「ねえ。惚恋(ほれん)トンネルって知ってる?」
「知ってる!トンネルに入って恋の願い事をすると叶うって言うやつでしょ!」
「そうそう。それでさー」
今日も賑やかな教室では噂話が絶えない。
都市伝説だが僕が住んでいる街には惚恋トンネルというものがある。
ーそのトンネルに入ると恋の願いが叶うー
女子高生が好きそうな話題だ。
僕はそんなものには興味がない。といえば嘘になる。
僕には2年前、彼女がいた。
とても可愛くて愛らしい、本当に愛し合っていた。
でも、突然彼女は…死んだ。
事故だった。青信号になった横断歩道を彼女が通った時信号無視をした車とトラックに挟まれ押しつぶされて死んだという。内臓も全て破裂し、とても残酷だった。
だから僕はもう一度彼女に会うためにその『惚恋トンネル』を探し続けている。
ー放課後ー
早く帰ってまた惚恋トンネルについて調べようと思い、僕は足早で帰った。
そして踏切が出てきた時、急いで帰ろうと左右を見ずに通ろうとした時だった。
キーーーーーーーーっというものすごい音がした。
僕が通った踏切は故障していたらしく、僕は轢かれて死んだ。
と思ったら運がいいことに坂を転がり落ちていた。
「あー。最悪だね。君。」
こんな所に人?と思い顔を挙げるとそこには彼女がいた。
「え、なんでここ、」
「君、ここがどこだかわからないの?」
僕はびっくりして周りを見渡すと、そこは花が敷き詰められていて天井には青空の絵が書いてあるトンネルだった。
「もしかして!?」
「そう。惚恋トンネルだよ。」
「なんで?!ここはどこ?出ないと。」
「本当にでたいの?」
「え?」
急な質問に驚き少し考えた。
僕には友達もいない。しかも陰口を叩かれていじめられる。なのに外に出ていいのか?
いや、出ないと。こんな所にいたら死ぬ。
「死なないよ。ここにいても。お腹空かないし。」
「どういうことだ?」
「んー詳しくはいえないけど、まあとりあえずここは生きやすいよ。しかも私とずっといられる。」
「いたいけど…でも出ないと。」
「本当は?本当は出たくないんだよね。生きたいんだよね。ここで暮らしたいんだよね。」
…お見通しか。
「ここにいるよ。ずっと。」
「嬉しい。」
そして感覚的には1週間がたったと思う。
「そろそろ。一緒に出よっか。」
「え?いいの?でも生きてないじゃん。」
「生まれ変わるって君と同い年になったよ。トンネルの出口で待ってる。それじゃ」
「待って、!」
出口はどこにあるんだ?
そうして周りを見渡すと肩をトントンと叩かれた。
後ろを見ると光っている蝶々がパタパタと僕を出口に導くように飛んでいた。
そして着いていくと出口があった。 景色が変わっていた。
見覚えのない建物も増えていた。そして女の子が立っていた。
「やっとまた会えたね。何年待ったと思ってるの?」
「え?何年?だって僕は1週間くらいしか、」
「スマホ、見てみて?」
言われた通りスマホを開くと僕がいた時代から100年の月日が経っていた。
「え?なんで?僕…」
「そのトンネルに入るとね、時間の流れが速くなるの。」
そんな…じゃあ僕の親はもう…
「親もいないと思う。私の家で暮らさない?」
「え?でも…」
「私、一人暮らしだから。」
そして僕たちは一緒に暮らし始めた。
5年後…
「おしまい」
「えー?パパ、トンネルのお話本当?」
「どうだろうね。本当かもよ。」
「かもってなに!教えて!」
「ママに聞いてみな。」
「ママ!どうやってパパと出会ったの?」
「トンネルかな。」
「じゃあパパのお話は本当だったんだ!!」
END
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