テラーノベル
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結果。
🌻は頭から足先までびっしょり。
レインコートの意味はほぼない。
侑もズボンの裾は重く、水を含んでいる。
「……あかん、これはあかんやつや」
「かえろっか!」
「せやな、全力で怒られるやつや」
家に着くころには、ちょうどママが帰ってきていた。
玄関のドアを開けた瞬間。
「ただい——」
言葉が止まる。
「……なに、その状態」
低く、静かな声。
🌻は一瞬だけ空気を読んで、
次の瞬間には元気よく言った。
「パパとみずたまり!!」
「🌻!!」
ママの視線が、ゆっくり侑に向く。
「説明、して」
「いや、その……ちょっと散歩だけのつもりやってん」
「“ちょっと”で、これはならない」
正論だった。
「🌻、先にお風呂」
「はーい!」
🌻はケロッとして脱衣所へ消えていく。
残された侑は、玄関で正座。
「……すんません」
「反省してる?」
「めちゃくちゃ」
ママはため息をつきながら、
タオルを侑の頭に投げた。
「風邪ひいたらどうするの」
「ほんまに……」
でも、その声は少しだけ柔らかい。
⸻ 脱衣所に入った瞬間、床に落ちる水滴の音がぽたぽたと響く。
「……ほら見て。床まで濡れてる」
ママの冷静な一言に、侑は肩をすくめた。
「いや、これは🌻が元気すぎただけで——」
「言い訳はあと」
🌻はというと、すでに服を脱ぎながら上機嫌。
「みて!ズボン、いろかわってる!」
「それはもう洗濯確定やな……」
湯気が立ちこめる浴室。
湯船にはもうお湯が張られている。
🌻を先に洗い場に座らせ、侑がシャワーを手に取る。
「つめたいからな、いくで」
「へいき!!」
シャワーをかけた瞬間、
「つめたーーーい!!」
叫びながらも、🌻は大笑い。
髪から水が流れ落ち、顔いっぱいに水しぶきが飛ぶ。
「ほら、目つぶれ」
「むり!!」
「無理ちゃう。ほら」
侑は片手で🌻の目をそっと覆い、もう片方でシャンプーを泡立てる。
ふわふわの泡が、🌻の頭を包んだ。
「パパ、あわぼうし!」
「せやろ。今日限定や」
その様子を、腕を組んで見ていたママが一言。
「……楽しそうだね」
「いや、怒ってるやろ…?」
「怒ってるよ。ちゃんと」
でも声は、さっきよりも少しだけ柔らかい。
🌻の頭を流し終え、体を洗っていると、
「パパもあらって!」
「……せやな」
侑も服を脱いで洗い場に座ると、
🌻はスポンジを持って張り切り出す。
「ここ!!」
「ちょ、強い強い!!」
ごしごしと遠慮なしに洗われ、侑は思わず笑ってしまう。
「もうちょっと優しくや」
「だいじょうぶ!!」
ママはため息をつきながら、タオルを用意する。
「はい、もういいよ。湯船入って」
「やったー!!」
🌻は勢いよく湯船に入り、
「……あったかい……」
ほっとしたように肩まで沈む。
侑も隣に入り、同じように息を吐いた。
「……生き返るわ」
「ほんと」
ママも最後に湯船の縁に腰を下ろし、二人を見下ろす。
「次、雨の日に散歩行くときは」
「はい」
「着替えとタオル、忘れない」
「……はい」
🌻は湯船の中でぱちゃぱちゃと手を動かしながら、眠そうに言った。
「また……みずたまり……」
「それはママと相談やな」
ママは小さく笑って、🌻の濡れた髪をそっと撫でた。
湯気の中、
怒られたはずなのに、
どこかあたたかい時間だけが、静かに流れていた。
夜。
お風呂も終わり、🌻はパジャマ姿で布団に潜り込む。
侑が絵本を読んでいると、🌻はうとうとしながら呟いた。
「……また、あめのひ……パパと……」
すぐに寝息に変わる。
その様子を見て、ママは小さく笑った。
「……楽しそうだったんだね」
「……はい」
「次は、ちゃんと着替え持って行って」
「はい……」
侑はそっと🌻の頭を撫でる。
「次はな、ママも一緒でな」
外では、雨がまだ静かに降り続いていた。
コメント
1件
ヤバい好き過ぎるこの会話