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(岩本視点)
あの後、自分の欲を抑えるためにランニングをしたおかげで、だいぶ落ち着いてきた。
あとは職場に行くだけだから、ふっかの顔は何とか見ずに今日はやり過ごせそうだな。
…これ以上一緒にいると、本当にやばいかもしれない……
絶対、ふっかのこと傷つけないようにしないと…
ましてや、こんな俺の欲で傷つけるなんて絶対だめだ。
ため息を吐いて、玄関のドアを開けようとすると…
「岩本くん、おはよう!朝から早いね。」
「照!おっはー!」
ラウと佐久間が出てきた。
「これから仕事?」
ラウの格好を見ると、多分仕事に行くんだろうなって分かる。
「俺がラウのこと責任もって送ってくんぜ!」
やっぱり、佐久間が送ってくのか。
サングラス付けてるから、なんとなくそうだろうと思ったけど。
「気をつけてね。じゃ、ラウ頑張って。」
「うん。ありがと!岩本くんも頑張ってね!」
とりあえず、ラウにエールを送って、車に乗り込む2人を見送る。
そのまま、俺はふっかに会わずに家を出た。
どっか散歩に行ったのかな?
…そういや、ふっかって朝も風呂入るとか言ってなかったっけ…?
『時間に余裕ある日は、朝からお風呂入ってるから!わら』
あー、そんなこと言ってたな…
今日は時間に余裕あるし入ってんだろ。
ま、よかった。
まさかふっかの顔を見なくて安心する日が来るなんて思ってなかった。
『…ふっ、ふーん……』
『…くぅん……ん……ぁっ……』
「……っ!!」
まずい、昨日の記憶が…!
いや、あれに関しては俺じゃなくてもこうなってる。
ふっかは、無意識な時がいちばんやばい。
何気なく見せる表情、仕草…
それに、”色気”を感じてる。
それも、なんだろう…男の色気って言うのもあるっちゃあるんだけど…
どっちかって言うと……
“女性の色気”に近しいものを、感じてる……
別に、ふっかのことを女性として見てる訳では無いんだけど…
がっつり男性とも見れないんだよな…
例え話になるけど、
実際、俺はふっかのことを全然抱けると思う。
この気持ちが実ったら、俺はふっかに対してそんな欲求も出てくると思う…いや、もう既にあるな。
なにが、こんな気持ちにさせるんだ?
俺は、もう普通じゃない。
そんなことは重々承知してる。
でも、それだけじゃないだろ?
俺がふっかに抱いてた感情は、それこそ独占欲とかそういう感情だけで……
だけで…?
本当にそうなのか?
『……ッッッ!!//////』
あの時の、ふっかの赤面が頭によぎる。
ふっかは、何を想像してたんだ…?
「まさか…ふっかも同じ……?」
(渡辺視点)
「……んん…」
いつものベッドの感触とちげー…
不自然に思って、目を開ける。
眩しいな…
窓から差し込む光に目を瞑る。
ここ、どこだ…?
俺の家じゃねぇよな…
3,266
はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
「……あ…」
そうだ、俺、涼太の家に来てるんだ。
だから、涼太の匂いがすんだ…
「りょぉたぁ…?」
周りを見渡しても、涼太がいない。
もう起きたんだろうけど、一応探してみる。
床に布団…
まさか、床で寝たのか?
全然、隣に来ればよかったのに…
下に行けば誰かしらいるだろうと思って、階段をおりる。
予想通り、リビングにいた。
「翔太、おはよう。」
ニュースを見てた阿部ちゃんが、俺に気づいて声をかけてくれる。
「…ん。おはよ。」
短く阿部ちゃんに返して、キッチンに向かう。
「翔太、舘さんはもうカフェに行ったよ?」
俺が涼太のことを探してるのを察したのか、阿部ちゃんが笑いながら言う。
「…別に、探してねぇから…」
なんか、それが恥ずかしくてぶっきらぼうに言う。
それの根拠を作るために、冷蔵庫をあさる。
なにか、朝飯でもあるかなって。
「……!」
色んなとこ見てたら、メッセージつきの皿がある。
『翔太用。もし起きたら、これ食べてね。』
涼太の字。
俺の朝飯、用意してくれてる。
なんか、めっちゃ豪華なサンドウィッチ。
それを食べて、部屋に戻る。
もっと、早く起きとけばよかったかな…
午後の仕事に向けて、準備始めるか。
今日は、ハンドクリームのCM撮影。
そういや最近……
『最近、空気が乾燥してるから気をつけてね。』
って、阿部ちゃん言ってたっけ?
…涼太に、プレゼント、してみてもいいかもな。
なんか言われても、朝飯のお礼ってことにできるし!
…ちょっと、頑張ってみるか。
少し、やる気出てきた。
(佐久間視点)
「たっだいまー!」
多分、みんな起きてるだろうと思って、思いっきり玄関のドアを開ける。
ま、起きてない奴がいてもこれで起きるだろ!
「佐久間、おかえり。」
「あっべちゃーん!」
さすがあべちゃん!
リビングでニュース見てるんだ。
あ、そうだ!
今がチャンスじゃない?
こっそり、こっそりあべちゃんの背後に近づく。
そ、し、て…
むぎゅー!!
あべちゃんに思いっきり抱きつく。
ふっふっふ…これならどうだい?
不意打ち、でしょ?
「……さくまぁ?今度はちょっと考えてきたね?」
あべちゃん、これも予想してたか…!?
隙が無さすぎるなぁ。
でも、俺の作戦は完璧だったはず!
めっちゃ自信あったのになぁ……
あべちゃんがニコニコしながら、俺のことを見つめてくる。
「…あ、あざとい警察!!!逮捕ーー!!!」
「うわっ!え、何?笑」
急にあべちゃんの両手首を掴んだ俺にびっくりするあべちゃん。
説明しよう!
あざとい警察とは、今のあべちゃんの上目遣いのように、俺の独断で”あざとい”と思う行動、発言が起こった時に出動する特別部隊なのだ!
出動したのは初めて。
つまり、あべちゃんが初犯なのだ!
(深澤視点)
どうしよう…
机の上に、いつも照が使ってるハンカチが置いてある。
「……」
忘れた…?
忘れ物だったら届けないとじゃない?
でも、照はもう職場に行っちゃったんじゃ?
と、とりあえず、ハンカチを手に取る。
「……」
チラチラと、周りを確認して…
ハンカチに顔を近づけてみる。
ひ…照の匂いする…!!
って!何感動してんだよ俺!!!
今のはアウトでしょ!?
変態かよ!!?
慌てて、照のハンカチを机の上に戻す。
でも…
「届けないと、だよね…」
照って、どこの消防士なの?
あれ?
俺、それ知らないぞ…?
いや、消防士なの知ってる。
でも、どこで働いてんの?
それ知んなきゃダメじゃん!!!
照は、昼休みに俺のスーパーに来るわけだから、そこの近くなのかな…
「行ってみるか。」
(岩本視点)
「…あれ…?」
カバンの中を確認して、ハンカチがないことに気づく。
忘れたのかな?
急いで部屋を出たからかな、多分机に置いてきちゃったのか。
「岩本ー、飯食おうぜー!」
「あぁ、うん。」
同僚に肩を組まれて、強制的に外に連れてかれる。
まぁ、最悪何とかなるか…
「最近、嫁がさぁ…」
「……」
いつも、同僚…橋本は俺に話しかけてくる。
割と面倒見がいいやつで、俺が1人なのを見るとすぐに来る。
まぁ、話してて楽しいと思うし、俺は嫌いじゃない。
こいつの話は、大抵嫁の話。
いわゆる惚気。
「で、その日は雨が降ってたからさ、早く風呂入れって言ったんだよ。この後すぐベッド行こうな?って。」
嫁思いの良い奴だな…って、ぼんやり考えながらご飯を口に運ぶ。
「したら、嫁がなんて言ったと思う?」
急な質問か…
なんだろ…
「気にかけてくれてありがとう?」
頭に浮かんだことをそのまま伝える。
まぁ、質問するくらいだからこんな在り来りな回答なわけなくて…
「それがな、”今日は、いいよ”って言ったんだよ!俺はそんな気なかったのにさ!ははは!!」
橋本が、大声で笑い出す。
その横で、俺は箸を止めていた。
なんか、知ってるぞ…?
まさに、昨日の俺とふっかじゃないか?
「その後、俺がそんなつもりじゃないって伝えたらさ、顔を真っ赤にしてさ!めーっちゃ可愛かっんだよ!お前にも見せてーよ、ほんとに!」
顔を真っ赤に…
『……ッッッ!!//////』
まただ。
またふっかの顔が…
あの時のふっかは、本当にそんなことを想像をしてて…
俺の、言い方が悪かったんだろう。
でも、相手は俺だぞ…?
橋本みたいな、夫婦の間でなら分かる。
でも、俺らみたいな関係で…
「岩本に彼女がいねーのが、俺の気になるとこだよなぁ。なぁ、誰か気になる可愛いこといねぇのかよ?」
考え込む俺の背中をバシバシ叩きながら、橋本がそんなことを言う。
今、俺の頭ん中はふっかでいっぱいだよ!!
「あ、岩本。こんなとこにいたのか。」
橋本の質問に複雑な感情を抱いてる俺に、先輩が声をかけてきた。
何事だろう?と、橋本と一緒に首を傾げる。
「客が来たぞ。岩本に用があるようだ。」
「…なんでお前も着いてくんだよ?」
なぜか、橋本も後ろを着いてくる。
「いや、お前あての客なんて気にならないわけないだろ?」
橋本の言う通りだ。
俺個人宛なんて今までなかった。
大抵、あの時のお礼が言いたくて…とかの感謝が多い。
だから、個人なんて全然ない。
一体、誰なんだ?
「…!照!!」
言われた場所に行ってみたら、そこに
ふっかがいた。
いや、なんでいるの?
俺、ふっかにどこで働いてるか伝えてないよね?
俺の頭には疑問しかない。
橋本も、知り合い?って疑問の視線を向けてくる。
ふっかはキョドキョドしながらこっちに近づいてくる。
そして、
「急にごめんね。あのさ、これ!」
ふっかは、俺にハンカチを渡してくる。
「…これ!」
「机の上に忘れてたよ。もっと早く届けたかったんだけどさ…」
ふっかが申し訳なさそうに笑う。
でも、それどころじゃない。
わざわざこれを届けに来たってこと?
どこの消防署かも知らないのに?
ふっかは車の免許持ってないし、歩ってきたってことだよね?
「あ、えっと、うちの岩本がお世話になってます!」
橋本に気づいたふっかは、橋本にも挨拶する。
「お、おう。こちらこそな。」
橋本は一瞬遅れて、すぐに挨拶を返す。
待って!
全然頭が追いつかないんだけど…??
「あ、えっと…じゃあ、俺は帰るね。仕事、頑張って…!」
最後まで、ふっかは落ち着きなくソワソワして帰ってった。
橋本に、ちょんちょんと肩をつつかれる。
「…友達、なのか?」
「……一応…」
俺は、そう言うしかできなかった。
(深澤視点)
や…やっちゃったああああ……!!!!!
恥ずかしくって、顔を隠す。
俺…何しちゃってんだろう?
恥ずかしすぎない?///
だって、わざわざハンカチを届けるために行くなんて…!
「…照、驚いてたな……」
喜んで、くれてたんかな…?
……そうだといいな。
「……大烏。」
ふと、視線に気づいて、大烏を呼ぶ。
俺以外には見えないようにして。
〖カア〗
しっかり隣にいる。
大丈夫。
「すみません。」
背後から聞こえた声に振り向く。
後ろには、女性が立ってた。
こいつが、翔太が接触した女か…?
絶対そうだ。
阿部ちゃんたちも、俺らに接触してるって言ってたしね。
俺に、接触しに来た…?
こんなに分かりやすく…?
違和感しかない。
大烏は…?
隣を見てみると、すごい警戒したように女を見てる。
こいつ、ヤバいやつだな。
「…なにか、用でしょうか?」
向こうにも怪しまれないように、俺も平然として答える。
「実は、道に迷ってしまって…」
女は、困ったふうにそんなことを言う。
嘘っぽいな。
それも、自然すぎる嘘。
俺と同じだ。
呼吸するように嘘をつく。
こいつ、只者じゃないな…
「この近くの、消防署を探しているのだけれど…」
「…!」
消防署、照に接触しようとしてる…!?
なんで、こいつは俺らに接触してくるんだ…!?
一体、何が目的で…?
「せっかくなら、一緒に…」
「…っ!」
急いで後ろに下がる。
危なかった。
“触れられる”とこだった。
「……お急ぎですか?」
雰囲気が変わった。
バレたか…?
女は、少し不機嫌そうに俺の顔を見てる。
「はい、急いでますし、消防署も知りません。」
さすがに、ここは退散しよう。
こいつは、相手にするのは危ない。
大烏も、そう思ってるよね。
あとで、みんなにも報告しよう。
嫌な予感がしてる。
あいつが、既に接触を試みたのは、
阿部ちゃん、佐久間、ラウ、めめ、こーじ。
そんで、俺と照。
まだ、接触してないのは舘さん。
唯一接触できたのが、翔太。
それで、恋愛泥棒とか、颯馬くんの話に出てきたのも、多分あの女でいいな。
こいつは、何を目的で動いてるんだろう?
俺らに接触する目的は何?
願いを叶えるため?
強い力を欲してる?
それとも、こいつも誰かから頼まれて?
それか…
「…漆黒の、龍……?」
「ってことがあったんだけど…」
深澤は、家に帰ったあとに今日の出来事をメンバーに共有していた。
「うーん…ふっかにだけ声をかけたってのはたしかにおかしいね。」
阿部が、深澤の感じていた違和感に同意する。
「俺の時は、向こうからぶつかってきた。」
渡辺が呟く。
「俺の時も。」
目黒も同意。
「俺らの時もそうだね。」
最後に阿部も同意。
やはり、深澤の時だけ声をかけたのはおかしいようだ。
「つまり、ふっかには声をかける必要があったってこと?」
佐久間が不思議そうに言う。
「…単純に、阿部ちゃんとめめが失敗したからちゃう?」
向井も怪訝そうに言う。
「ふっかさんさ、その時大烏もいたの?」
うーん…と頭を悩ませていたら、ラウールが確認のように深澤に問いかける。
「あ、うん。一応いたよ。」
深澤が、その質問に不思議そうに答える。
「…つまり、式神がいることを確認したかったってこと?」
岩本がラウールの質問の意図を探るように問いかける。
「うん。1つの可能性としてあげといてもいいんじゃないかなって。」
肯定するように、ラウールが頷く。
「だとしたら、ふっかが式神使いってことがバレたんじゃ…?」
宮舘が、心配そうに呟く。
「…でも、なんで…?」
深澤も、心配そうに瞳を揺らす。
「…その女さ、一応フードの男と繋がってる可能性もあげてたよね。」
目黒が、今までの情報を思い出しながら、そんなことを言う。
「まだ、俺のこと……」
深澤の中の不安はさらに膨らむ。
まだ、フードの男が諦めていないと考えると、深澤だけでなく他のメンバーも頭が痛くなる。
「あくまで、可能性だから。それに、ふっかになにかあっても、俺が守るから。」
不安になっている深澤の様子を見て、岩本がはっきりと言う。
「……っ!」
深澤は、目を見開いて驚く。
それと同時に、深澤の中に込み上げてくるものもあった。
(やばい…ちょっと、泣きそうかも…)
岩本の優しさと覚悟を受け止めて、深澤は、自分でもよく分からない感情が渦巻いていた。
「そうだね。照の言う通りだよ。」
阿部が、ゆっくり頷く。
「そのとーり!」
佐久間も明るく笑う。
「そうならない為に、こうやって一緒にいるんでしょ?」
宮舘も、優しく笑いかける。
「……うん…。」
泣きそうになる瞳を少し擦り、深澤は前を向く。
「…じゃあ、色んな可能性を考えながら作戦を考えようか。」
9人はカフェに移動して、作戦を練ることにした。
早速、阿部がこれまでの話をまとめながらホワイトボードに書き写していく。
「まずは、俺らが接触した女性についてだね。」
ホワイトボードを見ながら、阿部が情報の整理を始める。
「まだ、接触してないのは舘さんと、一応照だね。」
阿部が、岩本と宮舘に視線を向ける。
「これから、俺らにも接触する可能性があるね。」
岩本と宮舘も顔を合わせる。
「で、もしその女が式神使いが誰かを確認したいだけだったら、ふっかさんの方に行くだろうね。」
ラウールが、可能性としてあげていく。
「…それ以外の目的とかも考えとこうか。」
目黒が、真剣な表情でホワイトボードを見つめる。
「そやね。もしもの時に色んなこと備えとこうや。」
向井も頷く。
「じゃあ……」
阿部は、ペンを持ち直す。
それから、作戦会議は4時間以上続いた。
(渡辺視点)
全然、寝つけねーな……
明日も、仕事あんのにな。
さっきの作戦会議、色んな可能性とか考えてみて、俺も思ったことがある。
俺が、頑張って考えた仮説。
俺は、阿部ちゃんとかラウールみたいに頭は回んないから、さすがにあの場では発表できなかったけど…
もし、これがあってたら……
嫌な予感が、ずっと残ってる。
あの女の目的は、深澤じゃないんじゃねぇの?
フードの男と絡んでるんだったら、深澤にわざわざ確認する必要なんてねぇだろ。
それこそ女なんて利用せずに、フードの男がそのまんま深澤のことかっさらってけばいいだろ。
…それくらい、簡単なことだろ?
だから、女とフードの男はまた別だ。
たしかに、女に深澤が式神使いってことはバレた。
でも、女は確認程度だったんじゃね?
深澤は式神使い前提で、一応本当なのか確認しておこう程度ので…
たぶん、深澤に声をかけた理由はそれ。
実際、深澤にも接触しようとしてたんだ。
あの女の目的は、俺らに”接触”すること。
だから、深澤は接触されてないから大丈夫なはず……
ただ、俺は接触されてる。
女の能力は、なんなんだ…?
フードの男みたいに接触することで洗脳するみたいな感じなのか?
今、俺の身体はなんともない。
それとも、あの瞬間俺は何かを奪われた?
恋愛泥棒に、こーじが奪われたみたいに?
俺は、既に何かを失ってるのか?
『それに、情報漏洩もしてる。』
めめは、そんなこと言ってた。
漆黒の龍の、情報が流れてる……
女が、関係してる。
俺と接触する前から、その噂はあったみたいだ。
だから、女はあの戦いを見てた…?
「……っ!」
俺の中で、何かが繋がった気がした。
これだ!
これが目的なんだろ!?
「早く!早く伝えねぇと!!」
急いで伝えようとして、ベッドから降りようとした瞬間、
バチンッ
頭の中で、何かが弾けたような音がして、目の前が真っ白になった。
伝え、なきゃ…な、のに……
「…た!……!」
なにか、聞こえる…
「翔太!!」
「…っ!」
俺が目を開けたら、8人が心配そうに俺のことを見てた。
「大丈夫?どこか痛いとことかない?」
涼太が、特に心配そうに俺のことを見てる。
「うん…大丈夫……」
頭、いてーな…
そもそも、なんでこんなことになってんだ…?
「しょっぴー、急に倒れたんやで?」
こーじが瞳を揺らしながら、教えてくれる。
倒れた…?俺が?
「もしかして、ずっと体調悪かったの?」
阿部ちゃんも心配してくれる。
体調は、大丈夫だったはず…
なんだ…この感じ……
おかしい…
なにか、おかしい…!!
頭の中に、空白がある。
そんなわけない!!
俺は、俺はなにか考えてた!!
なのに、それなのに…!!!
「…思い、出せない……」
「…つまり、翔太は何かに気づいたってこと…?」
佐久間が、渡辺の話を聞いて呟く。
渡辺は、今ある違和感を全て話した。
本人は困惑していて、言葉も途切れ途切れになってしまったが、それでも必死に伝えた。
自分は、たしかに辿り着いていた、と。
「翔太が真相にたどり着いた瞬間、女の能力が発動したって考えるのが妥当かな。」
深澤が、声のトーンを落としつつ呟く。
「だとしたら、俺らに接触しようとしたのは、だれも真相に辿り着かないようにするため?」
目黒が、深澤の意見を踏まえて発言する。
「かなり、厄介だね…」
阿部が、表情を歪める。
「…違う…それだけじゃねぇんだ…!」
渡辺が立ち上がる。
「絶対それだけじゃないんだ!それ以外に!!」
「翔太、落ち着いて…!」
渡辺は、焦っていた。
メンバーの言っていることは正しい。
だが、それだけではないという感覚だけが残ってる。
それを、上手く言語化出来ないことが何とももどかしい。
(絶対、絶対なんかあったんだ!この空白に、あいつの本当の目的が!!なんで、なんで思い出せねぇんだよ!!)
渡辺は、また考え始める。
1度、真相に辿り着いたんだ。
頑張れば、また辿り着けるはずだ。
そう信じて、考え始める。
(また、気絶するかもしんねぇ。なら、少しでも気絶する前に伝えればいい。そしたら、こいつらが覚えてる。)
渡辺は、自分の身を削ってでもこの情報をメンバーに伝えないといけないと感じていた。
「翔太?なに、してるの?」
宮舘が、隣の渡辺の雰囲気が変わったことに気づく。
渡辺は、今から何かをしようとしてる。
まだ、他のメンバーは気づいてない。
「……」
渡辺は、もうメンバーの声も聞こえていないようで、瞼を開けようとしない。
静かに、そこに座ってる。
その様子に、宮舘は異様な空気を感じる。
きっと、また思い出そうとしてるのだ。
それも、無理やり。
宮舘は、迷った。
このまま思考を中断させるべきか。
それとも、まずは周りに伝える?
(…先に、先にみんなに伝えよう。)
宮舘は、後者を選択し、
「みんな、翔太が…!」
他のメンバーに声をかけた瞬間。
自分の身体に重みが来る。
「…っ!」
隣に静かに座っていた渡辺が、宮舘の肩に寄りかかる。
そのまま、勢いに任せて頭を床に打ち付けそうになるのを、宮舘が何とか支える。
「翔太?翔太!!」
「どうしたの!?」
「しょっぴー!?返事して!!」
渡辺が返事をすることはなく、静かに”眠っていた”。
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