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ひとせるな
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転校してきた殺し屋君第2章:崩壊する日常
第13話:最後の一人と、裏切りの鏡
「くっ……流石は藤堂、計算外の速さだ……!」 音楽室の隅、ピアノに背を預けた高橋が、切れた頬の血を拭う。藤堂の鋭い一閃が高橋の仕込み杖を半ばから叩き折っていた。 「終曲(フィナーレ)はあんたの負けよ、高橋。……トドメを刺してあげる」
藤堂が銀の刃を振り上げた、その時だった。
ドォォォォンッ!!
音楽室の壁が外側から爆散し、コンクリートの破片が礫となって二人を襲った。 「なっ……!?」 煙の中から現れたのは、巨躯を誇る最後の一人――四天王・浪岡龍水(なみおか りゅうすい)。 「……高橋、下がっていろ。ここは俺が引き受ける」
浪岡が拳を鳴らすだけで、音楽室の床がミシミシと軋む。彼は、組織内でも最強のパワーを誇るとされる武闘派だ。 「最後の一人、浪岡か……。黒咲、下がってなさい! 二人まとめて私が……」 「待て、藤堂」 黒咲が前に出る。傷ついた脇腹を抑え、呼吸は浅い。だが、その瞳は浪岡の動きを凝視していた。 「……こいつは、俺がやる」
「フン、死に損ないが。その意気込みだけは買ってやろう」 浪岡の拳が空気を爆発させる。黒咲は咄嗟に腕を交差させて防ぐが、あまりの衝撃に身体が浮き上がる。 「終わりだ、黒咲!」 浪岡の追撃。誰もが黒咲の死を予感したその瞬間、浪岡の拳は、黒咲の喉元寸前で静止した。
「……? 何をしている、浪岡! 早く殺せ!」 背後から高橋が叫ぶ。 しかし、浪岡は動かない。それどころか、彼はゆっくりと拳を解き、高橋の方へと振り返った。
「悪いな、高橋。……俺の任務は、こいつを殺すことじゃない」
浪岡の手には、いつの間にか隠し持っていた無線機が握られていた。 「……ターゲットA(高橋)の無力化準備完了。掃除屋、始めろ」 「な、何を言って……がはっ!?」
高橋の背後に、影のように忍び寄っていた黒咲のナイフが、その頸動脈に突きつけられた。浪岡の「攻撃」は、黒咲に近づき、高橋の視界から黒咲を隠すためのブラフだったのだ。
「……浪岡、お前……まさか、スパイか?」 黒咲の問いに、浪岡は無愛想に鼻を鳴らした。 「『裏切り者の組織』に潜入した、ボス直属の『二重スパイ』だ。……教頭のクソジジイに尻尾を振るのは、もう飽き飽きだったんでな」
浪岡龍水。四天王最強の男は、実は組織のボスが放った「裏切り者を監視する裏切り者」だった。
「……驚いたわね。まさかあんたが味方だったなんて」 藤堂が呆れたように刀を引く。 だが、浪岡の表情は晴れない。彼は重苦しい口調で告げた。
「安心するのは早い。俺がスパイだったことは、すでに教頭に感づかれている。……今、この学校全体が『ある計画』のために封鎖された」
放送室から、あのノイズ混じりのチャイムが響き渡る。 音楽室のモニターに映し出されたのは、優雅に茶を啜る教頭先生の姿だった。
『……素晴らしい。浪岡君、君の裏切りも含めて、全ては「特別授業」のカリキュラム通りですよ』
(つづく)