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「ごめんなさい、まだ見つからないんです。色々探したんですけど、どこにもいなくて……」
「大丈夫、必ず見つかる。大丈夫だから」
不思議だ。
理仁さんが言うと、絶対「大丈夫」だって思えた。何ともいえない安心感が湧き上がる。
「双葉、もう一度、もみじさんが行きそうなところを考えるんだ」
「……すみません。これ以上、どこを探せばいいのかわからなくて。私は結仁の母親なのに情けないです。本当にどうすれば……」
行けそうなところはだいたい探した。
もみじちゃん、本当にどこにいるの?
お願いだから早く結仁を返して……
「大丈夫だ、俺がいる。君が落ち着けるように手を握ってる。考えるんだ、きっと何か思い出せるはず」
私の手に理仁さんの手がそっと絡まる。その一瞬で、生きた心地がしなかった私の体に、温かい血がかよったような気がした。
そして、さらにギュッと力が込められると、理仁さんの結仁への愛情も、勢いよく流れ込んできた。
「ゆっくり深呼吸して」
「は、はい」
私は言われるままに呼吸を整えた。
落ち着かなければ、きっと何も思い出せない。
理仁さんがいてくれるんだから大丈夫。
大丈夫……
「……あっ」
手を握ってもらった途端、頭の片隅にあった1シーンが思い出された。
「何か思いついた?」
「少し前に結仁が行きたいって言ってた遊園地があるんです」
「それは、どこにある?」
「電車で2駅先の……小さな遊園地です」
「だったらそこに行ってみよう」
「は、はい、お願いします」
「大丈夫、必ず見つかる」
力強い言葉に勇気づけられる。
私達は、涼平先生のお父様の運転で、急いでそこに向かった。
結構昔からある幼児向けの遊園地。
メリーゴーランドが好きな結仁と、前に1度だけ行ったことがあった。
家で、「また行きたい」と言ったのを、もみじちゃんは確かに聞いていた。
「理仁様。まだ明かりがついています」
「ああ。まだ間に合う、双葉、行こう」
あと少しで閉園。
事情を話すと、それらしい2人を見かけたというスタッフがいて、私達はそれほど広くない園内を急いで探し始めた。
涼平先生のお父様は右回りに、私達は左回りに。
お願いここにいて――
祈るような気持ちで結仁を探す。
小さな我が子を、宝物を、この手で抱きしめたい。
そう願った時だった。
「ママ!」
えっ!
私は、その声に心を掴まれたようにサッと振り向いた。
「結仁!」
そこにいたのは紛れもなく我が子だった。
「ママ~」
私は、嬉しそうに駆け寄ってくる結仁を強く抱き締めた。
「良かった、良かった……」
堪えていた涙が、我慢できずに溢れ出し、心配でたまらなかった思いが、一気に安堵に変わった。
「結仁……本当に良かった」
小さな体で必死にしがみつく結仁を、私は心の底から愛おしく思った。