注意事項
・一話参照
・続きです。
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青空の下、珍しく猫のフードを下ろしたquが、膝に子供を抱えて砂浜に座っていた。
ザパ、ザパー。
と波の音が2人を包む。
子供はどうやら寝ているらしく、こてん、とquの腕に頭を乗せていた。
国民がちらちら、と集まりquを見る。
quは口元に人差し指を持って行って、静かにするよう、笑顔で伝えた。
ゴーン、と鐘が鳴る。
これは午後を表す鐘である。
「…qu様、午後でございます、」
1人の男が声をかけた。
quは頷き立ち上がった。
それから子供を抱っこした。
子供はquの肩に頬をぺたぁ、と垂らしてぐっすりと寝ているようだった。
まるで、お餅のような頬だ、と男は思った。
「晩御飯の用意をしようか。」
quの言葉と共に国民も砂浜から動き出した。
ザパ、ザパー。
波は彼らに手を振るだろう。
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「ci、ご飯だよ。起きれる?」
とんとん、と背中を叩くと子供、ciは目を覚ました。
目を擦って、quを見上げると嬉しそうににぱ、と笑った。
「くぅさっ、ご、ごはんっ??」
「うん。ほら、あーん。」
「んあー…。」
スプーンに乗っかったオムライスを口に運ぶ。
ぱくっ、と効果音が鳴りそうな口がオムライスを口内に閉じ込める。
もっぐ、もっぐ。
「…くぅさ、くぅ、さぁ。」
くいくい、と服が引っ張られる。
「どうしたん??」
「ん…、んん、」
目の前に座る男をciは指差した。
「ええ?彼がどうかした?」
「だ、ぁれ。」
「僕の友達、xxくん。会ったことあるっけ??」
「…んん、、ぁ、」
こてん、と倒れそうになるciを慌ててぽんぽん叩く。
「寝ちゃあかんっ!!ご飯食べないと。」
「はぁい…。」
quの前に座る男は、緑色の髪の毛をサラサラと風に吹かせていた。
緑色、がciにとって何か特別であったのだろうか。
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「くぅさ、だぁこ。」
「はいはい。抱っこやね。」
両手を広げて抱っこをせがむciを抱き上げる。
ぎゅう、と抱きしめられると身体がほかほかと温まる。
Q国は安全、平和な国である。
それは、国々との肝試しや腕試し等の関わりが深く、滅多にトラブルが起きないからだろう。
そう、子供が成長するにあたり、凄く最適な国であった。
ciはquの肩に頬をぺたん、と乗せて窓の外をぼんやりと見る。
小鳥が共に飛びあって、蝶々が重なり合う。
風で花々はヒラヒラと舞い、川は反射してキラキラと輝く。
そうして、子供達の明るい笑い声が響いていた。
「…ci、そんなに寝て、今日の夜中に起きるんちゃうか??」
「んやぁだ…、ねむいの、くぅさ、あったかいの。」
「暖かいのはciだと思うけどな…。」
駄々をこねるciに、quは思わず微笑んだ。
昔、会った時ciは酷い扱いをされていた。
傷だらけで、瞳に何を移しているかも分からない。
そんなciは、quを見て少し目を開いた。
まるで、安心したように。
そんな瞳に引かれて、quはciを引きずる男を止めようとした。
だが、自分はただの旅人。
止めれるはずがなく。
そのまま、ciと別れてしまった。
それからquは、総統閣下へと登り平和な国を築き上げた。
こうして、ciを幸せに成長させれるように。
願った未来が、叶えられるように。
ピピ。
通信機器が鳴った。
quはciを抱っこしたまま、通信を付けた。
「はいこちらquです、どうぞ。」
『こちらrdです。quさん、ciはいますか??』
「おるよー。」
『ciの保護国を見つけました。quさん、Wr国はご存知ですよね。』
Wr国。戦争国家と呼ばれる国だが、Q国によく遊びに来てくれる。
「知ってますよ。ciはWr国に帰るんですか??」
『そういう事ですね。往復は大変だと思いますので、また連絡ください。Wr国の皆様はciの安全が確認できたので、多少は待てるとのことです。』
「…多少、ってことは。長くは待てないってことですよね。」
『そうですねー。』
「分かりました。」
通信を切ると、ciがこちらを見ていた。
「だって、ci。おうちに帰れるんやって。」
「おーち、??ここじゃ、ないのぉ??」
「ちゃうよ。Wr国。覚えてる??」
「わかぁない。くぅさ、がいー、」
ぎゅううう、と抱きしめられる。
Wr国の皆様は信用しているが、ciのこの様子を見ると不安になる。
quは頭を撫でて、微笑んだ。
「ciが元気に過ごせるなら、僕はどこでもええかな。もし、ここにいたいのなら、そう伝えような。」
「うんっ、でも、くぅさも、てつだってね、」
「もちろん。怖かったら僕が抱っこしてやるからな。」
「こわくなくても、だっこはするの、」
quがぽんぽん、と頭を撫でるとciは頭を動かして、もっと撫でろ、と駄々を捏ねた。
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「連絡取れましたー。」
rdはピースを向ける。
するとzmは膝から崩れ落ちて、tnは泣いているshpを撫でていた。
他の皆も喜んでいたり、泣いていたり。
「ci、ってどっかで聞いたことあるなって思ったら、前世でrbさん達が話してた子か!!」
pnがrbの背中を撫でながらうんうん、と頷いた。
「そういや、pn兄さんは前世のciと会ったことがないんやったなぁ。」
「僕はあるけどねっ!」
「なにそれ自慢ー??」
pnは舌をべーっと出して笑うsnに近寄ってデコピンをした。
いたっ!!と声を出してしゃがむと、knが大きな声をあげながら駆け寄ってきた。
嬉しいが、耳が壊れる。
そんなsnにrbが駆け寄り、knを蹴飛ばした。
knもそうだが、rbだって負けない声量だ。
それに重なり、pnがクソデカボイスで笑いだした。
snは等々気絶してしまうのだった。
「はぶッ…。」
「sn姐さーんッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ちょ、rbうるさいって!!!」
shoがピコピコハンマーでrbの頭を叩く。
「あー、それ俺のなんだけどー。」
rdのピコピコハンマーのようだ。
…なぜそんなものを?
とも思うが、気にしない方が良いだろう。
ピコピコ。
何度も何度もshoはrbを叩いた。
「いたいっ、いたいっ、ちょ、ちょっと!?」
「…、ぶふッ。」
「あ、shp!!今笑ったやろ!!」
先程まで泣いていたshpが吹き出し、ぷるぷると震えながらtnの後ろに隠れた。
「はは、そりゃ急にうるさなったら笑うしかないよなあ。」
「ほんとそう!!rb急にどうしちゃったのさ。」
「pn兄さんまで!?」
rbは拗ねたらしく、つん、と唇を突き出してそっぽを向いた。
「一応言うけど、Q国は島国で遠い場所にあるから、ciと会えるのはまだ時間かかるからね。」
rdがそう言うと、tnが首を傾げた。
「…どれくらいなんやろな??」
「まあ、2時間以上はかかるだろうね。それに、往復はquさん疲れちゃうし、もう少しかかるかも。」
pnが指で数えながら言った。
「…あ、そうだ。少し気になってることがあってさ。」
「なんや?」
zmが顔を上げてpnを見上げる。
「ciさんって、前世の記憶あるんですよね??」
「ある。俺達のこと覚えとった。」
「だったらさ、rd。おかしいと思わない??自分の国を覚えていない、とか、すぐに泣いちゃったりとか。まるで前世を体験している大人とは思えないよ。例え、幼児で心も少し幼くなってたとしても。」
「…確かに、その通りだね。ci、まるで何も分からない子供だった。ああ、でも。quさんの言は知ってたよ。」
pnにrdが付け足す。
すると、htがosと顔を合わせて言った。
「…quさんって、前世ciと仲良かったよね。ほら、ciが外交でQ国に言ってわたあめを貰ってきたじゃん。」
「思い出しためう。Q国総統閣下はquさんめぅ。」
「じゃあ、なんでciはquさんを覚えてて、他を忘れるような発言をしたん??」
zmがosとhtを交互に見る。
「「分からない」」
2人は同時に首を傾げた。
そこに、rdがぽんっ、と手を叩く。
「そういえばquさんの話だと、今世の昔でciと出会った、って言ってた。つまり、quさんに前世の記憶はないんじゃないかな。」
「あ、ciって一時期前世の記憶を無くしかけたことがあるって言ってたわ!!それも、辛くなった時。ciは、その時の記憶に戻ったってこと?」
zmがうーん、と顎に手をやる。
「…ciの中で、前世の記憶が無くなりかけてる、??」
tnが呟くと、shpがふるふると首を振った。
「そんなのいややっ、!!」
「…shp。分かるやろ、ciもこんな気持ちでいたんや。」
zmが俯く。
この先が不安で仕方なく。
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ciがquと過ごして2週間ほど過ぎただろう。
ciはquにべったり、quはciに過保護へとなっていた。
「くぅさ〜っ、だぁこっ!!だぁこして!!」
「ええよ〜!!」
抱っこをすると、ciはquの肩に頬を乗せる。
定位置、というやつだろう。
「くぅさっ、くぅさっ、らだとぺぇとはっ??」
「rdさんとpnさん??会いたいん??」
「あいたいのっ、あそびたいっ!!」
「せやねえ。行こうか。」
「う、うんっ、ぼーるもってく!!」
「じゃあ、船の準備お願いして来るね。」
「はぁい!!」
ciはおもちゃ箱からボールや水鉄砲を取り出してカバンに詰め始めた。
それを横目で見ながらquは船の手配をした。
荷物を持ち、手を繋いで岸まで行く。
船に乗り込み、ciはquの膝の上に座った。
「rdさんに伝えとくな。」
「はぁい!」
quは通信機器で、「運営国向かいます」と送った。
それから、波の音を聞きながらciとおしゃべりをする。
両手を使ってあーのこーのと言うciは可愛らしくて仕方ない。
「それでねっ、きのうのゆめで、くぅさがねっ!!」
「あはは、僕出てきたんや〜。」
「そなの!!」
ピーピー。
通信機器が震えた。
rdからだ。
quは耳に当てた。
ciが不思議そうにこちらを見ていた。
「こちらqu。どうぞ。」
『こちらrd。quさん運営国に向かってるんですか!?』
「うん向かってるよ。」
『ciもいます??』
「いるよ、ほらci。」
通信機器をciに渡す。
「こんにちわ!!らぁだっ!!」
『ci!!久しぶりだね、元気にしてた??』
「げんきよ!!くぅさのごはんね、おいしいの!!」
『良かったねえ。pnとzmも呼んどくから。』
「ぺぇと!!…と、ぞ、ぞむ、??」
『うん。zm。』
ciはぽかん、と口を開けたまま固まる。
quはどうやら昼飯を頼んでいるようだ。
そのため、quに聞くことが出来ない。
「…、だぁれ、??」
仕方なくrdに聞くと、ふう、と息をつかれた。
『覚えてないかな。Wr国のzm。』
「わかぁない。」
『…じゃあ、tnは??』
「とぉとぉ、??」
うーん、と首を傾げて考えてみる。
その名は、口に馴染んでいてスラスラと言うことができる。
なんでだろうか。
「…、とぉ、とぉ、??」
「ciー、昼飯ペペロンチーノ作ってもらえるってー。」
「あっ、くぅさっ!!」
ciは通信機器をquに渡した。
「あれ、rdさんとお話終わったん??」
「うんっ、うんっ!!」
「じゃあrdさん、また後で会いましょ。」
『えあ、はい。』
とんとん、その発音、単語を何度もciは繰り返し考える。
どこかで、いつかで、聞いた事のあるその名を。
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「あーっ!!らぁだっ!」
運営国に着くとciは走ってrdに抱きついた。
「わーci〜。久しぶり!!」
「うんっうんっ、ぺぇとは!!」
「城の中にいるよ。行こうか。」
rdに抱っこされて、歩き出す。
quは少し買い物をしてくるらしい。
手を振って、離れていった。
「ねえ、ci。Q国はどう??」
「たのしいよっ、あのね、ぽかぽかする!!」
「へえ〜。いいね、こっちはまだ風が冷たいからさ。」
「うんっ、でもらぁだはあたたかい」
「そうかな??多分、ciの体温が暖かいからだよ。」
城に入るとpnの他に、snやtr、krなどもいた。
「あ!!ciぉ!!」
「ぺぇとっ!!」
rdに抱っこされているため、走ることができない。
代わりにciは両手を広げた。
pnに抱っこを変わってくれたらしい、pnの首に手を巻いてぎゅうう、と抱きつく。
「よしよしっ!!久しぶりに来たんだね!!」
「うんっ、あ、あの、だぁれ??」
snらをこてん、と首を傾げて見る。
snは笑顔で自分を指差した。
「僕はsnだよ!!こっちはtrさんで、krさん!!」
「しぃがみっ??かぁいい、」
「ええ!?僕は男の子だよ!!」
「あははッ、昔と同じこと言ってる!!」
「と、とぁぞ、??とぁぞっ!!」
「そうですよciさーん!!」
よしよし、と撫でられる。
ciは目を細めて喜んだ。
「んへ、えっと、くぉのあ、くぉ、ぁえ、??」
「少し難しそうですね、あははっ!!」
kr、が言えないciを、くすくすと笑う。
「ノア、でもいいですよ。」
「のあっ!!のあー!!」
「ふふっ、かわいいっ、!!」
のあ、が簡単らしくciはわいわいと喜んだ。
「…さて、じゃあci。こっちの人にも挨拶しようね。」
「う??」
「…zmやで。ci、俺はzm。」
「ぞむ、??」
「……せや。」
緑色のパーカーを鼻先まで深く被ったzmは俯いたままそう言った。
ciはpnに抱っこされたまま、手を伸ばしそのパーカーを取った。
「んっ。」
「ぇぁッ、ci…??」
「…んへへ、かっこいいっ、ぞむっ、ぞぉむっ。」
「ciッ…、!!」
ぎゅううううッ、とzmはciを抱きしめた。
pnはciを離してやった。
ciは混乱しているようだが、徐々に抱き返すようになった。
「かなしいの??いたいの??」
「ひぐッ、ciぉ、ぶじでよかった…、」
「いたいのいたいの、とんでけー!!」
両手をばっと広げる。
「くぅさがね、いたいのなくなるおまじない、ってやってたんだよっ。いたいない??」
「うんッ…、うん、、いたくない、っ。」
「…だぁこっ!!だぁこがいい!!」
zmはciを持ち上げて、抱っこした。
「んへへぇ、ぞ、ぞぉむっ。」
「せや、zmやで…。」
「あっ、ぶたさーんっ!!」
後ろからやってきたtnを見てciは手を振った。
「ci…??よ、ようやく来たんか、!!」
「ci、豚さんちゃうで、こいつはtn。」
zmが紹介すると、ciはこくんと頷いた。
「とぉとぉっ、さっきふねでもきいたよ!!」
「…ほぉか。懐かしいなぁ。」
わしゃわしゃ、と撫でる。
「すんすんっ…、なんのにおいー??」
「え?なんか匂いするか??」
「うんっ、いいにおいするー。」
「tnさんっ、quさんいました!!」
「あ、shp。」
shpが建物を指差してこちらに駆け寄ってきた。
ふわっ、となにかの匂いが強くなる。
shpはciを見ると、目を見開いた。
「あっ、いいにおい!!」
「…ぇ、ci、??」
「あー、shpもしかして煙草吸ったか。」
「さ、さっき、あっちでut先生と。す、すみませんっ、匂います!?」
慌ててジャージを脱ぐ。
ciは手を伸ばし、そのジャージを抱きしめた。
「すんすんっ、んへへ、このにおいすき。」
「…え、??煙草やで、臭い臭いっ。」
shpが取ろうとするが、だめだめ!と首を振られる。
「これぼくの。とっちゃだめ。」
「ええ…。」
バタバタッ、とうるさい足音が近寄ってくる。
utとknが走ってきた。
「お前!!!!!」
「ひゃうっ!?」
ciは驚いてshpのジャージを頭に被り、zmの胸に埋もれた。
「あ、す、すまんっ…!!」
「…んぁえ、すんすんっ、このにおいもしってるよっ!!」
ciが顔を出してknの服に顔を近づけた。
「煙草体に悪いわ!!やめときci。」
utがすぐさま手で塞ぐがciはその手を退けた。
「しってるもん。いいんだもんっ。」
「…、」
shpが近づき、ciの頬を撫でた。
「なぁに??」
「…名前、呼んでぇや。」
俯きながら、ぽつり、と呟かれたその声は小さく、弱々しいものだった。
ciが両手を広げて、shpの頬を触ろうとしていた。
knがそれに気が付き、shpの頭を手で押してciに近づけた。
「んへへ、し、しょ、しょぴぃっ。」
「…ci、??」
「しょぴ、はっ、おれがいなきゃ、だめねっ。」
「…うん。」
「おれが…、ぁれ、?あ、ぉ"、おれ、??だ、れ、ぁ??ぁ"?」
ciが震えだし、頭を抑えた。
「だれっ、やぁだ、い"だいの、ぃだいい、」
「ciッ!!」
zmが抱き寄せる。肩にぽてん、と頭が乗った。
「い”だいよぉ、ぁぁ、ひぐっ、うわぁぁんッ!!」
「大丈夫やからな、ci!!俺が着いとるから!!」
zmが頭を撫でながら大きな声で励ます。
pnが冷やしたタオルを持ってきてくれたようで、それを受け取りciの額に乗せた。
発熱している。
記憶を取り戻すためだろうか。
ぜえぜえ、と荒い息が部屋を包む。
shpが、泣きそうになっていた。
恐らく、自分のせいで、と思っている。
knとutがshpの背中を支えてやりながら、ciを見ていた。
「いたい、い"やぁ、もう、やぁだ、ぞ、ぞむッ、ぞぉむ、」
「おるよ。ここにおる。」
rdの寝室へ連れて行き、ベットに寝転がせた。
rd達は発熱用の薬やら、タオルやらを用意してくれているらしい。
ciの手を握る。
「いたいのいたいの、とんでけー!!これで、痛くないよ。ほら、ci、大丈夫や。」
「ぞぉむッ、どこ、ぞむ、どこぉ、??」
「ここ。ここにおるよ。ほら、zmやで。」
「とぉとぉは、??とんっ、とぉ、!」
「…!!ここや、ここにおる!!」
zmの後ろで心配そうに見ていたtnが駆け寄る。
お腹を布団越しにぽんっ、と叩く。
「ぁ、とぉと、ぞぉむ…、み、みんなぁ、?」
「shp、ut、kn。こっちにおいで。」
3人が部屋に入ってくる。
「ci、」
「みんな、っ、いる、??いなくなんないで、」
「うん、おるよ。」
shpが微笑む。
「ぜっ…たい、ここに、いて。」
「約束な!!」
knがうん!と頷く。
「もぉ、ひとりは、やなの、」
「それは僕もや。」
utが優しい声で伝える。
「ひとり、やだ、やぁだ、ひぐッ…ぐ、ぁ"」
ふっ、と意識の糸が切れる。
zmが額にかかる前髪を指先で退ける。
「俺、quさん呼んでくるわ」
knが立ち上がり、部屋を出ていく。
utもknに着いて行った。
zmが人差し指をciの頬に当てると、ciは小さな手でそれをぎゅう、と握った。
その手が力を無くさぬよう、握り返すのだった。
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「…ほう水色の髪か。これは売れそうじゃ。」
1人目は、白髪の老人。
老人は俺に首輪を付けて引きずって家に連れて行った。
木々に葉やらツタやらが着いている家。
部屋に入ると、汚れた赤色のカーペットが目に入った。
それが、まるでtnのように見えてしまった。
こんなに、汚れているのに。
きっと俺が汚れているからこう見えるのだろう。
だって、tnは綺麗でかっこいいんだ。
ベチャッ、と雑巾を顔に叩きつけられる。
「ここの掃除でもしておれ。」
はい、と返事をしたつもりだが、水分が足りずカスカスの返事がぽっと出た。
ゴシゴシ、と床を拭く。
雑巾はあっという間に汚れた。
tnは元気だろうか。
ああ、会いたいなあ。
なんで俺だけ、こんな目に。
ブイイイイイン。
大きな音が近づいてきた。
俺は咄嗟に振り返ると、老人はバリカンのような物を手にしていた。
まさか、全部剃るつもりなの?
水色の髪なんてそんな貴重じゃないよ。
俺は、抵抗しようとした。
老人が椅子を持ち上げて俺に投げつけた。
椅子の角が頭に当たってしまい、意識がうっすらと消えていく。
ブイイイイイン。
水色の髪の毛がぱらりぱらり、と落ちていく。
「子供は何も分からないから、ストレス発散にいいのよね。」
2人目は、ぷんぷん香水を漂わせた女。
女は俺を袋に入れて連れて帰った。
来たのは、小さな町だった。
「は??その汚い足を床に付けないでくれる??手があるでしょうよ、手が。這って歩くのよ。」
足を上げて、腕を使って床を這う。
女は紫色の靴を脱いだ。
きら、と光るが少し傷があるようだ。
ああ、まるでそれはshpのようだった。
でも、shpは傷1つない。
あいつは凄いんだ。強くて、かっこいい。
俺の、憧れで親友。
俺は頑張って這っていると、女は遅い!と怒って背中に足を乗せた。
「アタシがこうやって連れていこうか!!」
背中の足を使ってずるずる、と引きずられる。
まるでこれはスリッパだ。
摩擦で腹が痛くなる。
俺は咄嗟に足を床に着けた。
「この足切ろうかってんだよッ!!!!!!」
女は怒りを顕にした目をこちらに向けた。
それから、足首を折られた。
女は、力がないものだと思っていた。
俺の意識は、やはりふっと消えて行く。
「おい、こいつ遊びに使えんで??」
3人目は、ヤンチャそうな男の2人組。
2人は、俺をサッカーボールのように蹴りながら連れて帰った。
公園にやってきて、とにかく俺をボールにしていた。
蹴られて、殴られて、投げられる。
ただただ、それの繰り返し。
俺が嘔吐してしまって、男の1人の足にかかった。
男は酷く嫌がり俺の顔面を蹴り飛ばして帰って行った。
もう1人が、首輪の紐を引っ張って連れて行く。
ずるずる、と引きずられるが、どうにも俺には歩く力がなくなってしまったらしく、そのまま、引きずられた。
「なにしてるんや!!」
1人の男がこちらに駆けて来た。
ああええと、誰だっけ。
あっ、quさんだ。前世、Q国の総統閣下だった人。外交きっかけで仲良くなったんだっけ。
「子供を離してください。」
「黙れ他人がしゃしゃんなよ。」
quさんは、少し怖がるように後退りしてしまった。
quさんは何かを考えた後、男を睨みつけて、俺の首輪に手をかけた。
「他人の癖になんだてめぇっ!!」
「他人でも、子供はこんなことされる必要ないです!!!!!!この子を両親の場所へ…」
「いないよ。」
そう、言えばquさんは驚いたように目を見開いた。
quさんはきっと、俺の事を分からない。
前世の記憶が、ないんだろうな。
quさんは殴られてその場に尻もちを着いた。
その隙をついて、俺は引きずられて連れていかれた。
彼に伸ばしたはずの手は、地面に落ちた。
空が視界に広がる。
まつ毛がバサバサと視界を邪魔する。
ああ、夕焼けが消えて行く。
青色にふんわり、と変わり行く。
青色…、誰だったか。
ああ、ut先生だ。
あいたいなあ…。
あいたいんだ。
さびしいんだ。
4人目。
5人目。
6人目。
を超えてから数えるのを辞めることにした。
それから、辛いと思うことも無くなった。
何かを見て、悲しくなることも無くなった。
ただただ、自分は奴隷であり、生きがいは買ってくれた人に従うこと。
自分ではなにも決めては行けないこと。
教わった通りにすれば良いだけ。
そうしたら、幸せになれるはずなんだ。
…そうだとしても、幸せを見つけるために、なんでこんなに苦労しなきゃならないの?
99の苦しさと、1の幸せ。
1の幸せが、何かも分からないのに、なんで俺はこんなに頑張ってたの?
「私にお前の道を作らせてくれないだろうか。」
そう、言ったのは誰だったか。
前世か、または今世か。
忠誠を誓った俺に、幸せは来るだろうか。
─────────────
コンコン。
「入れ。」
「…、ciが高熱を出し寝込んでるわ。」
「そうか。まあ良い。それはきっと元の道に戻る準備、と言うだろう。」
真ん中の机に肘を着く彼の後ろに飾られた旗。
tnは、いつもそれを見ていた。
「…、また、ここに来てくれるんかな、」
「分からない。私もまさか、ciが記憶を無くしてしまうとは思わなかった。」
「せやね、忘れられるって、キツイもんやな。」
tnはソファに座って、コーヒーを1口含んだ。
「だが、私はciを信じている。ciの道は、私が作ってやったんだ。壊れてしまったり、何か不満があれば責任を取るのは私だ。」
「…それは、俺もやし、皆もや。」
「ciは私に忠誠を誓ったんだ。私は、その決断が悪いものだったとは思わしたくない。」
カーテンの隙間から橙色の夕日が漏れる。
「…ただ。決めるのはciであり、今の人生を歩むのもciである。彼の好きなようにさせると良い。」
立ち上がり、tnにひとつの封筒を渡した。
「私の作り上げた道が、悪くなかったか。それだけ、聞いといてはくれないだろうか。」
「おう、任せろ。」
封筒には、
ci Wr国幹部勧誘届
と、書かれている。
「私が、あの子をあんな目に合わせてしまったのかもしれないから。」
そっ、とWr国国旗を撫でる。
総統閣下、grはぽつりと呟くのだった。
所々雑な部分が多くなってますね、すみません!!!!!!😭😭
今回もいいね1000超えるかなってワクワクしながら通知を待ってます!!✨️
視聴数1話500、2話400突破しました!!
ありがとう!!!!
コメント
12件
感動🥺🥺
見るの遅れて申し訳ないです… ciくん記憶無くしちゃって、wr国の人達が苦しい思いするのは同じようなことをciくんも感じてるからどっちもどっちみたいになっててやゔぁい(?) gr総統閣下が勧誘届だしてるの好きすぎるよおお🫶🫶😭 ピコピコハンマーのくだりで吹きました() ciくん記憶徐々に取り戻していってるのかな…?そうだと信じます😇 ciくんの「sypはおれがいないとだめだね」が好きすぎゆ…🫶🫶