テラーノベル
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「今日も、現実はだるい。」
放課後の教室、17歳の高木あかりは窓際の席でため息をついた。明るい性格でクラスでも人気者。でも、それは“外向けの自分”で、本当のあかりは――どこか違う場所に生きてる。
「帰ったら、すぐにログインしよっと。」
彼女の楽しみは、夜の“もうひとつの世界”。
VRゴーグルをかぶって入るネット上の仮想世界《Re:Layer(リレイヤー)》では、あかりは“アカネ”という名の冒険者だった。現実じゃ言えないことも、ネットなら素直になれるし、誰かの助けにもなれる。現実よりずっと、自分らしくいられる場所。
家に帰ると制服のままゴーグルを装着し、ベッドに倒れ込む。
「ログイン、アカネ。」
光が視界を満たし、世界が反転する――
目を開けると、そこはネオンが輝く近未来都市。空には浮かぶ島々、道路にはホバーバイクが走り、空気はほんのり甘い。ここが、あかりの“もうひとつの現実”。
「よっ!アカネ、今日もいいログインだね!」
声をかけてきたのは、相棒のAI猫・ミウ。ネット世界に常に一緒にいる相棒で、ツッコミ役でもある。
「今日は何する?クエスト?それともチャットルーム?」
「んー、今日はちょっと、散歩したい気分。」
アカネはミウを連れて都市の片隅へ歩き出す。夜の《Re:Layer》は静かで美しい。現実の雑音なんてここにはない。けど――
「最近、こっちの世界、ちょっと変じゃない?」
突然、ミウが立ち止まり、耳をぴくりと動かす。
「アカネ、ログ情報に変なノイズがあるよ。誰かが、リアルから無理やり侵入してきてる感じ。」
「……え?」
その瞬間、目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
ネット世界に、本来いるはずのない“リアル”が混ざりはじめていた――。
コメント
1件
えなんか天才だね?