手を伸ばしても空を掴むだけだった
何を掴みたいの?って聞かれても答えられない。でも、何かを掴みたい。一体僕は何を待ち望んでいるのだろう。
でも、その答えは何となく分かっている。
僕には幼稚園の時仲良かった、幼なじみがいた。綺麗な黒髪のボブが良く似合う好奇心旺盛な女の子。内気でいじめられっこだった僕を光の当たる場所へ連れて行ってくれるような子だった。そんな彼女の事が僕は大好きだった。
こんな僕にも優しくしてくれる彼女は、僕の憧れだった。バカで運動音痴だったけど。
彼女は夜が大好きだった。いや、夜というよりも「星」が好きだった。僕からしたらただの光ってるやつっていうだけ。でも、彼女からしたら夜空に浮かぶ未知なものだったらしい。いつか星になりたい、とまで言っていた。僕はそれをいつも笑いながら聞いていた。
「彼女が死ぬまでは」
笑えない事態になった。彼女は母親から虐待を受けていたらしい。そんなこと僕は知らない。聞いていない。なんで、、、なんで言ってくれなかったの?僕が助けになるのに、、、!
彼女は分かっていたのだろう。その頃幼稚園児だった僕が出来ることなど何も無いってことを。心配かけるだけだってことを。僕は最後の最後まで彼女に守られていた。でも、彼女を守る人は誰一人としてなかった。
僕はただ1人で泣いている彼女の夢をたびたび見る。 だから僕は決心した。虐待されている子供たちを救おうと。それが彼女のためにできる唯一の事だと思っている。
彼女が亡くなって20年後、念願の児童相談所の職員となった。毎日忙しい日々を送っている。 それから彼女の夢はもう一度も見ていない。彼女と会う方法は夢の中しか無かったのに、、、。
もう二度と会えないのかもしれないと思った。でも、彼女は星になった。自分を見守ってくれている気がする。
気がするだけかもしれないけど
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