「敦くん。掃除どう〜?」
「太宰さん…、終わったんですか?」
「まぁね。換気中だよ。」
「こんな広い家…凄いですよね。」
「体は小さいのにねぇ?」
「ははは…」
肯定する勇気など無いが、否定したでまた面倒臭いだろう。結果的にぎこちない笑顔で苦笑を漏らす。
「ワインセラーもあるはずだから、今夜は葡萄酒かもね」
「葡萄酒…太宰さんってお酒好きなんですか?」
「まぁ何方かというと好きだけれど、どうしたの?」
組合戦の時の犬や、常日頃からずっと言っている中也さんの話、嫌いだと言うものは分かりやすいが、好きな物の話はあまり聞かない、それこそ、自殺や入水、心中なんか位しか。これは故意的な物なのか、
「嫌いな物の話は良くするのに、好きな物の話あんまりしないじゃないですか。」
「あぁ…言われてみればそうかもね。」
「………ん?」
おかしな事に気付く。なぜ太宰さんはワインセラーの存在を知っているのか。ずっと声が聞こえていたが、ワインセラーなんて単語出てこなかった筈。気の所為ならそれで良いのだが、
「どうかしたの?」
「太宰さんなんでワインセラーなんてあるの知ってるんですか?」
「あれ、バレた?流石探偵社員だねぇ、」
「って事は…」
バレた。流石。バレたという事は探偵社に入ってからの事なのだろうし流石、という事は外れては無いようだ。
「本人も気づいてないから、秘密ね?」 「……何も聞いてません」
可哀想にも思うが光の無い瞳に逆らう気は起きなかった。俯いてから小さく呟く。
「ふふ、それでよし。今日の夜はお茶漬けが食べられる様お願いしといてあげるよ」
「口止め料ですか?」
お茶漬けで口止めされるとは、自分で言うのもなんだが単純に映っているのだろう。満足気に笑う太宰さんを見てると、口元に人差し指を当てて、携帯を取り出す。黙れという事だろう。大人しく話すのを辞めて掃除を再開する。
「そうともとれるね。……あ、中也?今どこ?…お茶漬けお願い。……あ、なら蟹。……ふふ、じゃあね。うん。」
電話越しに小さく中也さんの声が聞こえる。何を言っているか迄は聞こえないが、心底機嫌が良いので良い返事を貰ったのだろう。
「中也さんが戻る迄、掃除。手伝ってくれませんか」
「仕方ないねぇ、任せ給えよ」
「…こんなもんかぁ?芥川、明日の朝と夜。何が良い?」
ある程度の食料、日用品を買い揃えた所で山になっているカートを押す芥川の方へ振り返る。
「…朝は食べなくとも…」
「んなんじゃ成長しねェぞ?」
「………」
「なんか云えよ。…っくしゅ、」
「…大丈夫ですか」
一瞬、驚いた様な顔を見せるが、直ぐに澄まし顔に変わる。本当に表情変化の乏しい奴だ、嚔自体は風邪などではない、偶々だろうと話を流す事にした。
「嗚呼、大丈夫だよ。………太宰?」
「太宰さん?」
「電話だ、…ちょっと行ってくる。好きなモノ入れとけ」
「……はい、」
急な連絡に驚くが、少し離れた所で電話に出る。
「太宰、何の用…まだ店の中だけど…茶漬け?分かった、他なんかあるか?……考えといてやるよ。…またな。」
ほんの少し、どきどきと早くなる鼓動を知らない振りをして芥川の元へ戻る。後は茶漬けと、蟹缶でも購っていこうかと思いながら歩き始める。
「おかえり。中也。」
ドアの開く音が聞こえて一階に降りる。後ろから敦くんが遅れて降りてくる。
「嗚呼、ただいま」
後ろに回ると帽子と外套を取り上げる。その体制のまま見上げられる。
「太宰、掃除終わったか?」
「ふふ、完璧だよ。」
「ん、お疲れさん」
口角を上げるのを見ると安心する。髪を撫でると擽ったい、と嫌がる中也の頰は、薄ら桃色に染まっていた
「………」
「人虎、荷物を片付けるのを手伝え、」
「…あぁ、そうだな…」
帰って直ぐこれだ。流石に芥川も顔を引き攣らせていた。なんやかんや仲が良い…と言うより、それ以上の関係なのではないか、といつも喧嘩しながら周りに思わせる位には、二人は距離が近い。
「芥川。」
「なんだ、」
「あの二人って付き合ってんの?」
「さぁな。太宰さんは元とはいえ五大幹部、ほぼプライベートは不明だ」
急な問い掛けにしては冷静に答えられるので、慣れを感じる。確かに芥川は太宰さんの元部下であり中也さんの現部下。太宰さんは厳しくしていた様だが中也さんは面倒見が良い所もありかなり二人との関わりが多いと言えるだろう。
「あれは隠せてるに入るのか?あの距離感で?」
「的確な証拠は無い」
「お前そういうの疎そうだもんなぁ…」
「なんだと……否、そうか」
不服そうに見つめられたが、暫く、否、少しして自覚が追い付いたのか諦めて作業を進める。自身も話しながらだが手は止めない。色恋沙汰に疎そう、とは言ってもあの距離感なら流石に何があるだろうと問い詰める
「芥川ならそれっぽい話の一つや二つあるんじゃ無いか?」
「……さぁな、さっさと終わらせるぞ」
「晩御飯、終わったらまた聞くからな」
「……仕方無い」
「何を?」
「「⁈⁈」」
後ろから聞こえた声にばっ、と勢いよく振り返る。芥川も同じだ。声の主は予想通り太宰さん。荷物ももうじき片付け終わる、誤魔化して部屋に戻ろうと自分で決めると、芥川も同じ事を考えている様だった。
「何も無いですよ…?世間話ですよ。な?芥川?」
「…はい、」
「あそう。荷物はやっておくから、部屋片付けちゃって」
「「はい…」」
「あぁ、そうだ、敦くん」
「…なんですか?」
「————」
「……は、い。」
半ば追い出されるようにリビングを出る。途中で太宰さんが呼び止めたので立ち止まる。芥川は何も無い様に置いていかれた、口パクで何かを言っている。矢張、これ以上の模索は辞めようと決めた。弱々しく返事をすると走って部屋に戻る。太宰さんが言ったのは恐らく——
「近寄るな」
余韻に浸る中思いっきり予告初めます。…とその前に…実はまだ半日しか経ってないんです.終わる気がしません。ネタ切れですよ。
第三話!
新双黒、空気を読む!!常にはらはらしてる中也!!太宰さんの3分クッキング~即席麺~☆
コメント
9件
めっちゃ好きです!!
太宰の束ぉ縛ぅ敦君めっちゃ被害に遭ってるw3分クッキングって爆発しないかな、、、まぁなんにせよ尊い! シェアハウスっていいなぁ〜