コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ー既成事実はない……多分ー
糸師凛:
「何が『よく会いますね』だ。寝ぼけてんのか?」
「……離せって言ってんだよ。」
夢主:
「ん?夢……じゃないの?」
(もそもそと自分の手をを動かすと、
何か生暖かい感触が……)
夢主:
「……ん?なんか、あったかい……?」
(ハッと目を開けて、目の前にあるのは大怪獣様の素肌――)
夢主:
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
「なっ、なっ、なんで服着てないの!?私、何したのーーっ!?」
(がしっ)
大怪獣様は無言で夢主の口を押さえ、
冷たい目で睨む。
糸師凛:
「うるさい、黙れ。」
「何回同じこと言わせんだ、このカス……。」
「お前が俺の服に吐いたから、仕方なく脱いだんだろうが。」
「クソが……見捨てりゃよかった、こんな奴。」
夢主:
(震えながら)
「か、カス……クソ……っ……。」
「あっ……すみませんっっ!本当にごめんなさいっっ!!」
「昨日のこと……何にも覚えてなくて……っ。」
(夢主の顔がみるみる赤くなり、意を決して質問をする)
夢主:
「ところで……非常に聞きづらいんですけど……。」
「……何も、ないですよね?」
(大怪獣様は無言で夢主をじっと見た後、話題を変える)
糸師凛:
「おい、なんか服貸せ。」
夢主:
「えっ、あの……無視!?ちょっ、服……ですよね!?ちょっと待っててくださいっっ!」
(心の中で絶望する夢主)
夢主(心の声):
「あれ、待って。オタク喪女の部屋に男物の服なんてあるわけなくない?」
「いや、どうしよう……変な服しかない……。」
「かろうじてあるのは……あの売れ残りの、グロテスク怪獣T……。」
「これを、あの超絶イケメンに着せるの?……非常にまずくない?」
糸師凛:
「おい、固まってねぇで、早くしろ。」
(おずおずとTシャツを差し出す夢主)
夢主:
「あのぅ……少し個性的な品ですが、決してバカにしてるわけではなくてですね……。」
「至って真剣というか……なんというか……とりあえず、まだ殺さないでくださいっっ!」
糸師凛:
(無言でTシャツを受け取り、少し眉をひそめながら)
「これ……。」
(小声で)
「……前、欲しかったけど買えなかったやつだ。」
夢主:
「えっ?」
糸師凛:
「なんでもねぇ。さっさとそっち向いてろ。」
ーーーーー
(着替え後)
(夢主、凛に向き直り、真剣な顔で)
夢主:
「あのぅ……再びで非常に恐縮なんですが――。」
「昨晩私は、大怪……いや、あなた様に、一体何をしでかしてしまったのでしょうか!?」
「そして……私たち二人には、何かが起こってしまったのでしょうか!?」
(少し間を置いて小声で)
「あと、まだ殺されたくないので……名前教えてください……。」
(オタク特有の距離感が分からない感じで、ぐいっと前に詰める夢主)
糸師凛:
(少し後ずさりして)
「……近い。離れろ。」
「めんどくせぇ、質問が多いんだよ。」
(内心呆れつつ、軽く舌打ちしながら)
糸師凛(心の声):
「こいつ……俺が殺したくなるような呼び方してた?どんな呼び方してんだよ……。」
(凛が溜息をつきながら説明を始める)
糸師凛:
「テメェがいきなり俺にしがみついてきて……。」
「強制的に家まで送らせたんだろうが。」
「その途中で俺の服に吐きやがったから、着る物なくて帰れなくなっただけだ。」
(指をさして、夢主が吐いた服を示す)
夢主:
「……ぁぁぁ……。」
(夢主、両手で頭を抱える)
「走馬灯のように、昨夜の葬り去りたい記憶たちがよみがえってくるぅぅ……。」
糸師凛:
「……理解したか?」
夢主:
(床に頭を擦り付ける勢いで謝る)
「はいっ……誠に申し訳ございませんでしたぁぁっっ!!」
「ク、クリーニングに出してお返しいたします!!お詫びのしようもございませんっっ!」
(顔を上げて、凛を見つめながら)
「なにを、なにを差し出せばいいでしょうか……!?い、命ですか?ぐぅ…それは……新作!?新作が完成するまで待ってくださいぃぃっっ!!」
糸師凛:
(顔を引きつらせながら、一歩引いて)
「だから近いって!」
「お前、俺を何だと思ってんだよ……!」
(内心呆れつつ、ため息)
糸師凛(心の声):
「……こいつ、ウルセェ……。」
(夢主の部屋にアラームが響く)
糸師凛:
「……時間か。」
(時計を確認しながら、立ち上がる)
糸師凛:
「おい。俺は行く。」
「バカ女、服返せよ。」
夢主:
「あっ、あの……!」
「介抱してくれて、本当にありがとうございましたっ!」
(ちらりと振り返るが無言のまま部屋を出ていく)
(ドアが閉まる音が響き、静寂が戻る)
夢主(心の声):
「……結局、既成事実は……ない?」
「……多分。」
(夢主が力なくベッドに倒れ込む)
おまけ
ー糸師家某日ー
糸師冴:おい、凛なんだそのTシャツ…
(気持ち悪い怪獣がプリントされた、なんとも言えないTシャツを見つめる)
糸師凛:あ?うるせークソ兄貴やらねぇからな!
糸師冴:…(否定するのもめんどくさくなった)
人の好みは、それぞれだよな。
糸師冴は、優しいお兄ちゃんなのであった。