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民兵さんは、ずっと笑顔で頷いてわたし達を見ていた。
「うん、うん。素晴らしい友情だな。お互いに信頼して助け合う」
「はい! わたしは助けられてばかりですけど」
「アリアちゃん……」
「さっちゃん……」
お互いに見つめ合い手を握り合う。気持ちが通じあってる感じがして嬉しい。
「あー、事件に巻き込まれて大変な所申し訳無いが、この後少し時間を貰えないか? 心情的にはこのまま帰ってもらってゆっくり休んで欲しいんだが、事件に巻きこまれた者として、衛兵への説明を一緒に頼めないか?」
「はい、そのくらいだったら。さっちゃんも大丈夫?」
「私は大丈夫だよ。アリアちゃんも無理のない範囲でね」
「うん」
「助かる。よし、じゃあ、あっちに行こうか」
泥棒の方を指差す。
泥棒は手も足も縄でグルグルに巻かれて口にヒモを巻かれて目隠しされてるのでもう安全だと思う。
泥棒の元に行き、もう1人の民兵さんと合流する。衛兵は間もなく到着するらしいので、その間に民兵さん達と話をした。
「あのー、泥棒の前に突然出てきた壁って何ですか?」
「あれは私の魔術ですよ」
もう1人の男の民兵さんが答えてくれる。
先に話をした戦士の民兵さんと似た格好をしているけど、ロングソードの代わりに短剣を下げていて、先端に小さい石が付いている高そうな木の枝を持っている。
「あれが魔術ですか! 初めて見ました! 凄いですね!」
「はは、あれはそんなに凄い魔術じゃないよ。あれは初級魔術の中でも簡単で、一般的な魔術だからね」
「そんな事ないですよ! 何も無いところにどーんと壁を作っちゃうんですから!」
「そこまで誉められると、ちょっと困るな。でも、ありがとう」
魔術師さんを誉めちぎってると戦士さんも混ざってきた。
「なあ嬢ちゃん、俺はどうだった?」
「戦士さんも凄かったです! 空から降ってきたからビックリしました!」
「おお! そうか! ビックリしたか!」
そんな話をしていたら、すぐに5人の衛兵さんがやって来た。
戦士さんと魔術師さんが挨拶する。
「民兵組織レクルシア所属ブリギッテです。強盗傷害及び戦闘行為違反の現行犯により、男性1名を逮捕しました」
「民兵組織レクルシア所属フューズです。被害者は女性1名。膝に擦り傷、軽傷です」
戦士さんの口調が変わってる。……大人の世界って大変だな。
衛兵さん達は3組に分かれて民兵さん達の対応と泥棒の確保、被害者の女性の確認をしている。
「確認した。協力に感謝する。この場で簡単な調書を取りたいのだが構わないか?」
「はい」
「……そちらの子供達は?」
「現場に居合わせ、逮捕に協力しようとしてくれた者達です」
「詳しくお願いする。……お嬢さん達も、少しだけ話を聞かせてくれるかな?」
さっちゃんが前に出て答えてくれる。
「構いません。ただ、私達も色々あって疲れてるので、短めでお願いします」
「もちろんだとも、直ぐにすむよ」
「お願いします」
……さっちゃん、カッコいい。衛兵さん相手に渡り合ってるよ。
その後の話はほぼさっちゃんがしてくれた。わたしは頷いていただけだ。
話が終わり、衛兵さん達は泥棒と被害者の女性をつれて去っていった。
残ったのは民兵さん達とわたし達だ。
戦士さん改め、ブリギッテさんが話しかけてくる。
「衛兵との話を聞いていただろうが、改めましてだ。俺はブリギッテ、こっちは相棒のフューズ。民兵組織レクルシアに所属している」
「えっと、アウレーリアです」
「私はザナーシャです」
「アウレーリアにザナーシャだな。2人ともよろしくな!」
「あ、はい」
……テンション高いな、ちょっと引くよ……嬉しい事でもあったのかな。
「最後まで付き合わせて悪かったな。協力ありがとうよ」
「いえ、わたしも珍しい体験ができて良かったです」
「そうか、そうか。たが、もう無茶するんじゃないぞ、友達を大事にしろよ」
「もちろんです! さっちゃんはわたしの唯一無二の大親友ですから!」
さっちゃんが赤くなって小声で「もういいよ」って言ってる。
「うん、うん! 素晴らしい友情だ! おじさんは感動した! 嬢ちゃん達の熱い友情を見せて貰った礼と、事件で迷惑をかけたお詫びがしたい」
「お詫び? ……お小遣いを貰えるんですか?」
「アリアちゃん……」
「じょ、冗談だよ、さっちゃん!」
「はっはっは、まあ、検討しよう。嬢ちゃん達の都合の良い時に、うちの組織に顔を出してくれ。その時にお礼とお詫びをさせて貰う。受付けにこの名刺を見せれば対応してくれる」
一枚の名刺を渡された。組織の住所などが書いてある。
「分かりました。絶対に行きます!」
「ああ、待ってるぞ! さて、戻るかフューズ」
「ええ」
どこかに戻るらしい。ブリギッテさん、最後までテンション高かったな……。
「……なんか疲れたね、さっちゃん」
「そうだね。せっかくの休日が大変な事になっちゃったね」
「……今日の事はお母さんには秘密にしてね、絶対に怒られるから」
「クレアおばさんにはしっかりと告げ口するよ。アリアちゃんに成長して欲しいから」
「さっちゃん!?」
ブリギッテさんと別れてわたし達は帰路についた。
……お母さんのお説教、1時間コースかな……。さっちゃんが手加減してくれる事を祈ろう。この貰った名刺、お母さんに見せたらお説教減らないかな。
この名刺が目に入らぬか! 控えおろー! みたいな感じで。
名刺を見ながらそんなどうでもいい事を考えていた……。
名刺には「民兵組織レクルシア ファルメリア支部 支部長 ブリギッテ」と書いてあった。
……へー、ブリギッテさん、支部長なんだ。なんか凄そう。バイトしたら、賃金に色つけてくれないかなー……。
わたしの人生初の大事件は、こうして幕を閉じた。