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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第71話:村の広場で「ミニ雪まつり」計画〜元社畜の陣地構築と、氷の神殿〜
二月も終わりに近づき、北海道で猛威を振るった大吹雪もようやく落ち着きを見せ始めていた。
もちろん、外は相変わらずマイナス十度を下回る極寒の銀世界だが、連日の雪かきと除雪作業が一段落し、限界集落にはどこかのどかな静けさが漂っている。
我が家の縁側では、神獣シロの『適温25度の絶対防壁』の中、俺は熱いほうじ茶を啜り、小春ちゃんはこたつでアイスを食べながら、完全に骨抜きになっていた。
「いやぁ……雪かきがない日って、本当に天国ですねぇ」
「ああ。これぞ真の『何もしない贅沢』だ。ブラック企業で毎日エクセルのセルをミリ単位で調整していたあの頃の俺に、この極上の怠惰を見せてやりたいよ」
ジンバルに固定されたスマホの向こう側では、今日も250万人のリスナーが、俺たちのダラけきったスローライフを環境映像として楽しんでいる。
だが、そんな究極の平和は、豪快な村の長(トップ)の訪問によって破られた。
「おーい! 兄ちゃん、小春ちゃん! 暇してるかー!」
ズカズカと庭先の雪を踏み鳴らして現れたのは、先日巨大カボチャを持ってきた村長だった。
「村長? どうしたんですか、そんなに鼻息を荒くして」
俺が縁側のガラス戸を開けると、村長はニカッと白い歯を見せて笑った。
「いやな! 除雪も終わって、村の年寄り連中がみんな暇を持て余しててな! ちょうど広場に除雪で集めた『巨大な雪山』ができとるから、みんなで『ミニ雪まつり』でもやらんかと思ってよ!」
「……ミニ雪まつり、ですか?」
「おう! 札幌の雪まつりには負けるかもしれんが、限界集落の意地を見せてやろうぜ! 兄ちゃんも手伝ってくれや!」
有無を言わさぬ村長の圧力。
限界集落において、村長からの招集は絶対である。
「……わかりました。小春ちゃん、行くぞ。スコップとスノーダンプの準備だ」
「はいっ! なんだか文化祭みたいで楽しそうですね!」
かくして、俺と小春ちゃん、そして『ミャウ?』と不思議そうについてきたシロ、キタキツネの兄弟(コン吉とコン次郎)、さらには上空を護衛するシマエナガの戦術部隊という大所帯で、村の広場へと向かうことになった。
広場に到着すると、そこにはすでに村のおじいちゃんやおばあちゃんたちが集まり、除雪でできた巨大な雪山の周りをスコップでペチペチと叩いていた。
スマホの配信画面を広場に向けると、チャット欄が一気に活気づく。
『限界集落・裏雪まつりキターーー!!』
『おじいちゃんたちが一生懸命雪だるま作ってるの尊いww』
『札幌に対抗する気満々で草』
『ほのぼのしてていいなぁ』
村人たちが作っているのは、ウサギやクマ、あるいはちょっといびつなテレビのキャラクターなど、素朴で手作り感あふれる可愛らしい雪像たちだ。
「おう兄ちゃん! 兄ちゃんもなんかデカいの作ってくれや!」
村長に背中をバンバンと叩かれながら促され、俺は広場の中央にそびえ立つ、まだ手付かずの巨大な雪山を見上げた。
「……なるほど。わかりました。やらせていただきます」
俺の目の奥に、かつてないほどの鋭い光が宿る。
「小春ちゃん、カメラを回しておいてくれ。これより、オペレーション・スノー・ビルドを開始する」
俺はワークマンの防寒着の袖をまくり、大型のスノーダンプと鉄製のスコップを構えた。
そこからの俺の動きは、素朴な「雪まつり」という言葉からはかけ離れた、異常なものだった。
「まずは基礎工事! 雪山の下部を固め、地盤の沈下を防ぐ! 続いて、雪を50センチ四方のブロック状に切り出す!」
ザクッ! スパーンッ!!
俺は残像が見えるほどの速度でスコップを振るい、巨大な雪山から、まるで豆腐を切るようにミリ単位の精度で『直方体の雪ブロック』を次々と切り出していく。
「お、お兄さん……? なんか、ただの雪遊びの動きじゃないんですけど……」
小春ちゃんがドン引きする中、俺は切り出した雪ブロックをレンガのように積み上げ始めた。
「互い違いに積んで強度(ジョイント)を確保! 壁面の角度は崩落を防ぐために75度を維持しろ! 隙間にはシャーベット状の雪をセメント代わりに流し込む!」
シュバババババッ!
俺の脳内には、完璧な建築設計図(CADデータ)が展開されていた。
『はあああああああ!?!?』
『動きが完全に軍隊の工兵なんだがwwww』
『雪像じゃなくて要塞(ベース)作ってねえか!?』
『ミリ単位で切り出された雪ブロック美しすぎるだろww』
『主、またしても元・需品科の謎スキルを発揮』
『エジプトのピラミッド建設現場かな?』
開始からわずか一時間。
村人たちが作った可愛らしい雪ウサギの横に。
俺が完成させたのは、高さ3メートルに及ぶ、まるで中世ヨーロッパの城壁のような『完璧な雪の要塞』だった。
「ふぅ……よし。野営陣地としてはこんなものだろう。屋根のアーチ構造も完璧に計算してあるから、上に軽トラが乗っても崩れないぞ」
俺が汗を拭いながら満足げに頷くと、村長やおばあちゃんたちが「たまげたなぁ……」と口を開けてポカンとしていた。
「お兄さん……これ、雪像っていうか、完全に砦(とりで)じゃないですか……」
小春ちゃんが呆れ返った、その時だった。
『ミャウ(いいお立ち台ね)』
広場の隅で待機していたシロが、俺の作った雪の要塞にトコトコと近づき、まるで階段を登るようにして、その最上部(城壁の天辺)へと軽やかに飛び乗ったのだ。
そして、要塞の頂上で、熱を伴わない『純粋な神聖オーラ』だけを全開にして、誇らしげに香箱座りをした。
――ピカァァァァァァァァァッ!!!!
シロの体が要塞に触れた瞬間。
俺が積み上げた雪のブロック全体に、真珠色の光が波紋のように広がっていった。
「うおっ!?」
光が収まった後、俺と小春ちゃん、そして村人たちは、信じられない光景を目の当たりにした。
シロが乗った雪の要塞が、真っ白なパウダースノーの質感を失い、まるで磨き上げられた大理石、あるいは透明なクリスタルガラスのように、カチカチに硬化して『氷の神殿』へと変貌を遂げていたのだ。
太陽の光を反射して、七色のプリズムが広場全体を照らし出す。
「お、お兄さん……! 雪の要塞が、一瞬でツルツルの氷のお城になっちゃいました!!」
小春ちゃんが絶叫する。
チャット欄は、完全なる狂乱の坩堝(るつぼ)と化していた。
『うわああああああああ!?!?』
『氷の神殿キターーーー!!!』
『雪がクリスタルになったぞwwww』
『シロ様が玉座(要塞)に座った瞬間、城が完成しやがったww』
『ディズニー映画の魔法じゃねえか!!』
『ありのー♪ ままのー♪』
『限界集落・裏雪まつり、開幕からクライマックスww』
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Master! Build an ice statue of me next! I will pay 1 million dollars!“(主よ! 次は私の氷の彫像を作ってくれ! 100万ドル払うぞ!)』
世界中が氷の魔法に熱狂する中。
俺は、スコップを地面に突き立て、深呼吸をしてから、カメラに向かって振り返った。
「……世界中の皆さま、落ち着いてください。これは決して、魔法で雪が氷に変わったわけではありません」
『出たァァァァァ!!!』
『主の限界言い訳タイム・雪まつり編ww』
『さあ、このクリスタル神殿をどうやって論破する気だww』
俺は、完璧なポーカーフェイス(元社畜の極意)を維持したまま、静かに言い放った。
「私が雪ブロックを積み上げる際、強烈な圧力をかけたことで内部に『プレッシャー・メルティング(圧力融解)』が発生していました。そこにシロが飛び乗った際の『着地の衝撃エネルギー』と『肉球からの局所的な熱伝導』が加わって表面がわずかに溶け、マイナス十度の外気によって瞬時に再氷結する『リフリジング現象(復氷)』が起きたのです。ええ、スケートリンクの氷が滑るのと同じ原理、ただの物理的な相変化ですね」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、氷の要塞をバンバンと叩きながら絶叫した。
「リフリジング現象で、高さ3メートルの雪の壁が一瞬で大理石みたいにカチカチのピカピカになるわけないでしょ!! しかも内側から真珠色に光ってるじゃないですか!! どう見てもシロちゃんの神聖なオーラで『氷の神殿』が錬成されたんでしょうが!!」
『小春ちゃんの的確すぎるツッコミww』
『プレッシャー・メルティング(神聖力注入)』
『リフリジング現象(魔法の大理石化)』
『適応力バグおじさん、ついに熱力学と雪氷学に喧嘩を売る』
『スケートリンクの原理で神殿は建たねえよww』
俺の理不尽極まりない現実逃避と、小春ちゃんの鋭すぎる正論パンチに、250万人の視聴者たちは腹を抱えて笑い転げた。
『コンッ!』『キュゥ!』
「チュンチュン(ジュルルッ!)」
ツルツルの氷の神殿の足元ではキツネ兄弟が楽しそうに滑り遊び、上空ではシマエナガ部隊が神殿を護衛するようにホバリングしている。
村人たちも「こりゃあ立派なもんができた!」と大喜びで手を叩いている。
暇を持て余した限界集落の広場で始まった、小さな雪まつり。
だがそれは、神獣のオーラと元社畜のバグったスキルが融合することで、世界中が熱狂する「氷の神殿建設プロジェクト」へと発展していく、その始まりの日に過ぎなかった。
コメント
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みぅです🤍🥀 第71話読んだよ…! もうね、最初のほうで「雪かきがないって天国」ってだらけてるのに、村長が来た途端にバチバチの工兵モードになるお兄さん、ギャップがすごくて笑っちゃった😹 ミリ単位で雪ブロック積むの、完全に戦地の要塞作ってて草。しかもシロちゃんが乗ったらマジで氷の神殿になっちゃうの、神聖ファンタジーすぎて鳥肌立ったよ…。 そして「プレッシャーメルティングとリフリジング現象で説明しようとする」小春ちゃんのツッコミで完全論破されてるのも可愛くて、もう全部好き。ドバイの石油王登場も熱すぎる…! 続きが楽しみ🥀💫