食事を終えて、外に出ると、
「少し公園を歩きましょうか」
彼に肩を抱かれた──。
寄り添って、広い公園内を歩く。まだ葉の茂っていない樹々にはイルミネーションが瞬いていて、夜道を淡く照らし出していた。
木の下にベンチを見つけて、並んで腰を下ろす。
暗い中に街路灯の落とす橙色の鈍い光だけが輝いていて、まるで此処に二人っきりしかいないような感覚に陥る。
言葉もなく見つめ合うと、顎が捕らえられて、唇を重ねられた。
「……んっ…」
「君の唇は、柔らかいですね…」
舌先で下唇がなぞられ、もっと口を開けるよう促される。
外でなんて恥ずかしくて……だけど嫌がったりすれば、また責められてしまうようにも感じて、彼の舌を受け入れた。
「……拒まないんですか?」
唇を離して言う彼に、
「だって……」
と、はにかんで俯くと、
「嫌と言わないのなら、もっと深いキスをしますよ?」
彼が言って、それ以上の行為を予感させるようにメガネを外して折りたたむと、胸ポケットへ挿し入れた。
「……だって、いつも……嫌って言ってはいけないって……」
小さな声でぼそぼそと口にする私に、彼がくくっと喉の奥で笑う。
「それは抱いている時の話で、嫌なことは断ればいいんです」
彼に言われて、自分の思い違いに真っ赤になる。
「……ですがそんなあなたも可愛らしいので、もっとキスをしてもいいでしょう?」
再び顎が捕まれて、深いキスを強いられるのに、
彼の前では、どんな返事をしても同じだったような気もして、自分からもぎゅっと抱きついてキスに応えると、
腰がぐっと片腕に抱き締められて、情熱的に伝わる愛にただ離れがたく感じるようだった──。
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