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「琴音さん!」
私が近づくと、立ち上がって名前を呼んだ。
「あ、あなたは……」
「すみません、私が付いていながらこんなことに」
「龍聖君は大丈夫なんですか?」
「意識がない状態で……ですから私も詳しいことがわからなくて」
頭を抱えるようにして顔を歪めたのは、あの時、百貨店で会った青山さんだった。憔悴していて、あの時とはかなり印象が違って見えた。
龍聖君のことをすごく心配してるからだろう、この人にとっても、龍聖君は大切な仲間だから。
「すみません、琴音さんの勤務先の店長をしています綾井です。いったい何があったんですか?」
「は、はい。龍聖さんといつものように得意先にご挨拶に伺った後、次の訪問先まで歩いていたんです。その時に……近くを通ったバイクと接触してしまって。遠くまで飛ばされるということはなかったんですが、最初はあった意識がだんだん無くなっていって……」
そんな……
嘘だよ……
青山さんから状況を聞いた途端、何倍も怖くなった。心臓が痛くて、胸が苦しくて、息をするのが難しい。
「鳳条さんは頭を打ったんですか?」
「わかりません。もちろん、検査はしてもらってます。今は手術が終わるのを待つしか……」
「そうですね……」
「頭からの出血はなかったように思います。ですが、体からの出血があって……白いシャツが赤くなっていて……」
青山さんが言葉を詰まらせた。
真っ赤な血……
怖くて怖くてたまらない。
「す、すみません。とにかくすぐに救急車を呼びました。琴音さんの仕事場が「AYAI」さんだと聞いていましたので、あなたには病院の方から連絡してもらい、私は会社に連絡しました。本当に……申し訳ないです」
青山さんは泣きそうな顔で頭を下げた。
「頭を上げて下さい。青山さんが悪いんじゃないので……」
精一杯そう言ったけれど、胸が張り裂けそうで、この場に倒れ込んで今にも号泣してしまいそうだった。