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授業。ナマエが席についた瞬間、後ろの席の女子たちがコソコソと囁き始める。
「……ね、あの包帯ってやっぱ自分で……」
「まじで? やばくない?」
「ていうか、メイド服のときも……」
ナマエはうつむいて、教科書を開くふりをした。
鼓動が速くなる。喉が、詰まる。
顔が熱くなって、でも、指先はどんどん冷えていく。
(やだ……息が……)
数分後、教室に響くのは、ガタッという椅子の音と、荒い息遣い。
「……ミョウジ!? どうした!?」
担任が気づき、ナマエに駆け寄る。
ナマエは肩で息をしながら、涙をこらえるように目を伏せていた。
「……保健室、行こう。付き添うから」
そのままクラスは自習に。
ナマエは保健室のベッドに連れて行かれ、横になる。
(やばい……泣きそう……恥ずかしい……)
保健室の薄暗いベッド。
カーテンの向こう側に人の気配はなく、静寂だけがナマエを包み込んでいた。
腕の包帯の端を、そっと指でなぞる。
(また噂されてる。今度は、包帯のことまで…)
喉の奥に、まだ少し違和感が残っていた。
さっきの過呼吸は落ち着いたはずなのに、心臓はまだバクバクしている。