テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
転校してきた殺し屋君第2章:崩壊する日常
第12話:旋律の死神と白銀の剣閃
放課後の旧校舎。人気のない廊下に、メトロノームのような規則正しい足音が響く。 黒咲は脇腹の鈍痛を堪えながら、音楽室の重い扉を開けた。数日前のセーフハウス崩壊で負った傷は、まだ塞がっていない。
放課後の教室に響いていたのは、優雅なピアノの旋律だった。 鍵盤を叩いているのは、クラスでも目立たない存在だったはずの、高橋奏多。 「……いい曲だろう? 死にゆく者に捧げるレクイエムだ」
高橋が演奏を止め、ゆっくりと振り返る。その瞳には、指谷や黒岩と同じ、組織の裏切り者特有の冷酷な光が宿っていた。 「四天王の一人、高橋奏多……。お前も教頭の手先か」 「手先? 心外だな。僕はただ、この退屈な学校という檻を壊したいだけさ」
高橋が指揮棒(タクト)のような細い仕込み杖を抜くと同時に、音楽室の空気が一変した。 シュッ、と鋭い風切り音。高橋の動きは、まるで音楽を奏でるように流麗で、それでいて容赦がない。
「くっ……!」 黒咲は咄嗟に防戦に回るが、体が思うように動かない。数日前のダメージが、足首の踏ん張りを奪っている。 「どうした、黒咲。あの『掃除屋』と謳われた君が、随分と鈍いじゃないか」 高橋の仕込み杖が、黒咲の肩を浅く切り裂く。 「ハァ……ハァ……。怪我人の相手を、よくもペラペラと……」 「お喋りは終わりだ。フィナーレといこう」
高橋が杖を振り上げ、黒咲の喉元を貫こうとしたその瞬間――。
ガシャァァァァァン!!
音楽室の窓ガラスが、内側からではなく外側から粉砕された。 飛び込んできたのは、銀色の閃光。
「……私の獲物を、勝手に掃除しようとしないでくれる?」
冷徹な声と共に、高橋の杖を真っ向から弾き飛ばしたのは、組織随一の剣術使い・藤堂騎士華(水原智代梨)だった。 彼女は制服のスカートをなびかせ、抜き放った白銀の模造刀(中身は組織特製の特殊合金)を肩に乗せて不敵に笑う。
「……藤堂。遅いんだよ、お前」 「ふん、主役は遅れて来るものよ。凪……黒咲、あんたは後ろで寝てなさい。この音痴な指揮者は、私が斬り伏せる」
高橋奏多は、舌打ちをして姿勢を低くした。 「剣術使い、藤堂騎士華か……。面白い、僕の旋律とどちらが速いか試してみよう」
放課後の音楽室。 指揮棒と白刃が交差する、優雅で残酷なデュエットが始まった。
(つづく)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ひとせるな
318