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あれ? シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)がいないな。

俺のそばで寝息を立てていたはずのシオリがいない。いったいどこに行ってしまったのだろう。

散歩をしに行ったのかな? うーん、でも今までそんなこと……。

その時、俺はシオリが固有武装を欲しがっていたことを思い出した。

うーん、固有武装か……。別にそんなものなくてもいいと思うのだが。

というか、あれって暴走する可能性があるし使い方を誤れば世界の一つや二つ簡単に消し飛ばせるんだよなー。

俺はそんなことを考えながらシオリがいそうな場所を巡り始めた。

台所、洗面所、浴室、寝室、トイレ、居間、押し入れ、ミノリの作業部屋、玄関、その他諸々……。

うーん、いろいろ見て回ったけどどこにもいないな。やっぱり外にいるのかな?

俺が外に出ようとした時、どこからか壁を爪のようなもので引っ掻く音が聞こえてきた。

なんだ? この音。いったいどこから……。

俺は答えを導き出す前に走り出していた。なぜならシオリ以外、全員寝ていることを知っていたからだ。

えーっと、たしかマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)がいる部屋から聞こえてきたな。

俺がそーっと襖《ふすま》を開けると、そこには白くて大きな猫の手を装着したシオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)がいた。

ネコの着ぐるみの手だけ装着したような感じになっているシオリの足元にはマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)がスウスウと寝息を立てている。


「おい、シオリ。こんな時間にいったい何をしているんだ?」


シオリがゆっくりとこちらを見る。

シオリはいつも同じ表情だ。無表情ではないが、何を考えているのか未《いま》だに分からない時があるほど表情から思考を読み取りづらい。

だが、今のシオリは笑っている。楽しそうというより不気味で下品な笑みだ。


「あっ、ナオト。ねえねえ、見て見てー。これが私の固有武装だよー」


「そうか。それがお前の固有武装か。それで? お前はそれを使って何をしようとしているんだ?」


「何って、そりゃあ……。ナオトに自慢……」


「シオリ、お前には訊《き》いていない。俺はお前を操っているやつに訊《き》いているんだ」


シオリ(?)はニヤリと笑う。


「な、何のこと? 私、そんな人知らないよー」


「とぼけるな。シオリは俺のことをナオ兄と呼ぶ。それに今のお前からは邪気しか感じない。さぁ、とっとと本性を現せ!」


「ちっ、もうバレちまったのか。まあ、いい。こいつの体さえあれば好き勝手できるからなー」


「お前は他人の……いや、女の子の体をなんとも思っていないんだな」


「使えるものは何でも使う。それが俺だ。さぁ、俺と戦え!」


「断る。それより早くシオリに体を返してやってくれないか? 操られているとはいえ、家族を傷つけたくないんだ」


「甘い……甘すぎるぞ! さっさと俺と戦え!!」


シオリの固有武装がシオリの体を操っているのは分かった。

ということは……。


「お前は前しか見ていないんだな」


「はぁ? お前、何を言って」


俺はシオリの体の一部に触れた後、シオリ(?)の首を掴《つか》んだ。

俺はシオリ(?)の足が届かないところまで持ち上げる。やつは俺の手をどうにかして離そうとしているがそううまくはいかない。


「く、くそ! 体に力が入らねえ! なぜだ!」


「昔、俺のお袋……母親によくやられてたんだよ。へそ曲げ」


「は、はぁ!? なんだ? それは!!」


「詳細はよく分からないが、へそは人が力を入れる時にスイッチというか起点というかトリガーみたいな役割をしているから、そこに特殊な刺激を与えると今のお前みたいな状態になるんだとよ」


「な、なんだと!? そんな技、聞いたことないぞ!」


「だろうな。俺だって習得するまでは信じてなかったんだから。じゃあな、暴走固有武装。また会う機会があったら真面目に戦ってやるよ」


「や、やめろ! 俺に触るな! やめろおおおおおおおおお!!」


俺がやつの額《ひたい》にデコピンをすると、やつは気絶した。それと同時に固有武装はゆっくりと消えていった。

俺はその場に座ると、シオリの頭を膝の上に乗せた。

それから数秒後、シオリは目を覚ました。


「ナオ、兄……。ごめんなさい、私……」


「謝るな。お前は悪くない。悪いのはお前の固有武装だ」


「今のセリフ、どこかで聞いたことあるような気がする」


「バレたか。まあ、その話は明日ゆっくりしてやるよ。だから、今日はもう休め」


「ううん、まだ休むわけにはいかない。ナオ兄、お願い。私の固有武装に名前を付けて。あっ、マナミちゃんと一緒に使いたいから私とマナミちゃん、どっちが使っても違和感ないような名前にしてね」


一緒に? 半分こするのかな?


「分かった。えーっと、そうだなー」


猫の肉球は柔らかい。猫の手は爪を収納できる。

つまり、猫の手には人の手にはないギミックや魅力がある。


「固有武装『|魅力溢れる猫の手《マジキャルハンド》』」


「マジキャルハンド?」


「ああ、マジカルには魔法とか魔術の他に魅惑的なって意味がある。で、キャット……あー、キャットは猫って意味だ。それでな、猫の手には人の手にはない魅力がたくさん詰まってるだよ。あっ、ハンドは手な。つまり、マジカル+キャット+ハンドでマジキャルハンドだ!」


「……かわいい名前だね。ありがとう、ナオ兄。ナオ兄はやっぱりすごい、ね」


シオリはそう言うとスウスウと寝息を立て始めた。

はぁ……もう固有武装関連の事件には関わりたくないなー。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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