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3 - 【第1話】桜咲き散る記憶

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2022年01月11日

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冬の寒さが残る今日この頃。

私は屋上に来ていた。

屋上は唯一の心の拠り所で、思い出の場所。

今日で最後だと思うと、長い時間をここで過ごしたと思う。

最初は助けたい一心で、どんなことにも手を染めた。

何度も世界を壊すと共に、作り物とはいえ命をも奪ってきた。

誰かの大切な思い出も、誰かの大切な人も。

みんなみんな、私の手で壊してきた。

そんな私を、奇跡が救ってくれた。

3学年主任、社会科担当、鈴木弘世。

彼は私よりも20代以上年上だがとても頼れる上司だった。

奇跡とは、まさに彼の事。

彼が私に彼女のことを問いただしてくれなければ、自分の命、彼女の命ですら終わらせてたかもしれない。

彼自身がここに来ることを決断しなければ、きっと、いいや、絶対にこの物語は終わらなかった。

だから彼と出会えてよかった、私はそう思う。

「新原先生。」

私は今日、彼を思い出の場に呼び出した。

記憶を失う前に、伝えておきたくて。

「来ていただいてありがとうございます。」

「いいや、それよりどうしたの?」

キョトンとした顔で、私に聞く。

「…ありがとうございました。」

「え?」

「私、いや、黒闇さんは弘世先生がいなければきっと助かりませんでした。」

「私一人では…とても無理なやり方で、」

そう言うと彼は難しい顔をした。

まるでなにかに悩むように…

「確かに他の方法もあったかもしれない。」

「それこそ黒闇が我々に相談してくれればね。」

でもそれが出来なかったから───

「でも彼女にとって相談することは、辛い…と言うよりは怖いことだった。」

「だから新原さんも黒闇もこの方法を取った。」

「許されることではないけど…救いになったと思うよ。」

その一言で、私の心は少し軽くなった。

確かに許されないけど、誰かのために、彼女のためになったなら…

「私のやってきた事は…」

「無駄じゃない、少なからずね。」

「…あー、良かった。」

「良かったです…」

「でももったいない、というか嫌だな。」

「え、何がですか?」

「今回のことは、忘れちゃいけないってずっと思ってる。」

「でも、今回のことは全部なかったことになるんでしょ?」

「あ…」

確かにそうだ、記憶を失うということは。

自分の罪をなかったことにするのと同じようなもの。

私はそんなの…嫌だ。

「俺は能力なんてないから…どうしようもないけど。」

「まぁ忘れてもきっと体が覚えてる。」

「そう、信じるよ。」

「…そうですね。」

桜が綺麗だ。

終わりを迎えるにふさわしい風景。

きっと、もうこんなことに苦しむ必要はなくなる。

だから、次こそ教師として、人としての心を忘れてはならない。

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