地雷さんさよなら
黒『昨日…人を…ころし…たんだ』
君はそう言っていた
梅雨時ずぶ濡れのまま
僕の部屋の前で泣いていた
夏が始まったばかりなのに
冬の寒さに耐える子供のように
酷く震えてた君
そんな話で始まる
あの夏の日の記憶だ
白「悠くん…誰を殺したの…?」
ダメ元で聞いてみた
すると
黒『隣の席の…』
彼はそこまでしか言わなかった
それでも僕は誰の事を指しているのか
すぐに分かった
悠くんの隣の席のいつも虐めているアイツ
黒『もう…いやだったんだ…』
黒『肩を突き飛ばしたら…打ち所が悪かったって……』
黒『もう…ここには…いられないし…』
黒『どっか…遠いとこで…死んでくる』
膝から崩れ落ち
泣きながら
そう放つ君に僕は言った
白「そっか…じゃあ、僕も連れてって…?」
財布を持って、ナイフを持って
携帯も、ゲームも、カバンに詰めて
いらないものは全部壊していこう
あの日の写真も、あの時の日記も
今となっちゃもう必要ないさ
人殺しと ダメ人間の
君と 僕の
旅だ
そして僕らは逃げ出した
この窮屈で狭いこの世界から
家族もクラスの奴らも
何もかも
全部捨てて君と2人で
遠い遠い
誰もいない
僕ら2人だけの場所で
2人だけで死のうよ
もう君を敵に回すようなこの世界に
価値なんかない
人殺しなんて
探したら探しただけ
そこら中に湧いてるじゃんか
君は何も悪くないよ
悠くんは何も悪くないよ
結局僕らは誰からも愛されなかったんだ
そんな嫌な共通点で
僕らはお互いを簡単に信じ合ってきた
君の手を握った時の微かな震えも既に無くなってて
誰にも縛られる事なく
2人だけで線路の上を歩いた
金を盗んで、2人で笑いながら逃げて
どこにでも行ける気がしたんだ
今更怖いものなんて
僕らにはなかった
額にかいた汗も
落ちたメガネも
今となっちゃもうどうだっていい
あぶれ者の小さな
逃避行の旅だ
いつか君と夢見た
優しくて
誰にでも好かれてる
主人公なら
汚くなった
ボロボロになった
僕らの事も
ちゃんと救って優しくしてくれるのかな?
そんな夢なら
もうとっくの昔に捨てた
だって現実を見ろよ
シアワセの
四文字なんて無かった
今までの人生で
散々、思い知ったじゃんか
僕は何も悪くないと
きっと誰もが思ってる
あてもなく彷徨い続ける蝉の群れに
水もなくなり、曇って揺れ出す視界に
迫り狂う鬼たちの怒号に
バカみたいに、はしゃぎ合い
ふと、気がついたとき
君はナイフをとった
黒『しょう…ありがとう…』
黒『お前が…着いてきて…くれたから…最後の最期まで…楽しかった』
黒『お前が…今まで…そば…いてくれたから…ここまで…これたよ』
黒『だから…もういいよ…?』
黒『死ぬのは…俺1人でいいよ…?』
そう言い残して
君は首を切った
まるで何かの映画のワンシーンみたいだった
白昼夢を見ている気分だった
気づけば僕は捕まってて
君がどこにも居なくって
君だけがどこにも見つからなくて
そして時は過ぎていった
ただ、暑いだけの日が過ぎてった
家族もクラスの奴らもいるのに
なぜか、どこを探しても君だけがいない
あの夏の日を思い出す
僕は
今も
今でも
歌ってる
君をずっと探しているんだ
君に言いたい事があるんだ
9月の終わりにくしゃみをして
6月の香りを繰り返し続ける
君の笑顔は、君の無邪気さは
僕の頭の中を飽和している
誰も何も悪くない
君は、悠くんは何も悪くないから
もういいよ 投げ出しちゃおうよ
そう言ってほしかったんでしょ?
悠くん
〈君がいた夏を思い出して〉
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