テラーノベル
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Dクラスにとって、0ポイントの現実は大きな衝撃だった。
それからというもの、教室の空気は少しずつ変わっていった。
遅刻をする生徒は減り、授業中の私語も少なくなる。
そして何より、迫り来る中間試験の存在が、クラス全体に緊張感を与えていた。
あたしもまた、不安を抱えていた。
「もし赤点を取ったら……退学になっちゃうかもしれない……」
昼休み。
堀北鈴音 がクラスメイトたちに勉強会への参加を呼びかけていた。
あたしも迷わず参加することにした。
放課後の教室では、堀北さんの的確な説明と、桔梗ちゃんの明るい雰囲気のおかげで、少しずつ問題が解けるようになっていく。
それでも、数学の問題を前にひなは小さくため息をついた。
「ここ、どうしてもわからない……」
すると、隣の席から静かな声が聞こえた。
「見せてみろ」
振り向くと、綾小路くんがひなのノートをのぞき込んでいた。
「あっ、綾小路くん」
彼はペンを手に取り、要点だけを簡潔に書き込んでいく。
「ここは公式を当てはめればいいだけだ」
「……わ、ほんとだ!」
「難しく考えすぎている」
淡々とした説明なのに、不思議なくらいわかりやすい。
ひなは目を輝かせた。
「ありがとう! すごくわかりやすい!」
「そうか」
いつもの短い返事。
でも、その横顔はどこか穏やかに見えた。
勉強会が終わり、教室には夕陽が差し込んでいた。
帰り支度をしていると、綾小路くんがひなの机の前で立ち止まる。
「ひな」
名前を呼ばれ、胸が高鳴る。
「今日の問題、ちゃんと解けるようになったな」
「うん! 綾小路くんのおかげだよ」
「それならよかった」
そして少しだけ間を置いて、彼は続けた。
「もしまたわからないところがあれば、聞けばいい」
ひなの胸がふわっと温かくなる。
「……いいの?」
「ああ。困っているなら、そのくらいはする」
何気ない言葉。
それなのに、あたしにとっては何よりも嬉しかった。
帰り道。
夕焼けに染まる校舎を見上げながら、あたしは胸に手を当てた。
綾小路くんはいつも多くを語らない。
でも、必要なときにそっと手を差し伸べてくれる。
その優しさに触れるたび、好きという気持ちは大きくなっていく。
(もっと頑張りたい)
勉強も、学校生活も。
そして――
いつか、綾小路くんの隣で胸を張って笑えるように。
静かな放課後に交わした約束は、
あたしの心の中で、優しく輝き続けていた
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