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「……ごめんなさい。本当に今月、もう一円も残ってないんです。……ごめん、本当に」
学校の昇降口。先輩は消え入りそうな声で、ぺこぺこと頭を下げながら中身の空っぽな財布を差し出してきた。
夕日に照らされたその姿は、相変わらず地味で、情けなくて――でも、私の胸をどうしようもなく締め付ける。
「あー……そうっすか。先輩、マジで計画性ないっすね…」
(……よっしゃあああ!! 神様仏様先輩様! これで「お店」じゃなくて「密室」に行く理由ができた! むしろ金が尽きてくれてありがとうっす!!)
私は内心のガッツポーズを隠し、わざと呆れたように溜息をついた。
「……じゃあ、外で遊ぶのも無理っすね。……先輩の家、行っていいっすか? 喉乾いたし、タダでお茶くらい飲ませてくださいよ」
「えっ、僕の家!? ……あ、あの、本当に狭いし、何もないし……」
「別に気にしてねーし。……ダメなんすか?」
「い、いや! ダメじゃないけど……。じゃあ、どうぞ……」
(やったあぁぁぁ! 先輩の城に潜入成功! マジで心臓止まる……今日こそ、絶対決めてやるんだから!)
六畳一間のアパート。男物の古着の匂いと、私の香水の匂いが混ざり合う。
先輩がキッチンで淹れてくれた麦茶のグラスが結露して、指先を冷やす。
「……お邪魔します。意外と片付いてるんすね、先輩の部屋」
「あ、ああ……。物が買えないだけなんだよ。……はい、これ、麦茶」
「……あざっす」
先輩は床に座り、膝を抱えて縮こまっている。
「……あ、あの、そろそろ暗くなってきたし。……駅まで、送りますよ?」
「……帰んの、早いっすね。……まだ、帰りたくないって言ったらどうします?」
「えっ、ええ……!? でも……」
私は立ち上がり、逃げようとする先輩のシャツの裾をぎゅっと掴んだ。
「……先輩、マジで鈍感すぎっす。……私が、金もないのに毎日つきまとってんの、なんでだと思ってんすか。……好きじゃなきゃ、こんなことしないっすよ」
「す、好き……!?僕を……?」
私は震える手で、自分のカーディガンのボタンを外していく。
(死ぬ。恥ずかしすぎて死ぬ。でも、先輩に触れてほしい……。私を、女の子として見て……!)
「……先輩、マジで鈍感すぎ。……スイーツより、甘いの……教えてあげますから」
私は強がって、彼を見上げた。
「……若菜さん。本当に、僕でいいんですね?」
先輩の声から、過剰な動揺がふっと消えた。その代わり、私の手首を掴む力が、これまでの弱気な態度からは想像できないほど強固になる。
「……あの、一つ確認なんですけど。僕、前に付き合っていた方が、その……かなり『激しいの』が好きな方で。……僕、そういうやり方しか、知らないんです。……それでも、いいですか?」
「……は? …全然いいっすよ。私、経験豊富だし。むしろ、普通なのじゃ物足りないくらいっすよ」
(嘘、嘘!! 経験なんてゼロだって!でも、ここでビビったら処女ってバレる……!)
「……そうですか。……よかった。若菜さんなら、受け入れてくれると思ってました」
先輩が、ふっと微笑む。その笑顔のまま、彼は部屋にあったパーカーの紐を手に取り、私の両手首を無造作に縛り上げた。
「……っ!? ……いいっすよ、別に」
(ひえっ……! 先輩、マジで何してんの!? 怖い、けど……なんか、すごくドキドキする……っ)
「あ……っ、ん、ぁ……っ」
先輩の指先が、服の隙間から滑り込む。
丁寧な敬語とは裏腹に、その触り方は容赦なく、私の敏感な場所を的確に、少し乱暴に刺激していく。
「……若菜さん。声、我慢しなくていいですよ。……元カノも、そうでしたから」
「……っ、ふ、あ……ぁ……っ」
(やばい、先輩の声が……頭に響いて、とろけそう……っ。意地悪なこと言ってるのに、なんでこんなに優しいの……!?)
「……若菜さんは、僕にめちゃくちゃにされるのが似合ってます。……もっと、めちゃくちゃにして欲しいって言ってください」
(……っ!! なに、それ……。そんなこと言われたら、私……!)
今まで「派手なギャル」として誰にも舐められないように張ってきた意地が、先輩の甘い言葉に溶かされていく。
(……ああ、そうか。私……先輩に、支配されたかったんだ。力ずくで、でも誰よりも大切に、めちゃくちゃにされたかったんだ……!)
「……ん、ぁ……っ! は、はい……っ。めちゃくちゃに、してください……っ。先輩、……せ、先輩の言うこと、なんでも聞くから……っ!」
「……いい子ですね、若菜さん。……じゃあ、挿れますよ…」
先輩がそう言って、私の奥深くまでを力強く貫いた。
(あぁっ……! 痛い、けど……すごい、熱い……。先輩、先輩……っ!)
「……あ、あの……!! 若菜さん、本当に、本当にすみませんでしたぁ!!」
行為が終わった瞬間。
先輩はベッドから飛び起き、床で畳に額を擦り付ける勢いで土下座していた。
「僕、何てことを……! 抵抗できないのをいいことに、あんな、変態的な真似を……! 慰謝料、今すぐバイト増やして払いますから!!」
一方、若菜は、乱れたシーツの中で、力なく投げ出された手足に残る熱を味わっていた。
(……あー……。先輩、マジで、うるさ……いっす……)
(……やば。腰、マジで抜けて動けねー……。先輩のあんな顔、あんな声……。もう、一生忘れられないっす……)
「……謝んないで、くださいよ……。私、いいって、言ったじゃないっすか……」
「でも! 若菜さん、泣いてましたよね!? あれは絶対に苦痛で……!」
「……あれは、その……良すぎて、出ちゃっただけっすよ……バカ」
私は震える腕で、近くに落ちていた先輩のシャツをたぐり寄せ、胸元に抱きしめた。
「……ねえ、先輩。……明日からも、放課後、付き合ってくださいね。……スイーツの後は、ここ……絶対っすよ」
「えっ、あ、あの……はい……。……よ、喜んで」