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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第72話:神獣のオーラが彫刻を仕上げる〜フラクタル結晶化と、白銀のシンデレラ城〜
限界集落の広場で突如始まった「ミニ雪まつり」。
昨日、俺が元・需品科のスキルを駆使して積み上げた『雪の要塞』が、シロのオーラによって一瞬で『ピカピカの氷の神殿』へと変貌を遂げた事件は、村人たちに多大なるインスピレーション(勘違い)を与えてしまったらしい。
「おう兄ちゃん! 昨日のはたまげたわ! あんた、雪の彫刻の天才だったんだな!」
翌朝、広場に行くと、村長が村のショベルカーと除雪車を総動員し、一晩かけて押し固めた高さ5メートルはあろうかという『巨大な雪の立方体(キューブ)』をドカンと用意して待っていた。
「さあ! 今日は昨日よりもっとすげえのを作ってくれや! 札幌の雪まつり会場のメイン大雪像にも負けねえやつをな!」
「……村長、買い被りすぎです。昨日のアレは偶然の産物で……」
俺が訂正しようとするのも聞かず、村のおじいちゃんおばあちゃんたちは「兄ちゃんの芸術作品がまた見られるぞ!」と拍手喝采している。
ジンバルにセットされたスマホの向こう側でも、250万人のリスナーが『限界集落のミケランジェロ』『早く彫れ』と無責任に煽り立てていた。
「どうしますか、お兄さん? さすがにこの巨大な雪の塊から、一日で大雪像を削り出すなんて不可能ですよ。チェンソーでもないと……」
小春ちゃんが、そびえ立つ真っ白な雪のキューブを見上げてため息をつく。
確かに、俺に建築の知識(陣地構築)はあっても、芸術的な彫刻の才能など1ミリもない。丸一日かけて削ったところで、せいぜい巨大な豆腐が巨大なこんにゃくになる程度だろう。
俺が腕を組み、どうやってこの場をやり過ごすか考えていた、その時だった。
『ミャウ』
氷の神殿(昨日の作品)の頂上を玉座にして、接地面の熱だけを完全にオフにした器用な結界の中で優雅に二度寝を決めていたシロが、ヒョイッと飛び降りて、巨大な雪のキューブの前へとトコトコ歩み出たのだ。
そして、そのそびえ立つ雪の壁を見上げると、ふんと小さく鼻を鳴らし。
純白の右前足を、雪の壁の中央に『ポンッ』と押し当てたのだ。
――ピカァァァァァァァァァッ!!!!
「うおっ!?」
シロの肉球が触れた瞬間、巨大な雪のキューブ全体が、目を焼くような強烈な『真珠色の光』に包み込まれた。
次の瞬間、俺たち人類の理解を完全に置き去りにする『奇跡のオーバーテクノロジー』が発動した。
ズゴゴゴゴゴォォォォォ……ッ!!!
巨大な雪の塊が、まるで目に見えない数万本の「神のノミ」によって削り出されているかのように、猛烈な勢いで形を変え始めたのだ。
不要な雪が蒸発(昇華)し、残された雪がカチカチの透明な氷へと超圧縮されていく。
四隅からは天を衝くような鋭い尖塔(スパイア)が伸び、正面には精緻なアーチ型の城門が開く。
外壁には中世ヨーロッパのゴシック建築を思わせる複雑なレリーフが刻み込まれ、さらには透明な氷の窓ガラスの向こう側に『螺旋階段』や『シャンデリア』までが透けて見える。
時間にして、わずか十秒。
光が収まった広場の中央に現れたのは。
高さ5メートルに及ぶ、まるでドイツのノイシュヴァンシュタイン城をそのまま透明なクリスタルで再現したかのような『超絶技巧の巨大な氷の城』だった。
太陽の光を浴びて、城全体が七色のプリズムを放ち、キラキラと幻想的に輝いている。
「………………は?」
俺の口から、魂の抜けたような音が漏れた。
「えっ……? えっ……?」
小春ちゃんは、あまりのオーバーテクノロジーに語彙力を完全に喪失し、口をパクパクさせている。
村長たちに至っては、膝から崩れ落ちて氷の城を拝み始めていた。
配信のチャット欄は、完全なる狂乱状態の坩堝(るつぼ)と化していた。
『はあああああああああああ!?!?』
『城が!! 一瞬で城が建ったぞ!?!?』
『3Dプリンター!? シロ様は神聖3Dプリンターなのか!?』
『彫刻のレベルがおかしいww ルーブル美術館に飾れww』
『窓の中に氷のシャンデリア見えてるんだがww 細かすぎだろww』
『ミケランジェロも裸足で逃げ出す神の御業』
『札幌雪まつり実行委員会「解せぬ」』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”A masterpiece! I will buy that ice castle for 50 million dollars to store my gold bars!“(最高傑作だ! その氷の城を5000万ドルで買い取り、我が金塊を保管しよう!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$500MeTubeギフト)=”Master! Let me shoot my next fantasy movie in that castle!“(主よ! 私の次のファンタジー映画をそのお城で撮らせて!)』
世界中が、神獣がもたらした「一瞬の芸術」に熱狂し、チャット欄はギフトの嵐で真っ赤に染まっている。
シロは「これくらい当然よ」とでも言いたげに、自分の前足をペロペロと舐めて手入れをしている。
俺は、プルプルと震える小春ちゃんの肩を叩き、大きく深呼吸をしてから、カメラに向かって振り返った。
「……世界中の皆さま、落ち着いてください。これは決して、魔法で城が錬成されたわけではありません」
『出たァァァァァ!!!』
『主の限界言い訳タイム・氷の城編ww』
『さあ、この超絶技巧の城をどうやって論破する気だww』
『言い訳ハードルがカンストしてるぞww』
俺は、完璧なポーカーフェイス(元社畜の極意)を維持したまま、静かに、そして淀みなく言い放った。
「雪の結晶は、元来『フラクタル構造(自己相似性)』という幾何学的な性質を持っています。シロの肉球がもたらした静電気のスパークがトリガーとなり、雪の塊の内部で急激な『連鎖的結晶化』が起きたのです。さらに、風の侵食作用が静電気に誘導されることで、まるでCNCルーター(自動切削機)のように雪を削り出した。ええ、ただの気象条件とフラクタル幾何学が偶然生み出した、自然の造形美ですね」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、氷の城の城門をバンバンと叩きながら絶叫した。
「フラクタル構造で、中に螺旋階段とシャンデリアがあるお城ができるわけないでしょ!! どう見たってシロちゃんの神聖なオーラが、一流の彫刻家みたいに形を作ったんでしょうが!! 風の侵食でゴシック様式のレリーフが彫れるか!!」
『小春ちゃんの的確すぎるツッコミww』
『連鎖的結晶化(神の錬成)』
『風の侵食作用がCNCルーターは草』
『適応力バグおじさん、ついに幾何学と気象学を総動員して現実逃避』
『自然の造形美(ノイシュヴァンシュタイン城)』
俺の理不尽極まりない科学的(?)な言い訳と、小春ちゃんの鋭すぎる正論パンチに、250万人の視聴者たちは腹を抱えて笑い転げた。
『ミャウ(私の作品、最高でしょ?)』
シロが、足元の熱をシャットアウトして自分が作った氷の城のバルコニーへと軽やかに飛び乗り、女王様のように誇らしげに下界を見下ろしている。
その足元では、コン吉とコン次郎のキツネ兄弟が「新しいお家だ!」と城の周りを走り回り、上空ではシマエナガ部隊が「雪の妖精」にふさわしい城の完成を祝して旋回している。
「こりゃあ……札幌にも負けねえ、世界一の雪まつりだべや……!」
村長が、感動のあまり目頭を押さえている。
限界集落の広場で突如として誕生した、世界一美しく、そして理不尽な「氷のシンデレラ城」。
俺たちのダラけきったスローライフは、神獣のオーラが織りなす奇跡のアートによって、今日もまた一つ、人類の常識を華麗にブチ破っていくのだった。
コメント
1件
シロちゃんのオーラが一瞬で雪の塊を氷の城に変えちゃう展開、マジで美しすぎて言葉失ったよね…!✨💕 しかもその出来栄えがノイシュヴァンシュタイン城級って、神獣のスペックおかしすぎるよ!笑 そんな中でも「フラクタル構造が〜」って全力で科学で説明しようとするお兄さん、もうそれ以上無理があるって小春ちゃんに永遠にツッコまれ続けてて最高だった🤣 村長たちも村をあげて盛り上がってて、めっちゃほっこりしたよ〜! 次は城の中でお茶会とかしてほしい…!🏰🐱💫