スマホを開く。通知がいくつか、いつメンのグループチャットに届いていた。
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「今どこ? 無理してない?ちゃんと息できてる?」
「噂のこと…先生にも言って、対処してもらう?」
「絶対に犯人見つけよう。証拠なくても、探してやる」
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ナマエは指を動かしながら、思うままに言葉を打つ。
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『今日はもう無理。帰る』
『噂の出どころ、全然わかんない。でもなんとなく…身内な気がしてて』
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既読がつく前に、スマホを胸の上に置いた。
目を閉じる。
(……なんで、こんなことに)
(せっかく、ここではちゃんとやってきたのに。誰にも迷惑かけないように、
頑張って、明るくして、ちゃんと距離も守って)
唇を噛む。
(過去を閉じて、新しく積み上げてきたものが……また、全部――)
静かに、涙が耳の横をすべっていく。
(……でも。まだ、取り返せる)
(“かわいそうな被害者”になればいい。身に覚えのない噂で傷ついてる“無実の子”でいれば)
(そうすれば――)
目を開ける。
天井の白さが、どこか遠くに感じられた。
(そうすれば、まだ……ここにいても、いいって思ってもらえるよね?)
自分に問いかけるように、ナマエは小さく笑った。
その笑みはどこか痛々しくて――
どこまでも、苦しそうだった。
ーー
実はこの辺りから某鬱百合漫画の要素をたっぷり含むようになります