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「で、なにかあったの?」
元貴を見ていなかったけど、ひゅっと息を飲んだのがわかる。目を合わせると、君はえ?別に、と視線を逸らした。明らかに動揺しているが、それをなんとか誤魔化そうと必死なのが手に取るようにわかる。きっと元貴の事だし、会話していくうちにぽろっと本題を話すだろう。そう切り替えて、買ってきてくれたポテチの袋に手を伸ばした。
最初は、新曲の公開日についてや今度のライブの衣装などミセス関係の話題だった。だが段々、活動の意味やこれからの具体的な目標という風な、真剣な話に少しずつ変化していく。舵を取っているつもりは無いのだろうが、きっと話したい事はこういうことなんだろうな、と思いつつ話を聞く。
「ジャンルとか天才っていう言葉で括られちゃうからさ、最近は何をやっても」
ため息混じりでそうぼやく。もちろん有難いことではあるんだよ?と上目気味で付け加えたが、可愛さで話に集中が出来ないのでやめて欲しい。
「そんな感じで、色々言われちゃって。考え始めたらそのまま意識に沈んでいくなって思ったんだよね。人と居たい気分だったのに意味無いやん!って。だからお邪魔させてもらおーって」
軽い調子で言っているが、きっと元貴は擦り寄られた事で孤独感に襲われたんだろうな。胸が苦しくなる。彼はれっきとした天才だ。これだけ長く一緒に居ると、好きだからとか言うフィルターじゃなく、本当にそうひしひしと思う。天才が故に「寂しさ」が常にまとわりついている。その原因は周りと違うからなのはもちろん、今日みたいに知りもしない人にレッテルを貼られることで。きっと全て話せる僕に吐き出すことで「寂しさ」を紛らわしているのだろう。若井は同い年の幼なじみで、照れくさいところもあるのかもしれない。もちろん憶測だが、背景を辿ると100%違うとは言えない訳で。なんだかその事実がまた僕の胸を苦しくさせた。
「変わるものじゃん、人って。人と巡り会う事によってさ。なのにそれを自分らが縋るために安泰を求めて変わるなって言ってくるのは違うよね。俺だって人間なのに」
冷たく心臓を掴まれた感覚があった。
確かにそう言われて見れば、僕は元貴の何を、どんなとこを好きになったんだろう。人を形成するものは流動的なのに。しばらく考え、ふと顔を上げると元貴の顔が目の前にあった。
「うわっ!?…もう、びっくりした〜。どしたの?」
「いや、涼ちゃんすんごい顔で考え事してるから。ちょっと面白くて見とれちゃった」
そう笑う君がいてくれることに、少しだけ安堵した。
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読んで下さりありがとうございます!
このお話は、大森さんや涼ちゃんの本質だったりを書いているのですが、あくまで作者の創作です。もちろん自分なりにインタビューや制作秘話を見て考えているのですが、どうしても皆さんの考えと、あれ?ちょっと違うなとなってしまう所があると思います。もしあった場合、そこはお話内の設定として見ていただけると幸いです。
次も是非読んで頂けると嬉しいです。