「 … にぃ 」
何だ?声がする。
俺は生きているのか?…いや、そんなはずはない。何せあの時、確かに脳天に弾を入れたはずだ。悲しいことに止めるヤツも周りには居なかった。じゃあコレは走馬灯ってやつか?
「 … にぃ 春にぃ !! 」
まただ、頭に響く女の声。でもなんだろう。懐かしい声だ。俺はこの声を聞いた事がある、知っている。
「 春にぃ ! 遅刻するぞ !? 」
「 … 千壽 ?! 」
俺の身体を大きく揺らしながら、先程から声を荒らげていたのはそこに居るはずのない実の妹、千壽だった。
「 おま 、え 、何で ? ? 」
俺はあまりに信じられない事実に、分かりやすく驚いてしまった。妹相手とはいえ、流石にみっともない。
「 ったく 、春にぃは朝弱すぎなんだよ ~ … 。 」
でも何故千壽が此処に?走馬灯、ではない。アレは過去の記憶が流れるものだ。コレは俺の知らない記憶。それにキモイくらいにリアルだ。リアル過ぎる。
「 春にぃが遅いからジブンが起こしに来たんだぞ?カンシャしてほしーね ! 」
早く降りてきてね、と言い残しアイツはドタバタと1階へ降りてしまった。俺も下へ行こう。現状が知りたくてたまらない。
俺は重い身体を起こし、ベッドから降りた。
「 っち 、着替え何処にあんだよ ゛」
服は…、あ、あそこか。取りに行こうと鏡の前を通る。俺はまた、信じ難い光景を目の当たりにしてしまった。
「 は 、はぁぁぁぁぁ ゛!? 」
小柄な身体。それなりに手入れされているだろう白い髪。間違いない、鏡に映っていたのは
「 昔の俺じゃねーかよ 、! ! 」
そう、中学時代の俺だった。どうやら俺はタイムリープでもしてしまったらしい。ただ一つ、違和感があった。
「 傷がねぇ 、… 。 」
無いのだ。口元のあの傷が。己が慕い、愛したボスに授かったあの傷は、綺麗さっぱり無くなっていた。
と、なると一つ分かった。コレは走馬灯でも、タイムリープでも無いんだ。俺が死んだことによって創り出された、新しい軸。
「 じゃああのクソ野郎も居んのかな。 」
白飯と、味噌汁の匂いがする。俺は恐る恐る居間と思われる場所に顔を出した。
「 おお春千夜、遅いじゃねぇか 。」
武臣だ。かつては屑だった俺の兄貴。だが久し振りに見た兄の顔に俺は、千壽同様懐かしさを覚えるばかりだ。ましてや嫌悪感など湧かなかった。
「 あっ!春にぃやっと起きた!! 」
「 御前ホント朝弱いよなァ 」
武臣は、自らが作ったであろう味噌汁を啜りながら笑っていた。過去の屑さはないように見える。
「 いただきまーす。 」
千壽の横に腰掛け、味噌汁を一口啜る。アイツ、料理出来たんだな。不格好な形に切られた人参が俺の目に映る。何気ない“普通 ”の朝。
これが俺の望んでいた生活、なのかもしれない。
明司 春千夜
軸“ 梵天”でボスを失い、自殺に至ったものの、中学時代に転生。家族円満。口元の傷は何故か無い。あの事件は無かったのだろうか。
明司 武臣
妹、弟の兄兼親代わり。過去とは打って変わってイイ兄貴。料理下手。
明司 千壽
にぃ達大好き。性格は春千夜が知っている通りで明るいらしい。
主 のお話
文章書くのって難しく、楽しい。自分の知識を最大限に活かして出来る限り面白い作品を書こうとしている、今日この頃。
コメント
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やっぱいいですわ。🥹🙏✨