テラーノベル
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一瞬で消え去った「出会い厨」と呼ばれたお方角のポリゴンの輝きを見送りながら、わたくしは改めて頼もしい皆様へと向き直りましたの。「皆様、本当にありがとうございました。不躾なお方に腕を掴まれそうになり、少しだけ驚いてしまいましたけれど……皆様が瞬時に駆けつけてくださって、とても心が温かくなりましたわ」
わたくしが両手を胸の前で合わせ、心からの感謝を込めて微笑みますと、真っ先に動いたのはトップ生産者のRico様でした。
「まあ! kanaちゃんのお手手に触れようとするなんて、万死に値しますわ! ほら、ご覧なさいな、ショックでお召し物が汚れてしまっていないかしら!?」
Rico様は目をキリッと吊り上げながら、空間からシャボン玉のように弾ける光の粒子を取り出し、わたくしの周りに優雅に振りふりとなさいました。
「これは私が特別に調合した『神聖なる浄化の香水(※状態異常完全無効&周囲の敵対度リセット)』よ! 変な虫(不審者)が二度と近づけないように、バリアを張っておきましたわ!」
「まあ……! お花のような、とっても良い香りがいたしますのね。ありがとうございます、Rico様」
わたくしが可憐に裾を広げてお礼を言いますと、Rico様は「まあ……! 天使……!」と胸を押さえて身悶えしていらっしゃいました。
すると横から、黒竜の背を降りたm@rio様が、重い兜をかきながら苦笑いを浮かべて進み出てまいりました。
「まったく……kanaちゃんが可愛すぎるけん、変なハエが寄ってくるのは目に見えとったばってん、まさか白昼堂々街中で絡んでくるとは思わんかったバイ」
m@rio様は腰の巨大な笛をポンポンと叩きながら、凛とした眼差しでわたくしを見つめ直します。
「これからはオレのドラゴン(黒竜)を街の上空に常時旋回させておくけんね! 怪しい奴が半径100メートル以内に近づいたら、竜の吐息(ブレス)で威嚇して追い払うけん!」
「まあ! お空からドラゴンさんが見守ってくださるのですの? まるで童話のお姫様になった気分ですわね」
「童話のお姫様というか、もはや超厳重警備のVIPですわ……」と、横で疲れ切ったお顔のkagerou様が胃を押さえながらツッコミを入れられました。
「ほんまに勘弁してくれ……。kagerou、m@rio、Rico、Natuki、miraのトップランカー5人が総出で一人のお嬢様を警備するとか、セブンスマスターの歴史上どんなSSランクボスよりも警戒レベル高いやろ……」
『過保護チームの総力戦草』
『出会い厨一人に対して空軍(ドラゴン)と陸軍(サムライ)と魔法部隊が稼働する世界』
『Ricoさんのバリア、性能が完全に最終決戦用防具で草』
『お嬢様「童話のお姫様みたいですわ(無自覚)」』
コメント欄も「最強の警備網」「お嬢様親衛隊(ガチ勢)恐るべし」と大盛り上がりですわ。
その時、ずっと裏で高速で文字を打ち込んでいらっしゃったmira様が、メガネをクイッと押し上げて静かに前に進み出ましたの。
「……報告いたします、kana様」
「あら、mira様。何か分かりましたかしら?」
「先ほど『悪即斬』された不審者プレイヤー『Ore_Sama』ですが、先ほどの配信映像とアカウントIDを照合し、利用規約違反(迷惑行為・ハラスメント)として運営に通報完了。同時に、当配信および当ギルドの全メンバーのブロックリストへ永久登録いたしました。二度とkana様の視界に入ることはございません」
「まあ! なんて素晴らしい手際でしょう! さすがは分析系の指南役様ですわね」
わたくしがパチパチと手を叩いて称賛いたしますと、mira様は一瞬「尊い……ッ」と白目を剥きかけましたが、即座に「……当然の職務です」と平静を装っていらっしゃいました。
「よし! 不審者も害虫駆除完了したことやし!」
kagerou様がポンと両手を叩き、明るいお声で全員を見渡しました。
「気を取り直して、今日もお散歩(レベル上げ)に行こうや! Natuki、お前ももう刀しまえ!」
すると、ずっとわたくしの横で静かに佇んでいたNatuki様が、重厚な低音ボイスで鞘をカチャリと鳴らし、至高の誠意を込めて深々と頭を下げられましたの。
「――姫の御心に従う!」
「よし、botの切り替え完璧やな!」
『botの切り替え完璧wwww』
『Natukiの忠誠モード戻ってきたww』
『さあ平和なお散歩の始まりだー!』
「ふふ、皆様、本日もよろしくお願いいたしますね。さあマーブルちゃん、お庭の探検へ参りましょう!」
わたくしが抱き上げたマーブルちゃんをなでなでいたしますと、マーブルちゃんも「ワンッ!(プルプル)」と元気に一叫びいたしました。
過保護で頼もしすぎる最強の指南役様方に守られながら、わたくしとマーブルちゃんの「お庭(セブンスマスター)」での優雅な日常は、本日もキラキラとした笑顔とともに続いていくのでした。
「……実はな、セブンスマスターには『8つ目の隠しジョブ』が存在するらしいんや」
出会い厨の不審者を無事に退治(&物理消滅)し、平和を取り戻した街の木陰で休憩していた時、kagerou様が手元の半透明な情報ウィンドウを凝視しながらポツリと呟かれました。
「隠しジョブ……? ですの?」
わたくしが首をちょこんと傾げますと、隣に座っていたドラゴンテイマーのm@rio様も、重い兜の隙間から深く頷かれましたの。
「そうっちゃんね……。ネットの極秘掲示板でも噂になっとるバッテン、7つのジョブを極めた先にある『幻の8つ目』があるらしくてな。……ただ、その解放条件が一切不明で、トップランカーの誰も突き止められておらんのだよ」
「まあ、幻の8つ目……。七つの職を極めるだけでも大変そうですのに、まだ秘密の道がございますのね」
わたくしが感心して手を合わせますと、横で優雅にお茶(※最高級MP回復薬)を嗜んでいたトップ生産者のRico様が、ふっと麗しい溜息をおつきになりました。
「まあ、私にはまったく関係のないお話ですわね。ご存知の通り、私はバトルとは無縁の生産職(クラフター)。ドレスやマーブルちゃんのお道具を仕立てることにしか興味がありませんもの。どれほど強力な隠し戦闘ジョブがあろうと、私のプライドと針仕事には一銭の価値もございませんわ」
「Ricoさんらしい割り切り方やな……」とkagerou様が苦笑いなさいます。
「で、問題はその条件なんやが……隠しダンジョンの走破か、あるいは特定のレベル達成か……」
kagerou様とm@rio様が難しそうなお顔で「うーむ」と腕組みをなさっていた、その時です。
朱色の袴を風になびかせ、わたくしの斜め後ろで静かに佇んでいたNatuki様が、重厚な低音ボイスとともに一歩前へお踏み出しになりました。
カチャリ、とカタナの鞘を鳴らしたかと思うと、腕組みをするお二人を一瞥し、朗々と叫ばれたのですわ!
「――8つ目の隠しジョブなど……**姫には不要でござる!!!**」
「出たーーーッ!! また『不要bot』に戻ったーーーっ!!」
kagerou様が待ってましたとばかりに頭を抱えて絶叫いたしました!
「隠しジョブの話をしとるんやぞ!! ゲーマーなら誰もが憧れるロマンの塊やぞ!!」
ですが、Natuki様は一切動じることなく、凛とした眼差しでわたくしの前に深々と膝をつかれました。
「我が姫・kana様は、この可憐なる『ビーストテイマー』の姿こそ至高! 7つだの8つだのという不細工な職の切り替えなど、姫の可憐なお手には余る無用の長物! 隠しジョブの解放条件など、探し求める時間すら**不要! 不要でござる!!**」
「『不要』の連打が凄まじいんじゃ!! 隠し要素の存在意義まで全否定すな!!」
『不要bot完全復活wwwwww』
『Natuki「8つ目の隠しジョブ? 不要でござる!」』
『kagerouのロマン、またしても一瞬で切って捨てられるww』
『Ricoさんの「バトル無縁だから関係ない」もバッサリで草』
『お嬢様「8つ目……? どんなお召し物かしら?」くらいに思ってそう』
コメント欄が大爆笑と「不要! 不要!」の弾幕で大荒れになる中、わたくしはふふっと上品に微笑みました。
「ふふ、Natuki様。お気遣いありがとうございます。でも、kagerou様たちがお探しになっている『秘密の答え』、いつか分かるととってもワクワクいたしますわね」
わたくしが優雅に膝の上のマーブルちゃんを撫で上げますと、マーブルちゃんも「ワンッ!(プルプル)」と可愛らしくひと声鳴いて、あざとい上目遣いを披露いたしました。
「うぅ……kanaちゃんが天使すぎるから怒りきれへん……。でも俺は絶対にその隠しジョブ見つけ出してみせるからな……!」
「オレもテイマーの極みとして付き合うばい!」
悔しがるkagerou様と熱くなるm@rio様、優雅にお召し物のデッサンを描き始めるRico様、そして「姫には不要……」と静かに呟き続ける忠義のサムライNatuki様。
8つ目の隠しジョブという大きな謎を抱えながらも、わたくしたちのパーティーは本日も平和で、どこまでも賑やかなお散歩を続けていくのでした。
コメント
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出会い厨を瞬♡♡♡た警備網が過保護すぎて笑いましたw Rico様の浄化香水、m@rio様の黒竜、mira様の通報処理、全員プロすぎて尊い…。そしてNatuki様の「不要でござる!!!!」連打と、kagerou様の絶叫の掛け合いが面白すぎて何度も笑っちゃいました。無自覚にお姫様してるkanaちゃんも可愛い。8つ目の隠しジョブ、今後の展開も気になります!