「何故、龍弥様は年齢を偽っておられるのですか?」
「わからん。それより、何故龍弥が光を殺したと思ったんだ?」
「それは…」
兄と生き別れた日、僕と兄…光は別行動で違う場所にいたんです。
今考えると兄は空襲や敵襲が来ることに勘づいていたのだと思います。
それで僕を山奥に連れて薬草を取りに行かせた。
「悠、俺はこの後剣の稽古があるから此処に居られないんだ。だから一人で取って来られる?」
「うん!できる!にいさん稽古がんばってね*\(^o^)/*」
「…うん。ありがとう。」
それで取り終わり、さあ家に戻ろうという時に空襲が始まってしまったんです。
僕はまだ山中で爆弾が堕ちてくる気配はありませんでした。
なので急いで山を下ったんです。家は山の麓だったから。
家に着いた時にはもう家は全壊でした。兄の姿はどこにもなくてパニックで半泣きで探した。
それで瓦礫の中でやって落ち合ったんです。
「…!ゆ、悠?何やってるんだ!早く逃げろ!」
「兄さんを置いてなんていけない!一緒に行くの!」
「悠…聞いて。鬼ごっこをしよう。」
「え…?」
「俺が鬼だ。10秒経ったら追いかける。だから逃げろ!」
「で、でも…」
「急げ!悠!生きるんだ!」
兄さんの気迫に押されて僕は逃げました。その時に兄さんの叫び声ともう一人の男の子がいたのを覚えています。その手にはナイフと銃があったからてっきり殺されたとばかり思っていた…
「…これが僕の記憶です。」
「なるほどなぁ。」
「あと、一ついいですか?」
「なんだ?」
気づいていたんだ。僕は。彼…龍弥もまた自分と同じことをしていることを。
「祐奈さん、貴方、龍弥様なんじゃないんですか?」
「…何故そう思うんだ?」
「喉仏。女性には存在しない。」
「…ぁあ。そんなんでバレんのかwお前の腕は確かなんだな、悠。」
「龍弥…」
「…誤解させてしまって悪かった。君のお兄さんとは稽古でお世話になって居たんだ。それで、心配で家まで見に行った。妹が居るとも聞いて居たから…」
そんな…僕は助けてもらった人を…殺そうとしていたのか?なんて…愚かで、馬鹿なんだ…
「ぁ…そ、の…申し訳ありませんでした。これまでそんな事を知らずに貴方に対してとんでもない事を…」
「いいんだ。嘘をついていたことに変わりはない。それに…生きていて良かった。」
なんで、なんでそんな屈託もなく笑えるんですか?僕は貴方を殺そうとしていたんですよ。
「…そんな顔するな。確かに君のやろうとしたことは、間違っていたと思う。けど、俺でも同じ事をした。君は“えらかった”。実行しない有希は必要だ。君は人の道を踏み外さなかった。」
「…ぼ、くはまだ軍に、いてもいいんですか…?僕はこの仕事に誇りを持っています。だから…」
続きを言おうとした瞬間、龍弥に抱きしめられた。
「…ぇ!…ぁ、の…」
「…少し休め。話はそのあとだ…」
何か飲まされ、 意識が落ちた。
「テメェ!悠に何飲ませた!」
悠に何かを飲まさせた。
そもそも、親しい訳ではない人間を普通抱きしめたりしないだろ。
「大丈夫。睡眠薬だ。悠が寝ていたところを見たことがあるか?泰羅!」
「ない…です…。」
「強制的でも寝ないと死ぬ。…しかし、泰羅、すまなかった。君には悠を押し付けたも同然だ。」
「俺は、悠のことを尊敬しています。だから、支えたい…いや、支える義務がある。」
「すごい覚悟だな。…君も寝ていないだろう。此処で休んでいけ。」
使用人を呼び、俺は一室に押し込まれた。
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