長い長い年月
深い深い海の底で
優しい魚たちと
綺麗な姫君達と
楽しく暮らしておりました
何不自由なく暮らしておりました
太郎様 あなたがいらっしゃるまでは
わたくしはあなたに会って知ってしまったのです
人を愛するという感情を
愛しい人と離れる寂しさを
もう一度会いたいと願う切なさを
会いに行きたいという衝動を
これが 愛 というものなのですね
何百年何千年幾年月を越えて
初めて知ったこの心は
太郎様
あなたに教えていただきました
あなたはいまどうしていらっしゃるのでしょう
元の生活に戻り
わたくしのことなど思い出しもしていないかも
しれません
でもよいのです
わたくしが覚えておりますから
それでよいのです
太郎様
よもや玉手箱をお開けになられては
いないと思いますが
お体だけには気をつけて
末長くお幸せに過ごしてくださいませ
そして
そして
もう一度竜宮に来たいと思われましたら
あの優しい麗しいお声で 一言
乙姫
と呼んでくださいませ
長くなりました
それではまた
浦島太郎様へ
愛を込めて
乙姫
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