テラーノベル
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かんな
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――ジャラッ。
暗闇の中で、鎖の音が響いた。
ルイは目を開ける。
夕暮れのような、赤く染まった部屋。
その中心に、自分だけが取り残されている。
「……また、これか」
両手を動かそうとすると、手首に冷たい感触が食い込んだ。
鎖。
太い鎖が両手を縛り、足にも絡みついている。
引きちぎろうとしても、びくともしない。
「……離せよ」
ガチャッ。
力を込める。
それでも鎖は、むしろ強く締まった。
息が苦しい。
胸の奥まで締めつけられていく。
【奇病:夢蝕症(むしょくしょう)】
強い恐怖や孤独、心に抱えた傷は眠っている間に悪夢となり、時には夢の中に閉じ込められてしまう。
ルイは現在、この夢蝕症の重度の段階にあり、毎夜残酷で猟奇的な悪夢に犯され、心身共に限界を迎えていた。
朝。
ルイはベッドから重い体を起こした。
自分の腕を見る。
両手に手錠がはめられている。
が、それはジャラリと音ともにさぁっと消えていった。
夢なのに。現実との境目がもうわからなくなってしまっていた。
ルイはソファに座ってスマートフォンを見ていた。
【夢蝕症患者の治療法:ヒーラーとの接触】
夢蝕症から患者を救う唯一の手段は、ヒーラーとの肉体的接触である。手を握る、抱きしめるなどの接触によって、精神を癒すことができる。
【あなたにぴったりのヒーラーをマッチングできます】
「何だそれ…」
疑いながらも、ルイはそのサイトのページにアクセスし、必要情報を入力した。
もうこの状況を打開できるならばなんでもよかった。
数日後。
【あなたに合うヒーラーが決定しました】
突如届いたメール。ルイはなんのことだっけ?と首を傾げた。
ピンポーン
突然呼び鈴が鳴ってルイはインターホンの画面を見た。
そこには帽子を深く被った見知らぬ青年が立っていた。
「…はい」
『こんにちは、ルイ、さんですか?俺は…タイキです。夢蝕症ヒーラーマッチングサイトの紹介で来ました』
「え…」
(本当に来たんだ)
ルイはまだ疑いながらもセキュリティーロックを外し、タイキを部屋に招き入れた。
『…綺麗な部屋ですね』
敬語になれてないのか緊張しているのか、ぎこちない声でタイキが言った。
ルイはタイキをリビングのソファに座らせて、お茶を運んできた。
「君が俺を治療してくれるの?」
『…そう、だと思う。』
曖昧な返事にルイは疑いの目を向けた。
『実は俺、この仕事初めてで。ってゆうかお父さんが勝手にサイトに登録してて。その…この仕事のことそんなに分かってないんだ…ごめん』
「そう、なんだ…」
少し期待していたルイは俯いてため息をついた。落ち込んだ様子のルイにタイキは慌てて続けた。
『で、でも!俺はやると決めたことはちゃんとやるよ!ルイが大変な状態で、助けることができるのは俺だけだってことも分かってる…だから、ルイのこと、話してくれない?』
「…話すって…何を?」
『ま、まず年齢とか…は知ってるか』
「え、俺知らない」
『え?いや、サイトに載ってたろ。俺たち同い年。確か誕生日も割とちかくて…』
ルイはサイトを開いた。
【選ばれたヒーラー】 タイキ。
マッチング率:99%
「…99%?」
『そう。なかなか出ない数字だって俺のお父さんが言ってたよ』
「そうなんだ」
『ルイは今どのくらい重度なの?たまに悪夢を見るくらい?それとも毎日?』
「…毎日」
『そっか。じゃあ、夢と現実の区別はついてる?起きてるように夢の中にいるような…そんな感じはある?』
「…たまに」
「うっ」
突然ルイは頭痛に襲われた。
『え?…大丈夫?』
「っ…いつもこうなんだ…突然頭が…いたく…」
ルイは痛みで気を失ってしまった。
タイキは慌ててルイを抱きかかえるとソファに寝かせた。
美しい顔が痛みで歪んでいる。
『ど、どうしよ…確か、夢蝕症患者の治療法は、肉体的接触…』
タイキはルイの手に自分の手を重ねた。
ルイの体がぴくりと跳ねる。
暫くそのままでいたが、一向に目覚める気配がない。
悪夢を見ているのか、ルイの顔は苦しそうに歪み、額からは冷や汗が流れていた。
タイキはその顔にそっと触れた。
可哀想だ。
そう思った。
ただ単に、それは同情だったのかもしれない。
タイキはそっと、ルイの唇に、自分の唇を重ねた。
コメント
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読了しました。冒頭の鎖の音と「また、これか」というルイの諦念の混じった口調が、症状の重さを一気に伝えてきますね。「夢蝕症」という病の設定も面白く、治療法が「肉体的接触」というのがロマンスのきっかけとして良い仕掛けだなと。タイキが「可哀想だ」と思いながらキスをするところ、同情から始まる関係の行方が気になります。マッチング率99%という数字も、何か意味がありそうで続きが楽しみです。