後ろから抱きしめようとすると、肘鉄を喰らう。

渡辺は、「あ、つい」と言って笑う。

冗談で組み敷いたら、かわされる。

悪戯が出来なくなった。

目黒ー俺の楽しみが減った。

渡辺ーバカバーカ。

目黒ーそこまで強くならなくていいじゃん。

渡辺ー何言ってんだ？強くならなくてどうする？

目黒ー俺には、護身術使わなくていいからって事！

渡辺ーどうかな、無理矢理な事もあるかもしれないし。

目黒ー翔太くんを泣かすような事しないし！

渡辺ーいつも、泣かされてるけどな。しなくていいんだな。

目黒ーあれとこれは別でしょうが！

渡辺ー俺には一緒だ。

目黒ー気持ちいいくせに。

渡辺ー帰るぞ。

目黒ー晩ご飯作らせていただきます。

渡辺ー待ってる。

練習日。

渡辺は向井と組み合っている。

向井は、手加減しているが、渡辺は本気だ。

何度かに1度くらい、向井を倒すことが出来る。

向井ーしょっぴー、凄いなぁ。

渡辺ー強くなった？

向井ー強うなったし、ちゃんと型使えてる。

渡辺ーふふふ。

向井ーめめより強いんちゃう？

渡辺ー後ろからきたら、やっつけてる。

向井ーそれはええことなん？

渡辺ーうん。

向井ーめめが可哀想やわ。

渡辺ーいいんだ。

その時、控え室から目黒とラウールがやって来た。

向井は目黒に言う。

向井ーめめ、しょっぴー強うなったな。

目黒ー康二が言うなら強くなったのかな。

向井ーうん、型も使えてるし。とっさの判断で動けるし。

目黒ー翔太くん、良かったね。

向井ーなんや？嬉しそうやないな。

目黒ー後ろから近づいたら、やっつけられる。

ラウーしょっぴー、強くならなくていいって思ってるでしょ？

目黒ーいや、強くていいんだけど。

ラウー後ろから抱きしめたら、やられるんだ？

目黒ーん。

渡辺ー余計なこと言うな！

弱いからといって、パートナーに頼らない渡辺をメンバーは凄くカッコいいと思った。

対等の立場であるために。

女の子みたいに守られてない。

背中合わせで闘えるように。

渡辺は、強い男だなとメンバーは思う。

目黒ーえっ、翔太くん初段なの？

渡辺ーん。

目黒ーそんな強くならなくていいんだけど。

渡辺ー師範が昇級テスト受けてみるか？って言うから、いつも受けてたら、いつの間にか初段。

目黒ー俺より強いじゃん。

渡辺ーふふふ。

目黒ーだけど、自信になってるね。

渡辺ー過信したらいけないけど。

冷静に対処すれば勝てると思う。

目黒ー泣かなくて済むね。

そう言って目黒は渡辺の頬を撫でる。

その手を掴み手のひらにキスをする。

この半年以上、2人は身体を繋いでいない。

まだ、あの時の感触を思い出すらしい。

軽いボディタッチやキスはさせてくれるが、その先は拒まれる。

2度も同じくらい酷いことされたから仕方ないけど、目黒は非常に残念である。

そろそろいいかなと思うけど、これは渡辺の心の問題だから、目黒は待つしか出来ない。