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時刻は0時を過ぎた。日付は5月15日になり、甲本はぼんやりと天を見上げ呟いた。


「515か…笑える」


遥か1世紀も前の事件と、東京ジェノサイドの関連を、奇妙な巡り合わせと捉えるのか…

そうではないとしたら、新国家日本新党の筋書き通りにこの国と世界は動いているといえる。

もしくは、見えない力に動かされているのだ。

それは、暴走した民意かも知れない。

東京を混乱させて戒厳令を施行させ、その間に新内閣を樹立し、国家改造を目論んだ旧日本海軍と同じく、東京でテロを実行し、国家存続危機に日本を陥れた新国家日本新党。

甲本は、その後の日本の歴史を思い返して身震いした。


「前へゆっくりと進んで下さい!」


警備員がそう叫びながら自分の脇を通り過ぎた。

列はスムーズに流れ始めた。

前方を見ると、避難者達は身分証明証の提示だけでターミナルビルの中へと進んでいる。

手続きを簡素化させて、出来るだけ早く船を出港させるのだと、警備員のひとりが無線で話していた。

甲本は、偽造証明書を取り出そうと懐に手を入れてゾッとした。

そこには支給された小銃が入ったままになっていて、銃創には弾も装填された状態だった。

今、この場を離れたら逆に怪しまれる。

しかしもし、ターミナルで発見されたとしたらどうすれば良いのだろうか。

私服警官や、新国家日本新党の親衛隊も紛れ込んでいるかもしれない。

その目的は双方共に裏切者の抹殺。

対象者は自分だと思うと、一気に冷や汗が流れ出た。


「進んで下さい!足元に気をつけて!」


警備員や、周りの人間全てが敵に見えた。

スマホを手にした人間は内通者。

自分と同じくらいの年齢の男性は私服警官。

若者は新国家日本新党の親衛隊員。

彼等の目線が気になり始めた途端に、胃の奥から酸っぱいものが込み上げて今にも嘔吐しそうになった。

そんな甲本に警備員が迫る。


「身分証を見せて下さい」


指示に従って甲本は、偽造の東京区通行許可証を男に見せた。

動悸がする。

目眩もする。

もし気付かれたら、この場から逃走する他道は無い。

その時は、銃を使う事になるだろう。

警備員の声がした。


「どうぞ、進んで下さい」


その一言に甲本は、


「ありがとうございます」


とだけ応えて、足早にターミナルビルのロビーへと向かって行った。




東京が世界地図から消えたあの日の落日

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