テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「おい須藤、何居眠りしてんだ?」
という教師の怒号で目が覚めた。そうか。まだ学校だったのか。周りがくすくすと笑いながら自分のことをチラチラと見ていた。誰も、救いの手など差し伸べてくれない。皆、僕の様子を見て、楽しんでいる。
「すみません。」
恥ずかしさから顔が赤くなるのを感じた。 教科書を開いても、ノートを書こうとしても黒板を見ても、そこにある文字は、ただの黒模様にしか見えない。僕のノートは、いつだって暗い文字で埋め尽くされている。だからといって、気晴らしに窓の外を見ても、重たい雲が僕の気持ちを代弁するかのように、空から顔を覗かせている。そしてチャイムが鳴り、帰宅する時間になってしまった。
いつも通りの暗い気持ちで帰路に着く。毎日通りがかる公園には、いつも人がいない。少し前までは子どもたちがたくさん遊んでいたのだが、最近この辺りで起こった事件の影響でめっきり人が減ってしまっていた。ブランコが風に揺られて軋む音だけが、やけに響いていた。
このまま家に帰っても、地獄だ。母は病床に伏せ、2年前に他界した。そのストレス、ショックから僕に暴力を振るうようになった父が、家で待っている。酒がないから買ってこい。パチンコで負けてイライラしているから殴らせろ。この地獄ももはや、今では日常になってしまっている。僕の世界には絶望以外、もう何も残っていなかった。帰りたくない。このまま、消えてしまいたい。
「もういい加減してよ!」
鋭い叫び声と共に、物が砕け散る音、そして誰かの悲鳴が聞こえてきた。登下校の道沿いの家からだ。よく見ると玄関が開け放たれ、中は異様なまでに荒れている。何気なく、中を見てみると、そこには人が倒れているのが見えた。そこから、何かが出ている。
血だ。
血が、人から溢れてきている。初めて見る光景に、胸の奥がひどくざわつく。怖いのに、視線が離れない。見てはいけないとわかっているのに、目は勝手に奥へ奥へと吸い込まれていく。日常から切り離された光景に、心臓が不規則に跳ねた。ふと、視線を移すと、傍らに少女が立っていた。年は、僕と同じくらいだろうか。瞳孔を大きく開いて、立ち尽くしている。よく見るとその少女は、クラスメイトだった。ここ最近、あまり学校でみなかった。その虚ろな目をしてそこに立ち尽くしている少女の手には、1本の包丁が握られていた。本来、そこには付いていない、付いていては行けないはずの、人間の血がびっしりとこべり付いていた。
のり
32
61