「やり返すわけじゃないけど、違う男に触れたら、響さんとの違いを感じるかもよ?」
真莉ちゃんが、近づいてくる。
私に覆いかぶさる影は、思っていたよりずっと大きくて、抱きしめる腕は…意外なほどたくましかった。
「これでもまぁ、俺も男なわけでさ」
これまでの付き合い史上、一番近くに真莉ちゃんがいる。
確かに…響とは違う。
もう少し骨ばった硬さ…真莉ちゃん細いしな…。
「琴音は…やっぱり女の子だな?」
その声はなんだかのんびりしてて、子ども同士が抱き合ってるみたい。
響のラブシーンを見て、ささくれだった心が癒されていくみたいに落ち着く。
多分こんなに近くに響がいたら、もっともっと焦るし、ドキドキして、何も考えられない。
確かに、違う。
真莉ちゃんと…響。
「真莉ちゃん…ありがと」
なんとなくわかった。
そう言って、離してもらおうとした…。
「待って…もう少し…」
真莉ちゃんの腕は緩まない。
…え、ちょっと待って。
その時、外廊下を歩く足音が聞こえた。
バンッと勢いよく開いたドア
その瞬間、真莉ちゃんの唇が私に重なって…
驚きで目を見開くと…
真莉ちゃんの向こうに、響がいるのが見えた。
…なんでここに響?
「…離れろっ!」
初めて見る、響の険しい顔。
響が、真莉ちゃんの肩を掴んだ。
その瞬間…真莉ちゃんがふっ飛ぶように壁に叩きつけられる。
「…響、」
なんで響がいるんだろう…。
事態を飲み込めない私の視線に気づいた真莉ちゃん。
「…俺が連絡したんだよ。…琴音次第では、ベッドに押し倒してるところを見せてあげられたのにね」
「…真莉…お前…っ」
響が真莉ちゃんの胸元を掴んで、今にも殴りかかりそうになった。
とっさに真莉ちゃんの前に立ち塞がって、響をとめた。
「真莉ちゃんは悪くない。私がノコノコ来たから…」
響が真莉ちゃんの胸元を離してうなだれた。
「天下の武者小路グループ御曹司のあなたが…たかだか琴音1人に大騒ぎして、大変ですね?」
「…なんとでも言え」
いつも自信満々の響が…なんだか小さく見えて…
「響に…そ、そんな言い方しないでよ…!」
響をバカにされたみたいな気がして…真莉ちゃんとはいえ、腹が立った。
真莉ちゃんはそんな私を笑って…
「ほら、違いがわかっただろ?」
と笑われてしまった。
……………
響と一緒に、真莉ちゃんの部屋を出た。
どうやって来たのか聞いてみれば…
「マンションの住人が乗ろうとしてたタクシー、無理やり奪ってここまで来た」
「…本気?…なにして…」
「嫌いとか言うな…」
声が震えてる…。
大通りに出て、響がタクシーを停めたので一緒に乗り込んだ。
「ホテルマテリアガーデンに行ってください」
え…ホテル?…家じゃないの?
さっきからずっと落ち着かない響。
眉間にシワを寄せた怖い顔…だけど、繋いだ手を離さない…
こんな響初めて…
ホテルに着くと、コンシェルジュが飛んできて、すぐにカードキーが渡された。
もしかして…ここも武者小路グループのホテルなのかも…。
いつの間にか強く手を引かれる。
焦ったように歩くスピードが早くて、小走りになった。
カードキーを差し込まれた重厚なドアが開いて…広すぎるホテルの部屋に、圧倒された。
…その瞬間…
「…ごめん…」
前のめりに倒れそうなほどの勢いで、後ろから響に抱きつかれた。
コメント
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響は真莉ちゃんの事も琴音ちゃんの事も非難することはできないよ! きちんと説明して謝罪しないと。 多分口に出してた浅野氏だろうし、モテる響だから女の1人2人…3人に4人くらい同時にいただろうけど、琴音ちゃんは🔰なんだからね!