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坂田銀にゃん
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哀雷🥀
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# 第4章:名探偵との遭遇と、怒涛のバディ連携(後編)
「おい、そこの車ァ! 動くんじゃねぇぞ!」
松田の鋭い怒号が路地に響き渡った。
異変に気付いた黒いセダンの運転手が、慌ててギアをバックに入れ、急発進で逃走を図る。急加速する鉄の塊が、松田を目掛けて猛然とバックしてきた。
「松田ッ!!」
「舐めんじゃねぇ!!」
松田は病み上がりの肉体が上げる悲鳴を無視し、全速力で横へ跳んだ。地面を鋭く一回転して衝撃を逃がすと、すぐさま美和子が動く。
赤いRX-7を運転しているわけではない。彼女自身の肉体が、すでに限界以上のスピードでセダンの退路を断つように回り込んでいた。
「止まりなさい!!」
美和子は迷うことなくセダンのフロントガラスへ向けて、その綺麗な脚から強烈な回し蹴りを叩き込んだ。バキィンッ!という凄まじい音と共にサイドミラーが吹き飛び、運転手が怯んだ一瞬の隙。
松田が助手席のドアへ突っ込み、ガラスを肘打ちで粉砕した。
「ガタガタ騒いでんじゃねぇよ、お縄の時間だわ!」
松田は車内へ上半身を突っ込むと、男の腕を強引に掴んでへし折り、運転席から引きずり下ろした。アスファルトに叩きつけられた男の背中に、美和子が膝を乗せて容赦なく体重をかける。
カチャリ、と冷たい手錠の音が響いた。
「公務執行妨害に建造物侵入の下見、まとめて署でじっくり聞かせてもらうわよ!」
美和子が息を切らせながら手錠を締め上げる。松田は車のボンネットに寄りかかり、「ハァー……クソ、やっぱりまだ響くな」と、包帯の残る脇腹を押さえて苦笑いした。
「ちょっと松田、大丈夫!? だから無茶するなって言ったのに!」
美和子が慌てて駆け寄り、松田の体を支える。その顔は怒りつつも、やはり必死に自分を心配してくれている。
男を駆けつけた他の隊員に引き渡した後、路地裏に残された二人の間に、ふと奇妙な静寂が訪れた。
現場の熱が引き、夕方の冷たい風が二人の頬を撫でる。美和子は俯いたまま、何かを躊躇うように自分の泥のついた手を握りしめていた。
「……ねぇ、松田」
「あ? なんだよ」
松田がポケットから煙草(中身は病院で没収されたままだが、癖でポケットを探ってしまう)を探す動作を止め、美和子を見た。
美和子は意を決したように顔を上げ、じっと松田のサングラスの奥の瞳を見つめた。
「あの観覧車の爆発の、本当に、本当にギリギリの瞬間……あんたが私に送ってきた、あのメールの最後の文面さ」
松田の心臓が、ドクンと嫌な跳ね方をした。
思い出した。死を覚悟したあの瞬間、自分を呼び戻すきっかけとなったあの女に、最期の言葉としてガラにもないメッセージを送信したのだ。
「『あんたの事わりと好きだったぜ』って……あれ、どういう意味?」
「………………」
松田陣平の思考が、完全に停止した。
天才的な頭脳を持ち、どんな複雑な爆弾の配線も数秒で脳内解体してみせる男が、文字通り「フリーズ」した。
あの世の階段から萩原に突き落とされた時も、五感が遮断された暗闇の中でも、ブラジルまで届く声で叫んだ時も、これほど狼狽したことはない。全身の血が、一気に顔へ駆け上がっていくのが分かった。
「……あ、いや、あれは、その……」
いつもは不敵に笑う口元が、今は見たこともないほど情けなく引きつっている。サングラスをくいと上げて誤魔化そうとするが、指先が微かに震えていた。
「何よ、ゾンビのくせにそんなに固まって。……ちゃんと、生きてる人間の口から説明しなさいよね」
美和子は少しだけ顔を赤らめながら、しかし逃がさないと言わんばかりの強い目で松田を一歩追いつめた。
奇跡の生還を果たした松田陣平。だが、彼にとっての本当の修羅場は、黒ずくめの組織ではなく、目の前の新米バディの恋心だったのかもしれない。
コメント
1件
わあ、第9話お疲れ様です!今回もめちゃくちゃ熱かったですね〜🔥 松田の「あんたの事わりと好きだったぜ」がついにバレて、あのクールな松田がフリーズするシーン、思わずニヤニヤしちゃいました(笑) 死を覚悟した時の言葉が、ちゃんと生きてる今の自分に返ってくるって、すごく切なくて愛おしいです。 美和子の「ゾンビのくせに」ってツッコミも、彼女らしさ全開で好きです。2人のバディ感が熱くて、続きが気になります!