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「…またか…」
最近は人と話している途中でも、突然頭痛が襲い悪夢の中へ引きずり込まれるようになっていた。
赤い部屋。
長い鎖に繋がれ、身動きが取れない。
「…あぁ…ッ」
苛立ちで叫ぶ。体を捩ると、さらに鎖が強く絡みついてくるような気がした。
『…ルイ?』
「え?」
初めて。
初めて悪夢の中で他人の声を聞いた。
ルイはパッと顔を上げる。
そこにぼんやりと人影が映し出されている。
つぎの瞬間、眩い光があたり一面を照らしてルイは眩しさに目を瞑った。
そっと目を開けると、すぐ近くに今日会ったばかりの青年の顔があった。
唇に、温かい感触。
タイキはそっと唇を離すと、ルイが起きていることに驚いた。
『あ…っ!ごめん、辛そうだったから…っ』
離れていく手を、ルイはガシっと掴んだ。
「…君が俺を助けてくれたの?」
『え?…うん、そう、なのかな…』
「悪夢の中で、君の声がした」
『…そっか』
ルイはタイキの手を掴んだまま起き上がった。
「…頭が、痛くない…」
『え、本当?良かった。治療成功だね』
嬉しそうに笑うタイキの顔を見て、ルイは小さく笑った。
「ありがとう。…うわぁーなんか、こんなに体が軽いの、久しぶりだ」
ルイは大きく蹴伸びをした。
「お礼になんか奢らせてよ」
『いや、報酬はもらってるから大丈夫』
「そうなの?…じゃあ、遊びに行かない?」
『え?なんだよ突然』
「なんか俺、今とっても遊びたい気分!」
『あー、まぁいいけど』
「やった!」
先ほどまでの暗い印象が嘘のように、ルイははしゃいでいた。
(本当は、こういう明るいやつなんだな)
タイキはそんなルイを見て優しく笑った。
まるで前からの友人のように、2人はショッピングをしたり、カフェに行ったり、カラオケに行ったりして1日を楽しんだ。
中でも共通の音楽好きであることに、2人は大いに盛り上がった。
夕暮れ時。2人はルイのマンションへと帰宅した。
「あぁー楽しかったぁ。俺、こんなスッキリした感覚久しぶりだ」
『ルイはずっと苦しんできたんだね』
「タイキのおかげだよ。ありがとな」
『何もしてないけど。ただ遊んでただけ』
「…また、明日も来てくれない?」
『あー、うん。っていうか、これ。』
タイキはルイにモニターがついた時計のようなものを差し出した。
『これを常に付けといて。防水だから、お風呂の中でも大丈夫。』
「…これは…?」
『ルイの心拍数を測ってくれるんだ。夢蝕病に犯されている時は異常な数字になるらしい。俺も常に同じの付けてるから、ルイが苦しんでる時は、俺に通知がくるようになってる』
「…わかった」
ルイは腕にその機械を取り付けた。
それからルイはタイキに合鍵を渡して、いつでも部屋に入れるようにとマンションの暗証番号も教えた。
『でも、そんなに信用して大丈夫なの?』
あまりにもすぐ得られた信頼に、タイキは逆に疑問に思った。
「うん。…なんか、タイキのことは信用できる気がする」
まっすぐな目。話し方からわかる誠実さ。
それにかわいい仕草。
ルイはタイキの事をとても気に入っていた。
「タイキが俺のヒーラーでよかった」
『…へへっ。なんか照れるなぁ』
照れるタイキの顔が可愛くて、ルイは無意識にその顔に触れていた。
『ん…?』
「いや…また明日な」
『うん。また来るよ』
その夜。
ルイはベッドに横になった。
いつもなら、最悪の気分で眠りにつくのに、今日はさほど恐怖を感じていなかった。
体がいつもより軽く感じるからだろうか。
それに腕につけた機械がルイに安心感を与えた。
何かあれば、タイキが駆けつけてくれる。
ルイはゆっくり目を閉じた。
「って、またかよ…」
るいはまた悪夢の中にいた。
赤い部屋。ベッドの上に寝た状態で、両手両足は鎖に繋がれている。
心臓の音が大きくなる。
ドク
ドク
ドク
天井の上に黒い影。それはゆっくりと迫ってくる。
「…来るな…っ」
それはルイの体に入ってくる。
「ああっ!うあぁー!」
現実世界。
『ルイ!ルイ!』
タイキはルイの体を揺すってみたが起きる気配はない。
ルイは苦しそうに荒い息を吐き、うーと唸っていた。
タイキは自分の家に帰って寝ていたが、腕の機械が異常数値のアラームを鳴らした為、急いで駆けつけていた。
タイキはルイの手を握った。
『ルイ…聞こえる?』
ルイの体がぴくりと動いた。だが目覚める気配はない。
タイキはそっと寝ているルイの顔を抱きしめた。まだ変化は起きていない。
接触が足りないのか。
タイキはごくりと唾を飲み込むと、ゆっくりと顔を近づけていった。
「…」
『…効いてるのかな』
目覚めはしないものの、だんだんと呼吸が戻って、表情も和らいできたように見える。
タイキは手を握り続けた。
ルイはだんだんと安心したような表情に変わり、少しずつすこやかな寝息をたて始めた。
タイキはルイの手を握ったまま、胸を撫で下ろした。
安心すると、だんだん襲ってくる睡魔に耐えきれず、タイキはそのまま眠ってしまった。
カーテンの隙間から木漏れ日が差し込んで、ルイは目を開けた。
快適な睡眠は久しぶりだった。
ふと見ると、ベッドの横にはタイキが自分の手を握ったまま眠っていた。
(…ずっとそばにいてくれたのか)
人が動く気配にタイキも目を覚ました。
『…おはよ、ルイ。大丈夫?』
「うん。すごくいい気分だ。ありがとう」
『良かった』
「そんなとこで寝させちゃってごめん」
『気にすんな。』
タイキは優しく笑った。
ルイは繋いだままのタイキの手をグッと引っ張った。
『!』
タイキはルイに覆い被さるような格好になり、ルイは優しくタイキの腰を抱きしめた。
「…これ、すごくいい気持ちなんだけど…」
タイキの手を自分の顔に持ってくると、スリスリと頬を擦った。
「俺が目覚めたのってタイキがこうしてくれてたから?」
タイキは昨夜、ルイにキスしたことを思い出して、顔を赤らめた。ルイには内緒にしておくことにした。
『…そ、そうだと思う』
「へぇ…じゃあさ…」
「これ以上のことしたら、どれだけ気持ちいいの?」
コメント
2件
うわあああ第2話も最高すぎる!!😭💕💕 タイキのキスで悪夢から救う設定、めちゃくちゃエモいし、ルイの「これ以上のことしたらどれだけ気持ちいいの?」って台詞に完全に持ってかれた……!!(ノ)´ω`(ヾ) 照れるタイキかわいすぎるし、2人の距離感が一気に縮まる感じがたまらんよ〜!! るぃ狂さん、この胸キュン展開は反則です!!次回も楽しみにしてるね⋆♡