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〖アイビー〗
# 1
〔 成亜視点 〕
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①
名前:成亜 / ナルア
年齢:22歳
性別:男性
口調:関西弁
セリフ:「」
②
名前:青空 / ソラ
年齢:20歳
性別:男性
口調:標準語
セリフ:『』
③
名前:奏 / カナデ
年齢:20歳
性別:男性
口調:標準語
セリフ:〈〉
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ちょっと前に撮った、青空くんの映像。
成亜だけが知ってる、家での顔。
目ぇ細めて笑うとこ、ずるいやろ。
「……ほんま、かわええ」
再生して、止めて、また再生してまう。
指先が画面の上で止まったまま、喉の奥が熱くなる。
『なるあ〜』
『いつメンで飲み行かない?』
青空くんのアイコンが、ぱっと上に表示される。
その瞬間、頬が勝手に緩む。
丁寧に、でも急いで返事を打つ。
明後日はバレンタイン。
明日は、成亜のために青空くんがチョコ作ってくれる日や。
去年みたいに『なるあに一番最初に渡す!』って笑うんやろ。
…そう思うと、自然と指が震える。
気づいたらまた開いてる画面。
青空くんが上着を選んでる。
……白のパーカーか。
似たの、あったよな。
青空くんに気づいてほしくて、
普段せーへんようなヘアセットにしてみてん。
鏡の前で三回もやり直した。
心臓が早鐘みたいに打ちながら、集合の場所へ足早で向かう。
『ぁ、なるあ〜!』
ぱちっと目が合う。
青空くんが、無意識に手を伸ばしてきて、指が絡まる。
「……は?」
声が、ほんの少し震える。
息が詰まる。
離されたくない。
……奏もいるのに。
でも、手を離せへん。
奏の頭に触れた手を、成亜はずっと見てた。
……くそ。
〈てかお前ら手ぇ繋いで同じ服きてるじゃん〉
〈付き合ってんの?笑〉
『そんなわけっ!』
『変なこと言わないでよ〜』
離された手に、爪が食い込む。
…奏、近いねん。
青空くん、
そんな顔、成亜にはあんま見せへんやん。
手が、やけに軽い。
……あかん。
こんなんでざわつく自分、だいぶ面倒くさいやろ。
わかってる。
わかっとるけど。
青空くんが誰かと笑うん、
成亜、あんま好きちゃうねん。
好きやもん。
「……それがなるや」
声にならへん声で、呟く。
店の暖簾をくぐった瞬間、
油と出汁が混ざった匂いが鼻をくすぐる。
3人だけやから、カウンター。
青空くんが壁側の席に座る。
『かなで、ここ座りなよ』
奏が青空くんの隣、真ん中の席に滑り込む。
成亜の居場所は、端っこだけ。
…端っこが、一番よく見えるけどな。
成亜は奏の横に腰を下ろした。
青空くんの視線は一度も、成亜に向かへん。
奏の向こう側から、『何にする?』って声だけ。
奏が笑う。
青空くんも笑う。
同い年やから、か。
成亜には入れへん間があった。
成亜の顔は、誰も見てへん。
グラスが置かれて、乾いた音が小さく重なる。
ガラス越しに自分の髪が映った。
…ちゃんと、セットしてきたんやけどな。
わざとらしく前髪を直して、気になりもしないメニューを目で追う。
笑い声が上がる。
〈そーいえば、そらさ〜、この前の彼女どうなった?〉
『あー、や、別に…』
青空くんは、わざとらしく濁して、目の置き場探しとる。
〈なーんだよそれっ!〉
〈振られちゃったんじゃないんすか〜!!笑〉
『るっせ笑』
『僕が振ったんだよ!』
『重すぎたんだよね〜笑』
びくっと体が跳ねる。
…青空くん、重いん好きやないんや。
成亜はまた、大丈夫って顔で笑った。
明日は、成亜のために作る日なんやろ。
去年みたいに笑ってくれるはずや。
笑い声が遠くなる。
手のひらの感触だけ、まだ消えへん。
成亜だけ、近いのに遠くに居る感じがする。
小さく息を吐いて、喉の奥で引っかかる言葉を、
誰にも聞こえへん声でつぶやく。
「……そらくんは、なるの一番でええ」
離されたら、終わりや。