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「……っやば……どうしよう……っ」
バタバタと自分の部屋に駆け込み、カチャリとドアの鍵を閉めた途端、柊吾は靴を脱ぐことすらもどかしく、吸い寄せられるようにベッドの上へ倒れ込んだ。
掴んだ枕に力任せに顔を押し当て、ゴロゴロとシーツの上を転げ回る。
「両想いって……両想いって言った……!!」
枕越しにくぐもった悲鳴のような声を上げ、感情のやり場を失ってバタバタと足を動かし、布団を蹴り飛ばした。
「無理して返事しなくていい」なんて大人の余裕を気取って格好つけておいて、こっちが必死で階段を追いかけて必死で想いを伝えたら、あんな顔をして自分だけ部屋に逃げ込むなんて。
(……ズルすぎるだろ。あんなの、反則だ……っ)
瑞樹が最後に見せた、あの子供のように無邪気で、けれどどこか妖艶で残酷なほど美しい笑みが、瞼の裏に焼き付いて離れない。
「気になっている」という言葉。瑞樹の低く落ち着いた声が、耳の奥で何度も、何度もリフレインする。その度に胸の奥が激しく揺さぶられ、心臓が破裂しそうなほど大きくドクドクと跳ね上がった。
(両想い……。僕と、黒瀬さんが……)
声に出してそっと呟いてみると、あまりのこそばゆさに全身の血が一気に沸騰しそうになった。
玄関での衝動的なキスから始まり、忘れてほしいと言われたこと。お化け屋敷での密着や、ショースタジアムで小指を絡め合ったときの甘い熱。それまで感じていた「本当に自分でいいのだろうか」という不安も、男同士だという引け目も、瑞樹から与えられた圧倒的な「答え」の前に、すべて甘く熱い奔流の中に溶けて消えていく。
(……参ったな。本当に、参った……)
誰に聞かせるわけでもなく、静まり返った部屋の中にポツリとこぼした独り言。
柊吾は真っ赤になった顔を手で覆うこともやめ、仰向けになってぼんやりと天井を見上げた。ドックンドックンと脈打つ鼓動の音が、静けさの中でやけに大きく響いている。
胸の奥が熱くて、苦しくて、呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうなほどなのに――泣きたくなるほど幸せだった。
かつてアイドルとして華やかなステージに立っていた頃、何千人ものファンから浴びたどんな歓声やスポットライトよりも。今この瞬間に自分のためだけに向けられた瑞樹の言葉と眼差しの方が、柊吾の凍りついていた心をずっと深く、激しく揺さぶっていた。
母の介護と閉塞感に押し潰され、感情を殺して息を潜めるように生きてきたこの四年間。自分の時間も恋も希望も、すべて諦めて捨て去ったつもりでいた。
けれど、違ったのだ。
(これは夢……? だったら、このまま醒めないで欲しいな……)
じわじわと涙が滲んできて、視界が歪む。
握りしめた胸の奥で熱く脈打つ鼓動を感じながら、柊吾は溢れ出る幸せに浸るように、ゆっくりと瞳を閉じた。
コメント
1件
柊吾くん、ベッドでゴロゴロしすぎて可愛いな……! あの“両想い”って言葉が彼にどれだけ刺さったか、全身で表現してる感じがたまらない。今まで感情を♡♡♡て生きてきた分、溢れ出す幸福感が読んでるこっちまで熱くなる。アイドル時代の歓声より、たった一人の言葉が一番響くって対比が美しい。“僕と、黒瀬さんが”って呟くシーン、こっちまで照れるよ。