3月。冷たい風にも、どこか春の匂いが混じるようになってきたころ。
運命の日、合格発表がやってきた。
陽は朝から落ち着かなかった。
制服のポケットの中では、澪から届いたメッセージアプリの通知が震えている。
『どんな結果でも大丈夫。一緒に、前に進もうね』
その言葉に支えられ、陽は震える手で大学の合格発表ページを開く。
——スクロールして、受験番号を探す。
(あった——)
胸がいっぱいになった。
そのまま何度も、自分の番号を確認してしまう。
「……合格、した」
かすれた声が、部屋にぽつりと落ちた。
そのころ、澪もまた別の場所で、自分の番号を見つけ、涙を浮かべていた。
陽も澪も、迅も花も——
それぞれに、春への扉を、自分の手で開けたのだ。
——その日の夕方。
陽たちは約束していた図書館で集まった。
あの場所。3年生になった春に、みんなで勉強しようと決めた、あの小さな図書館。
「陽! 合格おめでとう!」
駆け寄ってきた澪が、弾けるような笑顔を見せる。
陽も笑った。
「澪も、おめでとう」
2人は自然に、名前で呼び合って、笑い合った。
花も迅も合流し、それぞれの合格を喜び合う。
「この図書館、いろいろ思い出あるよな」
迅がぽつりと呟いた。
「うん。……ここから始まったんだもんね」
花も、少し照れながらうなずく。
桜はまだ咲いていないけれど、確かに春はすぐそこに来ている。
そして、陽たちの物語も、新たなステージへと歩み出していく。
——未来は、きっと、もっと輝いている。
そう、心から信じられる一日だった。
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