コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日は新1年生の入学式の日。
本来は2年生である私はここには居ないで家でダラダラ出来る日…
だったんだけど、
先生が急に頼んできたこの仕事のせいで今この場にいる。
そう。
入学式のお手伝いという仕事!!
私は案内係。
1番つまんない仕事である。
そんな時、遠くに人影が見え
近づくと何故か服がびちゃびちゃに濡れた男子が突っ立っていた。
ネクタイの色的に多分、新1年生。
「え、ちょっ、君大丈夫?!誰かに水かけられた?!」
そう慌てていると
「…入学式の会場どこっすか?」
と聞いてくる。
「いや、そんな格好で行くの?!その前に着替えでしょ!!早くこっち!!遅れるから!」
そう言って私はその子の手を引っ張って保健室へ向かう。
それが不器用くんと私の出会い。
あの後、不器用くんは無事に入学式に間に合ったらしい。
しかもびちゃびちゃに濡れた理由はペットボトルで水を飲んで落ち着こうとしたら
ペットボトルを持っている方に力を入れすぎて開いたと同時に自分に水がかかったとか。
「不器用過ぎる…」
そう独り言を漏らす。
入学式が終わり、
新1年生は最初の登校日となった。
もちろんだが在校生は去年と同じく授業を受けるために学校へと来る。
そして女子は皆、口を揃えてこう言う。
『新しい彼氏探しだ!!』
と。
私もそんな女子の一員…
ではなく、私はあいにく恋愛というものに興味が無い。
しかも私は彼氏にリードされるより彼氏をリードしたい側なのだから。
「おはよ!葉兄さん!!」
後ろからそう言いながら私の背中に頭突きをしてくるのは親友の夏奈。
『葉兄さん』
私のクラス間でのあだ名である。
なぜ『姉さん』ではなく『兄さん』なのかは分からないが。
ここの高校は何故かクラス替えが無い。
だから1年生の時からクラスメートはずっと同じ人。
仲良くなったら天国。
仲良くなれなかったら地獄。
の白黒はっきり系の学校だ。
もちろん私のクラスは天国。
皆が皆、仲がいい。
「そういえばこの前の入学式の仕事どうだった?楽しかった?」
ニヤニヤとしながら挑発的に笑う夏奈。
「…なんか不器用な人居たわ」
「不器用な人?!何それ!!詳しく教えてよ〜!」
そう言いながら夏奈は私の肩を揺さぶる。
「ちょ、やめて…酔う酔う……」
そんなことをしていると
「お、またやってんのか?確か〜…『葉兄さん』だっけ?」
という声と共に1年の頃の担任、
笹川が近づいてくる。
「あ!!笹川じゃん!!え、私らの担任ってまさか…!」
「お、正解〜!またお前ら問題児のクラス担任だよ…」
ガクリと肩を落としながら夏奈と話す笹川。
「葉兄さんは俺と同じクラスで嬉しいか?」
ニヤニヤした目で見てくるのやめて欲しい。
「…そういう所だよ笹川」
そう冷たい声を返すと
「え?何が…?」
「俺何かしたっけ?」
と戸惑いの声を漏らす。
「夏奈、早く行こ。こんな奴に構ってないで」
「『こんな奴』て…オモロ……」
口を押えて笑いながらも、
笹川に手を振る夏奈。
「あ、そっか〜、今日から3階だっけ?」
「うん、足疲れるね」
「うわ、それな〜?」
そんな会話を交わしながらクラスメートたちが騒ぐ2-7の教室内へと足を進める。
「あ、葉兄さんじゃん!!おはよ〜!!」
「おはよ」
自分の席につこうとすると私の席が無かった。
虐め?
いや、これは違う。
「あ、やっぱここにあった」
「笹川!イス使ったなら戻してっていつも言ってんじゃん!!」
いつも笹川は私の椅子を使っている。
そして元の場所に戻さず放置。
「あ、ごめん!!忘れてた〜!!」
なんなら担任までも生徒のようになっている。
「笹川、葉にぃに怒られてやんの〜!!」
周りからは笹川を笑う声ばかり聞こえてくる。
そんな時、
「あれ?ここじゃない…」
と見覚えのある声が廊下から聞こえてきた。
「あ、あの時の先輩だ!えっと確か名前は…葉先輩?でしたっけ?」
廊下にいたのはあの時の不器用くん、『傘阜 琉乃』くんが居た。
「え、1年じゃん!!可愛い〜!!」
クラス内は笹川から傘阜くんへと視線は移っていく。
「え、何してんの?ここ2年の階だよ?」
「葉兄さん、知り合い?!」
「いや入学式の時に会ってさ…」
「葉兄さん?男…?」
戸惑いの声を漏らしながら少し引いたような目で私を見る傘阜くん。
「違う、そういう意味じゃなくて…」
「それより!!迷ってるんでしょ?一緒に1年の階行くよ!」
そう言って強引に傘阜くんの腕を引っ張って教室を出る。
2-7からは『葉兄さん、積極的〜!!』と黄色い歓声が聞こえてくる。