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進級し、私は三年生になった。一年間共に過ごすクラスメイトを見た時、私は誰も知らないことに気がついた。もっと詳しく言うならば、知り合いが数年で知らない人になっていた、と言うべきだろう。
私が中一の時にずっと一緒にいた子は、沢山の友達に恵まれていた。たくさん笑っていた。去年一緒だった子は、私の知らない女の子と楽しく笑い合っていた。
気持ち悪かった。
私の、私が知っている子とは全く違う人に見えた。安心していた笑顔すらも不快に思えた。
幼稚園が一緒だった人も同じクラスだった。覚えているだろうと、少し期待していた私が馬鹿だった。向こうは私のことを覚えていなかった。私は安堵(あんど)した。なぜかって?否定された私の過去である、”自然がだいすき”という事を知っていたら困ると思ったからだ。困ると思う反面、その人が私を受け入れてくれるかもしれないと心の何処かでそう思い込んでいた。
一緒にいなかった、六年間の空白はどうやっても埋めることは出来ない。
どんな人なのか、
どんな人と友達になっていたのか、
どんな話をして、
どんな事で笑って、
何が好きだったのか、
私は何も知らない。知ることが出来ない。
過去は本人が語ってくれないと知ることが出来ない。
それは向こうにとっても、私にとっても変わらないだろう。”顔や名前は知っているが、それ以外は知らない人。”なのだから。今の私と同じだ。私は偽っている。私の周りにいる人たちは本当の私を知らない。
そして、同時に理解してしまった。
いや、本当は気がついていたのかもしれない。
目を向けなかっただけかもしれない。
ひとりぼっちだという事に。
偽っても
隠しても
結局、何も変わっていないことに。
偽りの仮面をつけた私に出来た友達なんて。
ただ、自分を理解する者が誰一人いなくなっただけということに。
私は気づいてしまった。
それから何週間か経った。修学旅行の何かを決める時間の時、私は自分のずっと溜めてきたストレスとずっと我慢していた気持ちの最後の一本の糸がプチンと切れた音が聞こえた。
周りの人の線がぼやけて、見えなくなって。気づいたら涙が出ていて、溢れ出ていて。止められなかった。止められないと悟った私は、慌てて教室を飛び出してトイレに向かった。涙が止まらなかった。いつもは泣き声を殺して啜り泣くのにどうしても我慢出来なくて、いつの間にか喘鳴していた。
苦しくて。
悲しくて。
でもどうして苦しいのか。
どうして悲しいのか。、、、
分からない。
『分からないよ、、』
それからすぐに先生が来たが、昼までの数時間、私は出てこなかった。出れなかった。こんな顔を見られたくなかった。唇をギュッと噛んでいたら血が出た。独特な鉄の、血の味がした。それを口から吐き出した。吐血したと思わせる為に。たくさん沢山吐いた。それから先生に
『く、くるしいよぉ…』
と掠れた声で助けを求めた。もちろん演技だ。それだけで先生は騙されてくれる。 どうしても今までの過去を話したくなかったから。 話しても事実を隠してまた無駄な嘘をつくだけだと。 分かりきっていたから。嘘を重ねるしかなかったんだ。
それから先生と医務室で給食を食べた。その日はそこまでしか覚えていない。早退したのか、それとも授業を受けに戻ったのか、私の記憶にはない。