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今日は、緊急の任務で、団長が出掛ける日だ。
「行ってくる」
そう言って、団長は馬を走らせて行った。
これが団長の最後だった。
その翌日の、午前10時、任務に行った騎士たちが返ってきた。各々怪我をしていたが、みんな無事だった。
だが、騎士たちは、どよんとしていて、泣いている奴もいた。
胸騒ぎがして、騎士たちにかけより、どうしたのかと声をかける。すると1人の騎士が、
「…き、騎士団長が…お、お亡くなりになりました…」
と、すすり泣きながらうったえる。
確かに、騎士たちの中に、団長の顔はない。
ひゅっと、息がつまる。
後ろには、団長の愛馬が悲しそうに佇んでいて、その背中には、
団長が、だらんとまたがっていた。
俺はかけよる。
団長の背中には、大きな爪痕があった。
団長の手をとり、脈をはかる。
手は冷たく、脈もない。
ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
「嫌だ…団長…なん、で」
師であり、上司でもあり、父のように、兄のように慕ってきたエルソン。ときに厳しく、団員たちにも慕われていた。
聞くと、エルソンは、魔物に不意を突かれた団員を庇って亡くなったらしい。
そんなところが、彼の慕われる理由なのだろう。
その後は、大忙しだった。
エルソンの葬儀、団員たちの心身回復、騎士団長になった俺は、仕事が山積みだった。
俺は、気持ちに体がついていかず、疲れはてていた。
いっそ、エルソンのもとに行こうと思ったこともあった。
だが、首に剣を当てたとき、ふと、エルソンの言葉が頭をよぎった。
「俺たち騎士は、常に死と隣り合わせだ。だが、死を嘆いてはいけない。騎士が死ぬときは、誰かを守ったときだ。つまり、騎士が死んだなら、それは、誰かが助かったときなんだ。だから、騎士が死んだら、歓喜し、称賛しろ。そしたら、死んだ騎士も報われる。」
俺は、そっと剣をおろし、一滴の涙を流した。
それからしばらくし、俺は、18歳になり、卒業パーティーの招待状が届いた。
さすがに卒業パーティーは断れず、俺は仕方なく、パーティー用のスーツを着て、パーティーへと向かった。
俺がパーティーにつくと、既にパーティーは始まっているようで、男女が談笑をしていた。
俺は受け取ったワインを片手に、隅へ移動した。
きょろきょろとあたりを見回し、ある令嬢を見つけ、目で追う。
俺の一番大事な人、ナリアだ。
(やはり美しいな)
彼女の輝くような白髪も、海を閉じ込めたような瑠璃色の瞳も、自分のものにしたいほど愛しい。
ナリアの今日の青いドレスは似合っているが、少々胸が開きすぎているのではと思っていると、彼女は王太子のもとへ歩いていった。
王太子の後ろには、平民で、光魔法を使えるという、ラナという令嬢が立っていた。
(…む…?)
ナリアは、今は王太子の婚約者のはずだが、王太子は、歩いてくるナリアに気づくと、彼女のことを酷く睨み付け始めた。
と、王太子は急に、ナリアを指差し、
「ナリア・アトワール・ハリクス公爵令嬢、今日をもって、貴様との婚約を破棄する!」
ギョッとした。
それと共に、興奮していた。これで、ナリアとよりを戻せると。
パーティーが終わったら、求婚しに行くつもりだった。
だが、ナリアが娼婦になると聞き、その願いが叶わなくなったことに絶望した。
パーティー帰り、馬車の中で、考えていた。そして、やっと考えがまとまり、屋敷に帰ると、すぐに着替え、食事をして、風呂に入った。いつもより入念に洗った。
なぜなら、明日は、娼館に行き、ナリアに会うからだ。
(ナリア…はやく会いたい…)
そう思いながら、俺は眠りについた。