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元貴が産まれたとき、俺は4歳になる直前だった。少し肌寒くなり始めた9月14日、父さんと二人で、母さんがいる部屋に飛び込んだのを覚えている。
「滉斗、元貴よ。あなたの弟よ」
そう言って、生まれたての小さな赤ちゃん……元貴を抱っこしている母さんの目は、これからの生活を楽しみにしているように、キラキラとしていた。
「滉斗もちっちゃかったんだぞ~」
そんな父さんの言葉に、本気で驚いた気がする。自分より小さくて弱いやつは、全力で守らなきゃ。この元貴は俺が守る。真剣に、兄ちゃんとして、心に決めたのに。
母さんが退院して、数ヶ月。元貴のいる生活に慣れ始めたときのことだった。夜中、目が覚めてしまった俺は、飲み物が飲みたくて、リビングに向かった。
「もう無理よ……!」
「でも、それでは元貴だけが!」
両親が話している声がして、「早く寝なさい」と怒られたくなかった俺は、飲み物は諦めて、部屋に戻った。いま思えば、あれが最後のチャンスだったんだ。元貴と離れずにすむ。
「おはよう滉斗、朝ごはんできてるから食べなさい」
次の日の朝、テーブルに朝食を運ぶ母さんは、どこか吹っ切れたような、なにか重たい重石がなくなったような、スッキリとした感じがした。
「……滉斗、起きてたのか……おはよう」
逆に父さんは、悲しそうな、つらそうな顔……というか全身から負のオーラが出ていた。俺が違和感を感じたのは、そのときだった。あれ?元貴は?
いつもなら、元貴が起きて、ミルクがほしいと泣いて、母さんがごめんねって言いながらミルクの用意をする。その間に父さんが朝食を運んでくれて、先に二人で食べる。なのに……
元貴は、どこいったの?
元貴の泣き声も、なんなら寝息も、なにも聞こえない。元貴の存在が、この家には感じられない。確かにそこに、昨日俺が寝る前にはいたのに、どこにもいない。
「もう滉斗も大きくなったし、ベビーベッドも要らないわね」
母さんが言ったその一言で、俺の中のなにかが弾けた。
お前、元貴をどこやったんだよ!元貴になにしたんだよ!返せ、元貴を返せ!
4歳になりたての俺が出せる全力を出して叫んだ。俺が寝てる間に、俺の大切な弟がいなくなってたんだ、叫ぶに決まってるだろ。それなのに、母さんは、
「もとき?そんな子うちにはいないわよ?どうしたの、滉斗」
うそだ、そんなはずない。俺は確かにこの目でみた。大森元貴、また産まれて1ヶ月ぐらいの、俺が守ると決めた弟だ。訳が分かんなくなった当時の俺は、その場で地団駄を踏みつづけた。
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コメント
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若井さん・若井父可哀想すぎます…