好きだった。
風の噂で、AちゃんとBくんが付き合い始めたことを知った。
クラスの子がボヤいた。
放課後、美術室で絵を描いていた。あの子が言っていた言葉が頭にこべり着いて離れない。
風景画の青が少し滲んで見えた。
見えないふりをしていた。
聞こえないふりをしていた。
なんでいつもAちゃんばっかり。
私だってちゃんと好きだった。自分なりに頑張ったのに。私の想いは貴方に届かなかった。
あの人が笑うとつられて笑いそうになる。
あの人が落ち込むと、代わりに空に祈りたくなる。
でもあなたが隣に居て欲しいと思ったのは
私じゃなかった。
私は絵を描く手を止めた。
「なんでいつもAちゃんばっかり」
誰にも聞こえないはずなのに
今度は口に出して答えた。
ただ誰かに届いて欲しかった。