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「ご馳走さまでした!」
「巫女さん。今日も梅干し入りのおむすびでいいのよね?」
「はい!」
「ぼうずには、俺が作ってやるよ」
「ああ、ありがとう。おじさん」
おじさんとおばさんに地獄での飯を頼むと、俺と音星は早速二階へ行って、支度をした。
途中、古葉さんが俺が階段を登る時に声を掛けてきた。
「お前も変わってるなあ。そんなに地獄へ行きたいのか? 行ってどうするんだ? そんなところは、いずれいつかは行くはずなんじゃないのか?」
「いや、古葉さん。地獄へは普通の人は行かないんだよ。というか、罪を犯した人たちだけなんだ。地獄へ行くのは……なのに、俺の妹が……」
俺はカッと頭に血が昇って、急いでリュックサックを自室からぶんどると、民宿の外へと出た。外には音星が布袋を肩に掛けて待っていた。古い手鏡をあちこちから覗いては、コックリと頷いている。
「準備OKです! それでは行きましょうか。火端さん」
俺と音星が玄関先で、頷き合うと。
「あ、わりい! 訳ありか! 俺が悪かった!! すまーーーん!!」
後ろから、古葉さんの大声が追い掛けてきた。
「それでは、行きますよ!」
「ああ。今度は等活地獄の一個下の黒縄《こくじょう》地獄へ行こうよ」
「ええ。妹さん……。見つかるといいですね」
黒縄《こくじょう》地獄とは、盗みや殺生をすると落ちる地獄だ。
「それでは、準備はいいですね」
「え、ここで?!」
「はい。この鏡をずっと見つめていてくださいね」
俺は玄関先で、太陽の光を仄かに反射する古い手鏡を、じっと見つめた。
……
…………
………………
「火端さん。もういいですよ」
音星の声と同時に、ザンッという鈍い音が辺りに響き渡り。恐ろしい高熱が俺を襲った。
辺りは、おびただしい数の真っ赤に熱せられた鉄岩があり。それぞれに十人ほどの半透明の人型である魂が括り付けられていた。それを鬼(獄卒)たちが手に持った熱せられた斧によって、四肢を切断していく。
遥か遠くの山々が噴火を起こし、大岩の雨が降ってくる凄まじいところだった。地面の土も真っ赤に焼け焦げていて、山から溢れるドロドロの溶岩がそのまま荒地を流れている。
「あ! すごく熱いぞ!! ここはヤバい!!」
「あ、いえ、火端さん。地獄はもともとこいうところなんでしょうね」
「う……確かにな……。ここは地獄だものな……」
「さあ、妹さんを探しましょう」
「ああ」
俺の心の中の妹を想う気持ちや、焦燥感や、恐怖心はピークに達していた。
なんとしても、地獄から妹を探しだすんだ!!
しばらく、俺たちは走って、灰色の空から降り注ぐ大岩と熱すぎる溶岩を避けながら。探すこと二時間あまり。
結局、妹は見つけられなかった……。
どこにもいない。