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五月の初め。
クラスの誰もが、次のポイント支給日を楽しみにしていた。
高度育成高等学校では、毎月支給されるポイントを使って買い物や食事ができる。
あたしもその制度に驚きながら、高校生活を満喫していた。
けれど、その日――
教室の空気は、一瞬で凍りついた。
担任の 茶柱佐枝 が告げた言葉。
「今月のポイント支給額は――0だ」
ざわめく教室。
誰もが信じられないという表情を浮かべていた。
あたしもまた、言葉を失っていた。
「0……って、どういうこと……?」
茶柱先生は冷静に説明した。
遅刻、私語、授業態度。
クラス全体の評価によってポイントは増減する。
つまり、Dクラスは最も低い評価を受けたということだった。
教室中に戸惑いと不安が広がっていく。
あたしの胸にも、重たい気持ちが押し寄せた。
(私も……何かクラスの足を引っ張っていたのかな……)
放課後。
ひなはひとり、人気のない廊下の窓辺に立っていた。
夕陽が差し込む中、静かに俯く。
「……どうした」
聞き慣れた声に振り向くと、そこには 綾小路清隆 がいた。
「綾小路くん……」
「落ち込んでいるように見えた」
ひなは小さく頷く。
「私も、クラスの役に立ててなかったのかなって……」
少しの沈黙。
そして綾小路くんは、窓の外を見ながら静かに言った。
「今回の結果は、お前ひとりの責任じゃない」
「でも……」
「必要なのは、今後どうするかだ」
淡々とした言葉。
けれどその一言一言が、ひなの心を落ち着かせてくれる。
「ひな」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
綾小路くんはいつもの無表情のまま、まっすぐこちらを見ていた。
「お前は、ちゃんと周りを見ている」
「……え?」
「そういうやつは、クラスにとって必要な存在だ」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「だから、自分を責める必要はない」
ひなの目に、うっすらと涙が浮かんだ。
「……ありがとう、綾小路くん」
「気にするな」
帰り道。
夕焼けに染まる校舎を振り返りながら、ひなは胸に手を当てた。
クラスの現実は厳しい。
これからきっと、簡単ではない毎日が続く。
それでも――
綾小路くんの言葉があれば、前を向ける気がした。
静かで、さりげなくて、でも誰よりも優しいその言葉は、
あたしの心にそっと寄り添っていた。
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